「軸ずらし転職とは何なのか知りたい」
「キャリアアップを実現するために何をすれば良いのか教えてほしい」
このように悩んでいる方もいるのではないでしょうか。そこで本記事では、最近話題の軸ずらし転職について詳しく解説します。
軸ずらし転職とは、自分の経験を活かしつつ、未経験の分野にチャレンジする転職活動のことです。過去の自分の経験を活かせるため、年収などの待遇を下げずに新しい分野へチャレンジできます。
本記事を読むことで軸ずらし転職のメリットや注意点などがわかります。ぜひ最後までお読みいただき、今後のキャリア形成を考えるうえで参考にしていただけると幸いです。
今後のキャリアに不安になる方は、coachee人事シェアを活用して、キャリア形成や転職に精通したプロ人材へ、転職に関する悩みを相談してみてはいかがでしょうか。プロの意見を参考にして、軸ずらし転職を成功させましょう。
軸ずらし転職とは?
軸ずらし転職とは、職種または業界のいずれかをずらして転職することです。
よくあるキャリアアップ転職は、基本的に同じ業界や同じ職種で転職を行うものです。一方で新しいチャレンジを行うときは、業界や職種を大きく変える場合もあります。
そこで注目されているのが「軸ずらし転職」という考え方です。軸ずらし転職では、職種または業界のいずれかを今までと異なる分野に変えて、もう一方は今までと同じ職種または業界を選びます。
これにより、新しいチャレンジしながら今までの知識や経験を活かせるため、年収をはじめとする労働条件が悪化しにくいです。
軸ずらしの考え方
軸ずらし転職は、例外もありますが、基本的に下記の考え方で行うものです。
- 同じ職種のまま違う業界にチャレンジする
- 同じ業界のまま違う職種にチャレンジする
ポイントは「過去の経験を活かせるかどうか」です。軸をずらしすぎてしまうと完全に未経験での転職となってしまいます。その結果、転職活動が難航したり待遇が大きく悪化したりするリスクがあります。
軸ずらし転職の具体例
軸ずらし転職の具体例を紹介します。
- メーカーの法人営業からIT企業の法人営業へ転職する(異なる業界だが職種が同じ)
- 物流会社のドライバーから物流会社の営業職に転職する(同じ業界だが職種が異なる)
軸ずらし転職では上記のように、業界もしくは職種の一方をずらして転職します。なお例外として「業界・職種ともに未経験だが、これまでの仕事経験が活かせる」仕事に就く場合も軸ずらし転職に該当します。
たとえば小売業界の販売員からECサイトのマーケティング職に転職するのも「軸ずらし転職」といえるでしょう。異業種・異職種での転職活動となりますが、小売店の販売員で得た「顧客対応」「商品知識」といった経験をマーケティング職で活かせる可能性があるからです。
軸ずらしで転職を成功させた杉原さんの事例
実際に軸ずらしの考え方をもとにキャリア形成を成功させた、coacheeのパートナー人事である杉原さんのエピソードをご紹介します。
杉原さんは、大学卒業後にフリーのアナウンサーとして活動を開始。司会に関わった経験を活かしてブライダル業界のベンチャー企業へ入社し、個人顧客向けにサービスを提供していました。しかし「自分が関わることの価値を最大化したい」と考え、企業向けにサービスを届けたいと次第に考えるようになったそうです。
「自分ができることは、サービスを提供すること。自分が介在することでそこに小さな笑顔が生まれていく仕事。そして、それが会社や社会に影響度が高ければなお嬉しい、そうした仕事って何だろう」
このように考えた結果、これまでの仕事経験を活かしてリクルートの法人営業に転職。その後も必死に働き10年ほど経過しました。その間に、AIをはじめとしたシステムがめまぐるしく発展し「人間だからこそできるサービスとは何だろう」と考える日々が訪れ、異動を経験してハイキャリア領域に特化した人材紹介の仕事を経験しました。
