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【人事担当必見】人員整理とは?リストラとの違いや9つの方法、やり方を解説

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coachee 広報チーム
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「業績悪化で人員整理を検討しているが、どのように進めれば良いかわからない」
「人員整理を円滑に行い、会社と従業員への影響を最小限に抑えたい」
「人員整理に関する法的な要件や注意点について知りたい」

経営状況の悪化により人員整理を検討せざるを得ない人事担当者の方もいるのではないでしょうか?人員整理が必要な場面はありますが、進め方を誤ると、法的トラブルや企業イメージの低下など、問題を引き起こす可能性があります。

そこで本記事では、人員整理とは何かや9つの方法、法的要件まで詳しく解説します。代替策の検討から人員配置の再構築まで、人事担当者が知るべき重要事項を網羅しています。

本記事を参考に、法的リスクを最小限に抑えながら、人員整理をスムーズに進めましょう。

人員整理に関するアドバイスを求めている方は、経験豊富な人事のプロを紹介するcoachee人事シェアへのご相談もご検討ください。

人員整理の内容をヒアリングし貴社に合った方法をご提案します。気になる方はサービス紹介資料をご覧ください。

人員整理とは

人員整理とは、企業が事業の廃止などにともない、従業員との雇用契約を解消することです。一部の従業員と雇用契約を解消して事業再生を図る「人員削減」だけでなく、会社の清算や破産による全従業員との雇用契約の解消も人員整理に含まれます。

大手企業でも行われており、2025年3月時点で米金融大手ゴールドマン・サックスは今春に1,000人を超える人員削減を計画中です。また日本では東芝が国内従業員約3,500人の人員整理を行ったと発表しています。

参考:米ゴールドマン・サックス、1000人超の人員削減 経費抑制|日本経済新聞
参考:東芝が3500人の人員整理、3000人が早期退職か…コストカットで捻出した資金を成長事業へ投資|読売新聞

リストラとの違い

人員整理はリストラの一環として行われるケースが多いですが、両者には明確な違いがあります。リストラは「再構築」を意味し、不採算部門の分離や資産の見直し、固定費削減など幅広い施策が含まれます。ただし日本では解雇の意味合いが強い点に注意が必要です。

これに対して人員整理は人件費削減を目指し解雇や早期退職奨励などの具体的な方法が取られます。

人員整理が検討される背景

日本企業で整理が進む背景として、長年続いてきた終身雇用制度の崩壊と、市場の環境の変化が挙げられます。

国内市場は成熟期を迎え飽和状態にあり、収益性も低下傾向にあるため、企業は大幅な売上増加を期待できない状況に直面しています。このような環境下では、企業が利益水準を維持するためには、人件費を含む経費の削減が必要です。

さらに、企業が将来の成長を見据え、新たな成長分野へ経営資源を振り向けたり、先端技術への投資を実施したりするためには、効率性の低い部門や業務から人材を再配置する必要性が高まっています。

人員整理の実施前に行うべき4つのこと

人員整理を実施する前に、以下の4つのステップを踏むと、法的リスクを軽減しながら、円滑な人員整理が実現できます。

  1. 代替策を検討する
  2. 整理解雇の4要件を満たしているかを確認する
  3. 経営状況を従業員と共有する
  4. 人員整理後の人員配置を考える

それぞれのポイントを押さえて、人員整理にともなうトラブルを未然に防ぎましょう。

1.代替策を検討する

まずは、単に解雇などの人員整理を行うのではなく、以下の代替策を検討してみましょう。

  • 役員報酬を減額する
  • 残業時間を減らす

社員に給与引き下げへの協力を求める際には、経営層が率先して報酬カットを行う姿勢を示しましょう。公平性をアピールし、社員の理解を得やすくするためです。

また、残業を減らしてもらい時間外手当の支出を抑えると人件費削減につなげられます。不要な業務を見直しフレックスタイム制を導入するなどを行えば、業務時間を減らしながら生産性を高められるでしょう。

2.整理解雇の4要件を満たしているかを確認する

整理解雇を実施するためには「整理解雇の4要件(※)」を満たす必要があります。満たさない場合、解雇は無効と判断されるリスクがあるため、慎重に確認しましょう。

要件内容具体例・注意点
(1) 人員整理の必要性経営上やむを得ない理由があり、人員整理が必要であること・業績悪化による経営危機(例:連続赤字)
・「生産性向上」だけでは不可
(2) 解雇回避努力義務の履行解雇以外のあらゆる手段を検討・実施していること・希望退職募集
・役員報酬削減
・出向・配置転換・休業
(3) 被解雇者選定の合理性選定基準が客観的・公平であること・勤務成績・能力評価
・家族状況など私的な要素は不可
・「新人から切る」は原則NG
(4) 解雇手続きの妥当性労働者・労働組合と十分な協議を行っていること・事前説明と意見聴取
・書面での通知・社会的合理性(時期・方法)

