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【2025年】給与改定とは?メリット・デメリットや5つの進め方を解説

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coachee 広報チーム
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「給与改定の制度設計をどのように進めれば良いのかわからない」
「従業員の納得度を高めながら給与制度を見直したい」
「給与改定に関する法的リスクを避けたい」

給与改定を検討している人事担当者は、このような悩みを抱えていませんか?

本記事では、給与改定とは何かや進め方を詳しく解説します。給与改定の構造、メリット・デメリットから実施手順まで幅広く紹介します。

法的リスクの回避方法や適切な実施時期についても解説するので、適切な給与制度の構築につながるでしょう。

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【2025年最新】給与改定とは?

給与改定とは、企業が従業員の賃金を計画的に見直し、企業環境や従業員の貢献度に合わせて調整することです。昇給だけでなく減額も含まれており、さまざまな形態があります。

企業は社員の能力や実績、勤務姿勢などを適切に評価し、見合った報酬を提供することで、社員のモチベーションや生産性が向上し、組織の競争優位性を確保・強化できます。

給与改定の構造

給与改定の構造は主に3つの要素で構成されています。

階層内容・目的具体的手法
1. 基本的な給与水準の変更・市場賃金トレンドへの対応
・人件費適正化
・採用競争力の確保
・全社的な給与総額の見直し
・賃金構造基本統計調査の分析
・業界比較レポートの作成
・労働分配率シミュレーション
2. 給与構成の変更・経営目標との連動強化
・戦略的人材投資
・基本給/変動給比率の調整(例:70:30→60:40)
・役割給導入による年功要素削減
3. 支払条件・方法の変更・従業員モチベーション向上
・人件費の変動費化
・管理効率化
・運用ルールの実務改善
・定期昇降給の見直し
・賞与の水準/支給ロジックの見直し

まず、基本的な給与水準の変更では、市場水準を基準として給与総額を見直しましょう。具体的には業界平均賃金の調査分析や自社の競争力評価を行い、将来の人件費をシミュレーションします。

次に、給与構成の変更では報酬要素の再編成を行います。基本給と変動給の比率調整や各種手当の新設・廃止、賞与体系の見直しを通じて、経営戦略に沿った効果的な報酬を決めましょう。

最後に、支払条件・方法の変更では個別項目の運用改善を行います。ベースアップの実施や査定昇給制度の導入、地域手当の設定などにより、柔軟な人件費管理と従業員のインセンティブ向上を図ります。

最新動向

最近では、給与改定に取り組む企業が増加傾向にあります。

帝国データバンクが実施した調査によると、2025年度において企業の約62%が賃上げを予定していると回答しました。この結果から、給与改定の中でも、多くの企業が従業員の賃上げを重視しているとわかります。

出典:2025年度の賃金動向に関する企業の意識調査|帝国データバンク

給与改定のメリット

給与改定にはさまざまなメリットがあり、企業と従業員の双方にプラスの効果をもたらします。

給与改定により賃金が適正化されると、従業員は自らの労働が正当に評価されていると実感します。これにより、仕事への意欲や責任感を高め、結果として業務効率の改善につながります。

また、適切な給与改定は企業の売上や利益といった業績向上にも効果的です。正当な評価と報酬を受けた従業員は仕事への満足度が高まり、業務への集中力や創意工夫が促進されるためです。

結果として従業員の生産性が高まり、一人当たりの売上貢献度が増加し、組織全体の収益が向上します。

給与改定のデメリット・リスク

給与改定には多くのメリットがある一方で、考慮すべきデメリットやリスクも存在します。以下では、給与改定実施時の主な懸念点を説明します。

  • 利益が減少する
  • 給与を上げると今後下げづらくなる

給与改定で賃金を上げると、利益が減少する可能性があります。社員数が多いほど組織の負担は大きくなり、特に収益が悪化している時期に無理な賃上げを実施すると経営が悪化する可能性もあるでしょう。

例を挙げると、従業員50人の会社で、一人あたり月額1万円の賃上げを実施すれば、毎月の支出は給与だけで50万円膨らむ計算になります。そのため、安易に賃上げを行わずに、将来の売上や利益なども考慮したうえで行いましょう。

さらに、業績悪化時に人件費の調整が困難なケースがあります。一度引き上げた給与を下げるのは容易ではありません。賃金引き下げは不利益変更とみなされるため、社員から同意を得てから実行する必要があります。