ハイキャリア領域で年収帯の高い法人営業と個人向けのサポート(キャリアアドバイザー)を行った経験をきっかけに転職を決意し、上京。そこで外資系大手のコンサルファームへの入社を支援するような、刺激的な領域での仕事経験を積めたそうです。その後はフリーランスとして独立し、現在は採用・教育に関わる人材事業に従事しています。
上記のように、杉原さんは「自分ができること」をきっかけに、少しずつ軸を変えながらキャリアを形成されてきました。「軸ずらし転職」という概念は意識していなかったと思われますが、杉原さんのエピソードはまさに「軸ずらし」によるキャリア形成に成功した例といえるでしょう。
関連記事:「自分が介在することで、小さな笑顔を増やしたい」という思いが原点。 人材事業のスペシャリスト、杉原さんのキャリアストーリー
軸ずらし転職を実施するメリット
軸ずらし転職を実施するメリットは下記のとおりです。
- 年収アップを実現しやすい
- スキルアップにもつながりやすい
- 自分が望んだキャリアを実現しやすい
それぞれのメリットについて詳しく解説します。
年収アップを実現しやすい
軸ずらし転職の考え方を実践すれば、業界もしくは職種は未経験であったとしても、過去の経験を活かせる可能性があります。そのため、通常であれば年収が下がるリスクがある異業種転職・異職種転職でも、年収の維持もしくは年収アップが期待できます。
たとえばメーカーで営業経験がない人材を採用する場合、企業側としては教育コストがかかったり一人前に独り立ちするまで時間がかかったりするため、どうしても提示できる年収が低くなりがちです。
しかし、営業経験がなくても同じような製品を製造・販売している企業で働いた経験のある人なら、業界経験があるため教育コストが比較的低いです。そのため、完全に未経験の人よりも良い年収でオファーを出せるでしょう。
スキルアップにもつながりやすい
軸ずらし転職では、業界もしくは職種が未経験のため、これまでの経験を活かすだけでは新しい職場で通用しません。そのため、仕事についていけるよう新しいスキルを学ぶ必要があります。
たとえば営業が未経験であれば、他の営業職の社員についていけるよう、先輩に同行して営業の様子を見せてもらったり、営業のロープレに付き合ってもらったりしてスキルアップを目指すべきです。
このように新しい仕事を覚えることでスキルアップにつながります。
自分が望んだキャリアを実現しやすい
軸ずらしなら、たとえ現時点では転職しにくい職種でも、将来的に無理なく目指しやすいです。
たとえば「IT企業の営業職で働きたい」と考える、物流会社の倉庫作業員がいたと仮定しましょう。この場合、よほど若くてポテンシャルを感じさせる人でない限り、いきなりIT企業の営業へ転職するのは厳しいはずです。
そこで、まずは物流会社の営業職へ転職します。そこで数年ほど営業として経験を積み、スキルアップした状態で今度はIT企業の営業職へ転職するのです。最初の転職は「同じ物流業界で働いていた経験がある」から採用されやすく、2回目の転職は「営業という同じ職種で働いた経験がある」から、採用されやすくなるでしょう。
このように、自分が目指したいキャリアが明確になっている場合は、軸ずらし転職の考え方をもとに転職活動を実施し、戦略的なキャリア形成を実現しましょう。
軸ずらし転職を実施する際に注意すべきポイント
軸ずらし転職を実施する場合は、下記のポイントに注意しましょう。
- 事前に目指すキャリアと自分の現状を明確にする
- 目指すキャリアを実現するために何が必要か明確にする
- 軸をずらしすぎていないか注意する
事前に目指すキャリアと自分の現状を明確にする
まずは、自分はどのようなキャリアを実現したいのか、それに対して現状自分はどのような立ち位置にいるのかを明確にしましょう。
軸ずらし転職は、「将来はこのように働きたい」という明確なゴールがある場合に、それを達成するための手段として有効なものです。そのため、そもそも目指すべきゴールがなかったり目標が曖昧だったりすると、なんとなくといったその時の気持ちで転職先を決めてしまいかねません。