上記の表をもとに自社の状況を照らし合わせ、不足している要素がないか確認してください。

特に「(2)解雇回避努力」と「(4)手続きの妥当性」は、時間をかけて取り組む必要があります。書面での記録を残すことも、後日のトラブル防止に有効です。

※整理解雇は過去の裁判の判例などから判例法として確立された労働慣行上の用語で、法律で規定されているわけではありません。

参考:整理解雇には4つの要件が必要|厚生労働省

3.経営状況を従業員と共有する

人員整理の検討段階では、企業の現状を従業員に隠さず伝えましょう。「なぜ人員整理が必要なのか」「どういった影響が予想されるのか」を説明すれば、従業員の不安を軽減でき、理解・協力を得やすくなります。

情報共有の手段として、全社集会や部門ごとのミーティング、社内報などを活用し、経営状況や事業計画をわかりやすく提示する必要があります。また、従業員が疑問を直接質問できる場を設けることも大切です。

4.人員整理後の人員配置を考える

人員整理を進める際には、削減後の体制をあらかじめ検討する必要があります。従業員数が減っても、事業目標達成のためには必要な業務を滞りなく遂行しなければなりません。

そのため、人員整理後を見越して、各部署に必要な人数やスキル、経験値などを明確にし、最適な人材配置を計画しましょう。

人員整理の9つの種類

人員整理にはさまざまな手法があり、状況に合った方法を選択する必要があります。以下に主な9つの種類を表でまとめました。

名称内容メリット/効果
配置転換・職務や勤務場所の変更
・役職変更や賃金減額がともなう場合もある
雇用維持、人員の有効活用
出向・他社で勤務しながら自社に籍を置く
・人件費は出向元・出向先で分担
雇用調整がしやすい
転籍・自社との雇用契約を解消し、別会社で新たに雇用される
・人件費は転籍先が負担
人員削減、人件費削減
派遣社員の削減派遣契約を解消または不更新低リスクで解消可能、人件費削減
契約社員・パート社員の雇止め契約期間満了時に更新しない人件費削減
内定取消し採用内定を取り消す新卒採用コスト削減
希望退職募集従業員に退職を募る低リスクで解消可能
退職勧奨個別に従業員に退職を勧める個別対応可能
整理解雇経営上の理由で従業員を解雇大幅な人員削減が可能

これらの手法を状況に応じて選択し、法的リスクやコストを考慮したうえで、最適な人員整理計画を立てましょう。

【3ステップ】人員整理の具体的なやり方・進め方

人員整理を進める際には、従業員の意思を尊重する観点から段階的なアプローチが望ましいでしょう。下記の流れが一般的です。

  1. 希望退職を募る
  2. 退職勧奨を行う
  3. 整理解雇を進める

順を追って実施すると、従業員との関係悪化や法的リスクを最小限に抑えられます。

1.希望退職を募る

希望退職は全社的あるいは特定部門で退職希望者を募集し、会社と退職者の双方合意により雇用契約を解消する方法です。

通常は退職金の割増や再就職支援などの優遇措置を提示し、従業員の自主性を尊重しながら選択を促します。

特定の社員を名指しして解雇するよりも、トラブルや法的問題に発展する危険性が低いというメリットがあります。従業員の意思決定を基本とするため、比較的穏便に進められるでしょう。

2.退職勧奨を行う

退職勧奨は会社側から退職を提案し、従業員との合意による雇用契約終了を目指すアプローチです。従業員が自発的に決断する形を取るため、解雇のように会社だけの意思で雇用契約を打ち切れません。

法的リスクが比較的小さい手法ですが、従業員を説得して同意を得るには相応の時間と労力が必要です。また、強引な勧奨は「退職強要」と判断される危険性もあるため、人員整理の必要性を伝え、相手の要望に耳を傾けるなど丁寧な対応が求められます。

3.整理解雇を進める

希望退職者が目標人数に達しない場合、整理解雇を行います。事業転換や経営不振などを理由に実施され、企業の一方的な意思表示により雇用関係を解消します。

解雇の一種であり、裁判などの法的争いや企業イメージの低下を招く可能性がある点は認識しましょう。また、前述したように、整理解雇の4要件を満たしているかを確認してください。