経営状況が悪くなったからといって即座に給与を削減できるわけではないため、中長期的な視点での判断が求められます。

給与改定の進め方5ステップ

給与改定を円滑に実施するには、計画的なアプローチが欠かせません。本項では、給与改定を成功させる5つのステップを紹介します。

  • 現状の給与制度を分析し方針を決める
  • 賃金テーブルを修正し変更案を作成する
  • 従業員に説明する
  • 就業規則の意見書を作成する
  • 労働基準監督署に書類を提出する

5つのステップを順に実施して、法的リスクを最小限に抑えながら、効果的な給与改定を進めてください。

1.現状の給与制度を分析し方針を決める

自社の賃金体系における課題点を把握するために、業界の賃金水準調査や社員への「給与満足度アンケート」を実施します。

具体的な方法として、厚生労働省が毎年公表する「賃金構造基本統計調査」を活用して同業界の一般的な賃金レベルと比較したり、社員に匿名での給与満足度調査を行って本音を把握したりします。

加えて、企業の理念や今後の経営戦略(どこを目指し、何を優先するか)を整理し、給与改定の方針を決めると良いでしょう。

2.賃金テーブルを修正し変更案を作成する

次に賃金テーブルを修正します。

現行の給与内訳を洗い出し、構成要素をもとに新たな賃金表を設計します。既存社員の情報を新しい給与制度に当てはめてシミュレーションし、現状の給与額とシミュレーション結果を比較して、問題点がある場合は再検討が必要です。

賃金に関する規則は、労働基準法などさまざまな法規が関連するため、下記のように必要に応じて行政機関などへの確認を行いましょう。

  • 社員に不利益な変更になっていないか
  • 最新の法改正、判例動向に対応しているか
  • 今の自社の実情と合致した内容になっているか

上記の内容を確認しながら変更案を作成します。

下記のページで変更案の様式をダウンロードできるので、必要書類を準備してください。

参考:東京労働局・様式集

3.従業員に説明する

給与体系を変更する際は、社員との相互合意が必須です。

社員に新たな給与制度への変更を了承してもらうため、資料配布や説明会を開催し、変更の背景や将来的な運用方法を説明します。

説明を怠り、合意を得ていないと「労働条件の不利益変更(従業員にとって不利な方向に変更すること)」を実施したとして労使トラブルに発展する恐れがあります。

そのため、丁寧に説明し疑問にはしっかりと答えるようにしてください。

4.就業規則の意見書を作成する

労働基準法第90条1項によると、就業規則の作成・修正は、労働者の過半数で組織する労働組合(過半数労働組合)または労働者の過半数を代表する者の意見を聴取することが義務づけられています。

届出の際には意見書としてまとめた文書の添付が必要(同2項)です。

選出された従業員代表の意見を文書化し、正式な手続きを踏むと、法的要件を満たした給与改定が実現します。

就業規則の意見書に決まった様式はありませんが、労働基準監督署のホームページなどに掲載されているものを利用すれば、記載漏れを防げることができるでしょう。

参考:東京労働局・様式集

参考:労働基準法|e-GOV

5.労働基準監督署に書類を提出する

届出は、事業場ごとに管轄の労働基準監督署への提出が原則です。

経営陣から就業規則変更案の承認を得て、従業員代表の意見書を作成できたら、事業場を管轄する労働基準監督署に両方を提出します。助成金が適用される場合もあるため、申請も忘れずに行いましょう。

その後、改めて社員への通知も確実に実施します。

給与改定で確認すべき3つのポイント

本項では、制度設計時に確認すべき3つのポイントを解説します。

  • 昇給制度と評価制度が紐づいているか
  • 役職手当など各種手当の金額設定は適切か
  • 業界相場との比較は行っているか

以下の項で詳しく解説します。

1.昇給制度と評価制度が紐づいているか

社員の意欲を維持するためには、昇給の仕組みと評価の仕組みが適切に連動していることが重要です。

根拠や背景のない昇給では、社員も何がプラス評価されて昇給・減給したのか把握できないため、継続的な成長を促す取り組みとはなりません。そのため、昇給システムを取り入れる際には、評価システムとの関連性も考慮して策定しましょう。

