「インターンシップをもっと採用に活かせないだろうか」
「採用直結型インターンシップが解禁されるらしいけど、どのような仕組みなのだろう」 「採用直結型インターンシップを実施してみたいが、何から始めればいいかわからない」
このように考えていませんか?
採用直結型インターンシップは、従来の就業体験型とは異なり、採用選考と直接結びついたインターンシップです。
本記事では、採用直結型インターンシップの定義や特徴、設計方法を解説します。また、早期選考型やジョブ内定型など、実施パターンも詳しく説明するため、本記事を読むことで自社に合ったインターンシップを見つけやすくなるでしょう。
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採用直結型インターンシップとは
採用直結型インターンシップとは、参加学生が本選考に進めるインターンシップです。参加した学生に対して、本選考の一部を免除したり、早期選考の権利を付与したりするケースもあります。
文部科学省と厚生労働省、経済産業省は以下のようにインターンシップに関する新たな定義を設定しています。
学生が、その仕事に就く能力が自らに備わっているかどうか(自らがその仕事で通用するかどうか)を見極めることを目的に、自らの専攻を含む関心分野や将来のキャリアに関連した就業体験(企業の実務を体験すること)を行う活動(但し、学生の学修段階に応じて具体的内容は異なる) |
引用:インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方|内閣官房
これにより、条件を満たしたインターンシップでは、学生の情報を採用活動に利用できるようになっています。
種類
インターンシップには4つの種類がありますが、その中で採用直結型インターンシップには、以下2つの種類があります。
- 汎用的能力・専門活用型インターンシップ
- 高度専門型インターンシップ
汎用的能力・専門活用型インターンシップは、企業が単独、もしくは大学と連携して実施するプログラムです。基本的には無給ですが、実態として社員と同じ業務内容になる場合は、労働関係法令に基づいて有給で実施する必要があります。
一方で高度専門型インターンシップは、主に大学院生が対象です。期間は2か月以上と長く、専門性を実践で活かしながら知識と技術の向上を目指します。
従来のインターンシップとの違い
従来のインターンシップは学生の職業体験や企業研究の場としての側面が強い内容でした。しかし、採用直結型では採用を直接的に視野に入れた内容となります。
実施期間について「汎用的能力活用型」は5日間以上「専門活用型」は2週間以上の実施が必要です。
このように、採用直結型インターンシップは従来のインターンシップと比べて、より実践的な内容で実施されます。
採用直結型インターンシップが解禁された背景

採用直結型インターンシップは、政府のインターンシップに対する取り組みに変化があったため解禁されました。政府は従来、学生の学業がおろそかになると考え、インターンシップを採用に直結することを禁止していた経緯があります。
しかし「インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方」が一部改正され、一定の条件を満たしたインターンシップであれば、学生情報を広報・採用活動に活用できるようになっています。
参考:インターンシップを始めとする学生のキャリア形成支援に係る取組の推進に当たっての基本的考え方|経済産業省
採用直結型インターンシップのメリット3選
採用直結型インターンシップには、企業にとって以下のようなメリットがあります。
- 企業と学生の理解が深まる
- 採用コストを削減できる
- 優秀な人材を早期に確保できる
以下で詳しく解説します。
1.企業と学生の理解が深まる
実際の業務体験を通して、学生は入社後の具体的なイメージを持てます。企業文化や社風を体験し、自分に合う企業かどうかを判断できます。
さらに企業側も学生と密なコミュニケーションを取ると、採用選考期間だけでは判断できなかった部分まで評価できるようになるでしょう。結果として、企業と学生双方のミスマッチを防ぎながら採用活動を進められます。
2.採用コストを削減できる
採用直結型インターンシップでは、採用活動後半の費用を削減できます。広報解禁前の3月より早い段階で母集団形成(候補者を集める活動)が可能になるためです。学生との関係性を早めに築けると、3月以降に改めて母集団を形成する必要がなくなり、採用広告費や合同説明会への出展費用などを抑えられます。
また、インターンシップを通じて企業の魅力を直接伝えられるため、採用広告などの施策を最小限に抑えることも可能です。
このように、早期の採用コストを削減できる点がメリットです。
3.優秀な人材を早期に確保できる