人員整理のメリット

人員整理のメリットは、企業の支出を大幅に減らせる点にあります。人件費は企業の固定経費の中でも特に負担が大きく、削減により経営状態を健全化できます。

給料や福利厚生費用だけでなく、社宅関連経費や社員教育費なども含め、人材に関わるさまざまな固定支出を減少させられるのが特徴です。

また、削減できたコストは企業の将来に向けたさまざまな分野への再投資に活用できます。新商品の開発や新サービスの立ち上げなど、事業強化に必要な資金として有効利用できます。

さらに、生産性を高める設備投資や業務効率化のためのシステム導入にも充てられるでしょう。

人員整理のデメリット

人員整理には下記のようなデメリットもあります。

  • 従業員のやる気低下を招く恐れがある
  • 企業の社会的評価が下がる可能性がある

人員整理を行うと、残された社員の間に不安感が広がり、仕事へのモチベーションが大幅に低下する可能性があります。解雇を免れた社員も「次は自分かもしれない」と不安を抱えるようになるでしょう。

その結果、業務への集中力が低下し、企業全体の生産性が落ちる現象が見られます。

ほかにも、企業が経営的に苦しい状況を世間に示すため、社会的な信用や評判を下げる要因になりえます。特に大規模な人員削減がメディアで報じられると、企業イメージが悪化する恐れがあります。

例えば、金融機関の融資姿勢が慎重になったり、取引先との関係が悪化したりすることも考えられるでしょう。

【契約形態・パターン別】人員整理の注意点

人員整理を行う際は、従業員の契約形態によって異なる法的制約や注意点があります。

  1. 正社員
  2. パート・アルバイト
  3. 派遣社員
  4. 新卒内定者

契約形態別の特徴を押さえて、法的リスクを最小限に抑えた人員整理を行いましょう。

1.正社員

正社員の雇用解除は、働く人の生活基盤に直結する重大事項であるため、法的制限が設けられています。安易な判断による解雇は裁判で無効となる可能性が高く、結果的に給与の遡及支払いや精神的苦痛に対する賠償金などの追加負担が発生するリスクがあります。

したがって、整理解雇の4要件を満たすことが重要です。特に解雇回避のためにさまざまな努力を実施したという証拠が求められるため、経営陣の報酬削減や希望退職者の募集といった施策を段階的に行い、記録を残しましょう。

2.パート・アルバイト

パート・アルバイトの人員削減は、契約の種類によって対応方法が異なります。有期雇用契約の場合は、原則として期間中の解雇はできません。

やむを得ない事情がある場合のみ解雇が認められる余地はありますが、基準は厳しく設定されています。

契約満了時に更新しない方法(雇止め)を選択する場合でも、一定の条件を満たすと雇止め法理が適用される恐れがあります。特に長期間にわたって契約の更新を繰り返してきた場合は注意が必要です。

また、無期限の雇用契約を結んでいるパート・アルバイトには、正社員と同等の解雇規制が適用される点も覚えておきましょう。

3.派遣社員

派遣社員は派遣元企業との労働契約に基づいて就業しているため、派遣先企業が直接解雇する権限はありません。契約期間の途中解除は、やむを得ない理由がある場合に限られ、その際も派遣元企業との合意が必要です。

派遣社員の削減は、主に派遣契約の解除か更新拒否によって行われます。ただし、契約途中での解除は派遣元企業に損害を与える可能性があるため、十分な配慮と事前の協議が望ましいでしょう。

4.新卒内定者

内定取り消しが認められるのは、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合に限ると裁判例で提示されています。企業都合による内定取り消しを行う場合「整理解雇」の4要件を満たす必要があります。