給与査定をわかりやすくするためには、煩雑な評価システムや規則を設けるのではなく、シンプルな仕組みにして全社員に公開すると効果的です。

例えば「業績」「スキル」「勤続年数」の3項目のみで評価し、各項目を5段階で点数化して合計スコアで査定額を決定する方法があります。

2.役職手当など各種手当の金額設定は適切か

管理職は、残業代の支給対象外であるため、役職手当の額が少ないと時間外勤務が多い一般社員よりも収入が下がる可能性があります。このような状況になれば、幹部職を希望する社員も減少するでしょう。

役職手当を単に決めるのではなく、責任の重さや期待される役割に見合った金額を根拠を持って設定してください。

3.業界相場との比較は行っているか

給与改定の実施時には、業界の平均給与水準や組織規模に応じた適正な改定率を検討しましょう。

令和5年の賃上げ額を産業分野別に見ると、業種によって格差があることが示されています。例えば、鉱業・採石業・砂利採取業の18,507円が最も高額で、医療・福祉分野が3,616円で最も低い結果です。

周辺地域の給与相場が上昇したことで競合他社との差別化を図るために時給を調整するケースもあります。

出典:令和5年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況  2. 賃金の改定額及び改定率」、「令和4年賃金引上げ等の実態に関する調査の概況  2. 賃金の改定額及び改定率|厚生労働省

給与改定で注意すべき2つのこと

本項では、給与改定を円滑に進めるうえで、気をつけるべき2つのポイントを説明します。

  • 不利益変更に該当しないか確認する
  • 打ち合わせ内容を記録しておく

留意することで、法的トラブルを回避し、社員との信頼関係を維持しながら改定を進められます。意識して、給与改定にともなうリスクを最小限に抑えましょう。

1.不利益変更に該当しないか確認する

給与改定が不利益変更(社員の労働条件を現状よりも不利に修正すること)に当たるかどうかを検討しましょう。

賃金の減額は基本的に不利益変更に該当し、社員の合意が必要です。過去の裁判例から、減額の上限は10%程度が妥当とされています。

また、勤務時間の変更も、収入の低下につながる場合は不利益変更の判断要素となるため、十分な検討と説明が必要です。

社員の理解を得るためには、経営状況や改定の必要性を明確に伝え、納得感を高める工夫が欠かせません。

2.打ち合わせ内容を記録しておく

給与改定の検討内容を議事録に残し、文書として保存しましょう。

口頭だけの約束では、後になって「聞いていない」「そのような話はなかった」などのトラブルに発展する恐れがあります。協議や検討された内容を文書化し、契約事項を明確に記載して保管してください。

同意書や変更内容を明記した書類も、紛争防止のために必ず交換しておきましょう。就業規則の修正後は、社内での周知徹底も忘れないようにしましょう。

給与改定に適切なタイミング・時期

給与改定の実施時期は各企業によって異なりますが、決算期の翌月が理想的です。

例えば3月決算の場合、次の事業年度がスタートする4月から給与改定を行うとタイミングも良くなります。年単位で給与を見直す際には、事業年度の中間期終了月の翌月からが推奨されます。

また、給与改定による額の変更がある場合は、一定の移行期間を設けましょう。特に給与が減少するケースでは、突然手取りが少なくなると社員の生活にも影響を及ぼすため、段階的な調整や十分な説明期間を設けるなどの配慮が必要です。

改定時期の決定には、社員への影響と企業の事業サイクルの両方を考慮し、適切なタイミングを選択しましょう。

給与改定は慎重に話し合い手続きを進めよう

給与改定とは、企業が従業員の賃金を計画的に見直し、貢献度などに応じて調整することです。

2025年度では約62%の企業が賃上げを予定しており、適切な改定は社員のモチベーション向上や優秀な人材確保につながります。一方で、固定費拡大のリスクもあるでしょう。

給与改定を成功させるには、現状分析や賃金テーブル作成、従業員への説明などを行う必要があります。特に、不利益変更に該当しないかを確認しながら進めてください。

給与改定を検討している企業担当者は、人事のプロフェッショナルが多く在籍しているcoachee人事シェアの利用をご検討ください。

経験豊富な人事のプロが、貴社の課題に合わせて給与制度の設計から改定手続きまでサポートします。

初期費用0円で利用できるため、コストを抑えながら始めたい方でも利用しやすいでしょう。気になる方は下記のサービス資料をチェックしてみてください。

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国家資格キャリアコンサルタントの資格を持つ高橋秀誓と、採用責任者、人事責任者などの豊富な経験を持つスタッフが率いるcoacheeの広報チーム。
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