目指すキャリアを実現するために何が必要か明確にする
実現したいキャリアが明確な場合は、それを達成するために何か必要なのか明確にしましょう。たとえば物流業界の工場作業員からIT業界の法人営業を目指すなら、下記のように軸をずらして転職する必要があるはずです。
- 物流業界の工場作業員
- 物流業界の法人営業
- IT業界の法人営業
いきなり業界・職種を変えるのは難しいため、まずは転職しやすい同じ業界(物流業界)で法人営業を目指しましょう。最終的に(4)でITエンジニアを目指すのであれば、プログラミングのスキルも要求されるため、仕事と並行して学習することが求められます。
このように、具体的に今の自分には足りないのか・何が必要なのか明確にすることで行動を起こしやすくなり、軸ずらし転職の成功率も上がるはずです。
軸をずらしすぎていないか注意する
軸のずらしすぎにも注意が必要です。軸をずらしすぎると完全に未経験での転職になってしまい、年収ダウンなど労働条件が悪くなってしまいかねません。
過去の仕事内容を活かせることに加えて、未経験の要素もある仕事を選ぶことが重要です。
たとえば「製造業の法人営業→IT業界の法人営業(別の業界だが同じ職種)」や「IT業界の法人営業→IT業界のカスタマーサクセス(同じ業界だが別の職種)」といったパターンが挙げられます。
軸ずらし転職に向かない可能性がある人の特徴
軸ずらし転職は、理想としているキャリアを実現するうえで役立つ考え方です。しかし人によっては、軸ずらし転職の考え方が向いていない場合もあります。具体的には、下記のような人はキャリアアップ転職か、そもそも転職しないことをおすすめします。
- 定年まで同じ会社で働きたい人
- 割り切って仕事をすると決めた人
- 特定の業界・職種で専門家として活躍したい人
定年まで同じ会社で働きたい人
そもそも「自分は転職なんて考えていない」「定年まで同じ会社で働き続けるつもりだ」という人は、転職活動そのものが不要です。
ただし近年は、会社が社員に対して退職を強く勧奨するなど、人員削減に取り組んでいる企業もあります。転職するつもりがなくても、将来的に仕事探しを迫られる可能性がある点は覚えておきましょう。
割り切って仕事をすると決めた人
「仕事は仕事」と割り切って、自分の希望より会社からの指示を優先することを決めた人は、無理に転職しなくても良いかもしれません。
会社で働いていると、必ずしも常に自分が希望する仕事ができるとは限りません。人事異動や部署の解散などにより、希望していた仕事を続けられない可能性もあります。そのため「仕事だから」と割り切ることも、時には大切です。
特定の業界・職種で専門家として活躍したい人
特定の業界や職種で、エキスパートとして専門性を高めたい人は、軸ずらし転職は不要です。この場合に必要なのは、軸をずらさず、同じ業界・同じ職種でキャリアアップを目指すことです。もちろん、同じ会社で頑張り続けるのも良いでしょう。
たとえば「Web制作に精通した凄腕ITエンジニア」「成約率No.1の婚活アドバイザー」など、特定の業界および職種でトップを目指したい人は、軸ずらしではなく同業界・同職種でキャリアアップ転職もしくは独立を行うことが多いです。
軸ずらし転職を行う前に人事のプロへ相談してみよう
本記事では軸ずらし転職について、メリット・デメリットや向いていない人の特徴などを紹介しました。
軸ずらし転職は、労働条件を維持もしくは改善しながら自分が望むキャリアを実現するうえで有効な手段の1つです。ただし軸のずらし方が間違っていたり、そもそも特定の業界や職種で専門家になりたかったりする方には向いていなかったりと、注意点もあります。
自分自身で今後のキャリアを考えることもできますが、本当に正しい判断ができているのか不安を感じる方もいるでしょう。もし良ければ「coachee人事シェア」を活用し、キャリア・転職に詳しいプロ人材へ、ご自身の転職に関する悩みを相談してみませんか。