内定取り消しは社会的な影響も大きく、企業イメージを著しく損なう恐れがあるため、最終手段として検討すべきでしょう。

内定者の就職機会を奪うことになるため、代替策として入社時期の繰り下げや、グループ会社への就職あっせんなどを検討する必要があります。

人員整理に関する法的トラブル事例

人員整理を進める際にはさまざまな法的リスクがともないます。実際にトラブルとなった事例を学び、自社の人員整理計画に活かしましょう。

  1. 整理解雇が無効と判断
  2. 退職勧奨が退職強要と判断

以下の項で詳しく解説します。

整理解雇が無効と判断

裁判所では、下記の理由から整理解雇が無効と判断されたケースがあります。

  • 人員削減の必要性が認められない
  • 解雇回避の努力が不十分
  • 合理的な人選基準がない

コロナ禍での経営不振を理由とした整理解雇でも、人選基準の説明不足や希望退職者募集などの対応不足により、無効判決が出ています。

企業側は「経営上の理由」を主張する傾向にありますが、裁判所は財務状況や将来予測に基づく判断を求めるため、十分な根拠資料の準備が必要です。

退職勧奨が退職強要と判断

退職勧奨が強要と判断されると、労働者の権利侵害として損害賠償責任を負う可能性があります。

1時間以上におよぶ面談を繰り返したケースや、2〜4か月の間に11〜13回もの退職勧奨が行われたケースでは、心理的圧力を加えて退職を強要したとして企業側に賠償命令が出ています。

退職勧奨を行う際は、労働者の意思を尊重し、適切な回数と時間で行いましょう。ほかにも複数の上司による同時勧奨や、就業時間外の長時間にわたる説得も強要と判断されやすいため注意が必要です。

人員整理を円滑に進める4つのポイント

人員整理を実施する際には、法的リスクを最小限に抑えながら、円滑に進める以下のポイントがあります。

  1. 再就職支援を充実させる
  2. 退職金や特別加算金を検討する
  3. 書面で通知する
  4. 専門家に相談する

それぞれのポイントを詳しく見ていきましょう。

1.再就職支援を充実させる

人員整理を行う際は、退職者への再就職支援を手厚く提供しましょう。再就職支援セミナーの開催や、キャリアカウンセリングの機会を設けると、対象者の不安を和らげられます。

さらに、外部の人材紹介会社と連携し、退職者の新たな就職先を紹介する取り組みも効果的です。

2.退職金や特別加算金を検討する

人員整理時には、通常の退職金に加えて特別加算金の支給を検討すべきです。

加算金の額は会社の財務状況と従業員の勤続年数などを考慮して決定します。特別退職金の相場は賃金(月額)の3か月分〜6か月分程度ですが、法律上の明確な基準はありません。

退職金や特別加算金の支給が公平であることを示すために、支給条件を事前に設けることをおすすめします。

3.書面で通知する

書面による通知は後のトラブル防止や法的な保護の観点から重要です。

後日、解雇の有効性や条件の争いが生じた場合に書面が客観的な証拠となり、口頭のみの説明では「言った・言わない」の問題が発生しかねません。

また、退職日・退職金・社会保険の扱いなどの重要事項を明確に記載すると、双方の認識の相違を防げます。

通知する際には、対象者の心情に配慮し、人員整理に至った経営状況や選定基準について根拠を示しながら説明しましょう。

退職後の支援内容(再就職支援や紹介先の有無など)についても明確に伝え、質問や不安に個別に対応する時間を設けることが重要です。

4.専門家に相談する

人員整理は法的リスクが高いため、弁護士などの専門家に相談しましょう。労働問題に詳しい弁護士のアドバイスを受けると、法的トラブルを未然に防げます。

専門家の支援を受けると、人員整理の手順や方法を進められるようになります。特に整理解雇の4要件を満たしているかなど、法的観点からのチェックを受けると、後の訴訟リスクを低減できるでしょう。

自社の状況に応じて人員整理の方法を慎重に検討することが重要

人員整理とは、企業が事業の縮小や経営不振などの際に行う雇用契約の解消であり、リストラの一環として実施される場合が多いです。実施前には代替策の検討や整理解雇の4要件の確認などの準備が必要です。

人員整理には配置転換や出向、整理解雇など9つの種類があります。また、正社員、パート・アルバイト、派遣社員、新卒内定者といった雇用形態によっても対応方法が変わってきます。

人員整理を進めるためには、再就職支援の充実や特別加算金の検討など、従業員への配慮が重要です。

人員整理は法的リスクが高く、手続きを誤ると裁判で無効とされるケースも少なくありません。このような状況で専門的なサポートが必要な場合は、人事のプロフェッショナルが在籍しているcoachee人事シェアがおすすめです。

経験豊富な人事のプロが、貴社の状況に合わせた人員整理の進め方から法的リスク回避までアドバイスします。整理解雇の4要件を満たす方法や、より円満な退職勧奨の進め方などの対応策を提案してくれるでしょう。

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記事を書いた人
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国家資格キャリアコンサルタントの資格を持つ高橋秀誓と、採用責任者、人事責任者などの豊富な経験を持つスタッフが率いるcoacheeの広報チーム。
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