早期にインターンシップに参加する学生は、将来のキャリアに対して積極的に向き合う傾向があります。例えば自己分析や業界分析を通して、入社後のキャリアを慎重に検討している学生も多く、高い成長意欲を持つ人材と出会える機会となるでしょう。
加えて、企業の魅力を伝えたり、学生が成長できる場を提供したりすると、3月以降の採用活動開始よりも優秀な人材を早めに確保できます。
採用直結型インターンシップのデメリット2選
メリットの多い採用直結型インターンシップには、2つのデメリットがあります。
- プログラム設計に時間と労力がかかる
- 志望度が下がるリスクがある
本項を理解してデメリットを避け、採用直結型インターンシップをスムーズに進めましょう。
1.プログラム設計に時間と労力がかかる
採用直結型インターンシップでは、準備から実施、フォローまで多くの工数が必要です。実践的なプログラムの設計や受け入れ部署との調整、学生の評価基準の策定など、従来のインターンシップ以上に準備が求められるでしょう。
また、採用につなげるためには学生とのつなぎ止めや選考プロセスなどの工数も増加します。そのため、今まで以上に採用活動の期間が長くなり、人事部門の負担が大きくなる可能性があります。
2.志望度が下がるリスクがある
採用直結 インターンシップでは、学生に実際の業務や職場の雰囲気を体験してもらう必要があるため、企業の課題や問題点が見えやすい傾向があります。例えば、業務の大変さなどの現実をありのままに見せすぎると学生の志望度が下がる恐れもあります。
それゆえ、リアルな業務体験を伝えつつも改善案やメリットを伝えましょう。具体的には、企業の課題に対する改善の取り組みを伝えたり、若手社員との交流の場を設けたりするなど、企業の魅力と現実両方を伝える工夫が必要です。
採用直結型インターンシップの3つの実施パターン
採用直結型インターンシップには、目的や企業の採用戦略に応じて選択できる以下の3つのパターンがあります。
- 早期選考型
- 本選考優遇型
- ジョブ内定型
本項を読み、自社がどのパターンを選ぶべきかを判断しましょう。
1.早期選考型
早期選考型とは、優秀な人材を就活解禁前の早い時期から選考できる手法です。他社より先に優秀な学生と出会える可能性が高く、早期に内定を出せるメリットがあります。
ただし学生との認識の違いを防ぐため、募集時には「早い段階で面談に移行する場合がある」といった記載をしましょう。
また、選考に移行する学生を選ぶ基準を明確にし、担当者を決めておくなど、面談実施に向けた準備も必要です。
2.本選考優遇型
本選考優遇型とは、インターンシップに参加した学生の書類選考を免除するなど、本選考での条件を優遇する仕組みです。優秀な学生を選び出して交流会や食事会に招待するケースもあり、学生との接点を作り選考の判断材料を増やせます。
さらに優遇措置によって優秀な学生を囲い込む効果も期待できます。実施の際は、招待する学生を選ぶ基準と連絡方法、開催場所などを事前に決めておきましょう。
3.ジョブ内定型
ジョブ内定型とは、インターンシップへの参加を内定の必須条件とする手法です。「内定を得るため」に参加する学生が多いため、意欲の高い人材が集まりやすい特徴があります。
実施時は、通常実際の業務を本格的に体験できるプログラムを組み入れます。一般的な業務に影響が出ないよう、社内への周知を徹底するなどの事前準備が必要です。
採用直結型インターンシップの時期やスケジュール

採用直結型インターンシップの推奨実施時期は、下記のとおりです。
インターンシップの種類 | 特徴 | 推奨実施時期 |
夏インターン | 参加者が最も多く、優秀な人材と出会える可能性が高い | 7~9月 |
冬インターン | 参加者が多く、選考直結のケースも多い | 12月 |
汎用的能力・専門活用型 | 実践的なスキル習得やプロジェクト参画を目指す | 7~9月, 12月 |
高度専門型 | 専門的なスキルを深く習得し、実務に近い経験ができる | 2か月以上 |
採用直結型インターンシップを行う際は、夏インターンが大学3年生の7~9月、冬インターンが大学3年生の12月です。学生の参加が最も多く、優秀な人材と出会える可能性が高まります。
一方、より実践的なスキル習得やプロジェクトへの深い参画を目指す企業では、汎用的能力・専門活用型インターンシップ(5日間以上、専門能力活用型は2週間以上)や高度専門型インターンシップ(2か月以上)の長期プログラムを実施しています。
【5ステップ】採用直結型インターンシップの設計方法
効果的な採用直結型インターンシップを実施するには、以下の5つのステップを踏む必要があります。
- 目的を決める
- 受け入れ人数を決める
- 実施時期と期間を設定する
- プログラム内容を企画する
- 評価基準を設計する
本項では、それぞれのステップについて解説します。
1.目的を決める
プログラムの内容や期間が大きく変わるため、まずは採用直結型インターンシップの目的を決めましょう。企業認知度の向上を目指すなら短期間のプログラム、採用のミスマッチ防止が目的なら長期間のプログラムが効果的です。
具体的には、実際の業務に近い課題に取り組むプロジェクト型のプログラムを設計するケースがあります。その際、学生の成長を促す教育的要素と、企業の実務を体験できる要素をバランスよく組み込みましょう。
2.受け入れ人数を決める
受け入れ人数は、各部署の状況や将来の人材ニーズを考慮して決定します。例えば、新規事業の立ち上げを予定している部署では多めに受け入れたり、専門性の高い部署では少人数制にしたりするなどの調整が必要です。
また、インターンシップ後の正社員採用も視野に入れて計画を立てます。受け入れ部署には、インターンシップの目的や期待される成果を明確に伝え、協力を仰ぎましょう。
3.実施時期と期間を設定する
学生の参加が多い夏季(7~9月)や冬季(12月)に合わせて、時期と期間を設計します。夏季は8~9月の長期休暇により、1週間から2週間程度の集中型プログラムが組みやすくなります。冬季は3年生が就職活動を本格的に意識し始める時期であり、5日間程度の短期プログラムを実施することで、早期から自社に興味を持つ学生を見つけやすくなります。
なお、学生の選考スケジュールや業界の採用状況に合わせて、日程を柔軟に調整することが重要です。人気企業の選考時期と重ならないよう設定することで、より多くの学生が参加できるプログラムになります。
4.プログラム内容を企画する
学生にとって魅力的で、企業にとっても有益なプログラムの設計も求められます。実際の業務に近い課題に取り組むプロジェクト型のプログラムや社員との交流機会を設けることで、学生の満足度を高められ、優秀な人材の獲得につながるでしょう。
プログラムは期間や目的に応じて柔軟に調整し、学生の成長を促す教育的要素と企業の実務体験をバランスよく取り入れましょう。
5.評価基準を設計する
公平で効果的な選考を実施するため、明確な評価基準を設定しましょう。書類選考や適性検査、面接など、複数のステップを設け、インターンシップの目的や求める人材像に基づいた評価を行います。
さらに、インターンシップでの業務評価など多角的な視点から評価できる仕組みを整えます。評価基準は選考に関わるすべての担当者で共有し、統一した基準で判断できるようにしましょう。
採用直結型インターンシップを成功させる3つのポイント
採用直結型インターンシップを効果的に運用するために、下記3つのポイントを押さえましょう。
- 現場社員との連携を強化する
- フィードバックを丁寧に行う
- 継続的なフォローアップを実施する
詳しく解説します。
1.現場社員との連携を強化する
学生が企業の実際の業務や雰囲気を体験するには、現場社員の協力が欠かせません。そのため、インターンシップの目的や意義を社内で共有し、会社全体で支援する雰囲気を作りましょう。
例えば「シャドウイング(実際の職場環境で仕事内容を学ぶ育成方法)」という手法を取り入れると、現場の業務を妨げずに学ぶ機会を提供できます。若手社員(1~3年目)のもとにインターン生を配置し、社員の影のように業務を体験させましょう。
会議での議事録作成や顧客訪問への同行などにより、実践的な就業体験になります。
2.フィードバックを丁寧に行う
インターンシップを通じて、学生は多くの気づきや経験を得ています。それに加えて、終了後の振り返りや既存社員からの直接フィードバックをもらうことで、学生の成長につながるでしょう。
例えば、プロジェクトの成果発表会を開催し、社員からアドバイスをもらう機会を設けたり、1on1面談で今後の課題を明確にしたりすると、学生は社会人になる前にやるべきことを把握できます。
また、入社後の成長や活躍のイメージを描けると「この会社で自分は成長できそうだ」という実感にもつながります。
3.継続的なフォローアップを実施する
インターンシップ終了後も、優秀な人材とは定期的にコンタクトを取りましょう。特に採用したい人材に対しては、インターンシップへの再参加を促したり、少人数での社員座談会に招待したりするなど、積極的なアプローチが効果的です。
このように、発掘した優秀な人材の自社への志望度や熱量を維持し、選考から内定までつなげる取り組みが求められます。
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採用直結型インターンシップは、インターンシップ参加者が本選考に進める採用手法です。選考の一部免除や早期選考の権利付与、実力次第で内定獲得も可能です。企業と学生同士の理解を深め、採用コストの削減や優秀な人材を確保できるメリットがあります。
効果的に運用するためには、目的設定から評価基準の設計まで、5つのステップに沿って入念に準備をしましょう。また、現場社員との連携強化やフィードバックの実施、継続的なフォローアップなど、運用面でのポイントも押さえる必要があります。
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