「能力はあるのに、新しい業務を任せようとすると消極的になる」
「チーム全体が現状維持を好み、挑戦する空気が生まれない」
部下やチームの成長停滞に悩む管理職の方々は、このような課題に直面しているのではないでしょうか。これは本人のやる気の問題というよりも、心理的な安全領域である「コンフォートゾーン」にとどまっている状態と考えられます。
無理に抜け出させようとすると反発を招きますが、適切なアプローチで領域を「広げる」ことができれば、部下は自律的に成長し始めます。
本記事では、コンフォートゾーンの心理的メカニズムと、部下の挑戦を引き出すマネジメント術を解説します。
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コンフォートゾーンの意味と成長に関わる3つの領域

ここでは、コンフォートゾーンの定義と、関連する3つの領域を紹介します。
1. コンフォートゾーン(快適領域)
コンフォートゾーンとは、不安やストレスを感じずに、安心して過ごせる心理的な領域のことです。
業務においては、慣れ親しんだルーティンワークや、気心の知れたメンバーとの仕事が該当します。精神的に安定しており、リラックスした状態で高いパフォーマンスを発揮できるのが特徴です。また、心身のエネルギーを回復させる休息の場としても機能します。
しかし、現在の快適な環境にい続けると、成長の機会を失う恐れがあります。慣れ親しんだ業務のみを繰り返すことで、市場で求められるスキルと本人の能力に乖離が生じてしまうからです。
例えば、IT技術の進歩により従来の手法が通用しなくなるなど、本人が気づかぬうちに専門性が失われるケースは少なくありません。したがって、将来的なキャリアのリスクを避けるためには、意識的に新しい課題へ取り組む姿勢が求められるでしょう。
2. ラーニングゾーン(学習領域)
ラーニングゾーンは、コンフォートゾーンのすぐ外側にある領域です。
ここでは未知の体験や新しい課題に直面するため、適度な不安や緊張を感じます。しかし、その負荷こそが成長の糧となります。自分に足りないスキルを自覚し、学習意欲が高まるため、最も効率的に能力を伸ばせる領域です。
コンフォートゾーンから抜け出し、ラーニングゾーンで活動するメリットは以下のとおりです。
- 新しいスキルや知識が定着しやすくなる
- 環境変化への適応能力が高まる
- 「できた」という成功体験が自己効力感を高める
部下の成長を加速させるには、適切な負荷を与えて挑戦を促すことが不可欠です。
3. パニックゾーン(混乱領域)
パニックゾーンは、ラーニングゾーンのさらに外側に位置する危険な領域です。
本人の能力をはるかに超えた課題や、過度なプレッシャーがかかる状態を指します。ここでは不安や恐怖が強すぎて思考停止に陥り、パフォーマンスが著しく低下します。
パニックゾーンの中にいると、学習効果が得られないばかりか、失敗体験がトラウマとなり「二度と挑戦したくない」とコンフォートゾーンに引きこもる原因になりかねません。
部下に挑戦を促す際は、パニックゾーンに突き落とさないよう、負荷の調整を慎重に行う必要があります。
部下がコンフォートゾーンから抜け出せない心理的な理由

「挑戦したほうがいい」と頭では分かっていても、なかなか行動に移せない人は少なくありません。
これは単なる怠慢や性格の問題ではなく、人間が生物として持っている本能的な防衛反応が関係しています。
- ホメオスタシス(恒常性)の働き
- 現状維持バイアス
人間には、体温や心拍数を一定に保とうとする「ホメオスタシス」という機能が備わっています。これは心理面でも同様に働き、変化を「異常事態」とみなして元の状態に戻そうとします。新しい挑戦に対して不安を感じるのは、脳が現状を維持して安全を守ろうとする正常な反応です。
人は利益を得る喜びよりも、損失を被る苦痛を大きく感じる傾向があります。そのため「挑戦して失敗するリスク」を過大に見積もり「今のままでいる安心」を優先してしまいます。これを「現状維持バイアス」と呼びます。
このように、変化への抵抗は脳の仕組みによるものです。したがって、部下個人の資質を責めるのではなく、組織として「挑戦しやすい環境」をつくる必要があるでしょう。
自社のみでこうした環境を構築するのが難しい場合は、外部の知見を活用するのも有効な手段です。
例えば「coachee人事シェア」では、心理的ハードルを下げるメンター制度の設計や、無理なく成長を促すオンボーディングの仕組み作りを支援しています。
プロ人事が貴社の課題に伴走することで、脳の防衛本能を刺激せず、部下が主体的に領域を広げられる組織文化の醸成をサポートいたします。
参考:
厚生労働省「生理」
厚生労働省「ナッジを効果的に使うためのポイント(バイアスとフレームワーク)」
部下がコンフォートゾーンから抜け出せないリスク

部下がコンフォートゾーンにとどまり続けることは、本人の成長が止まるだけでなく、管理職であるあなた自身を追い詰めるリスクになります。
主なリスクは以下のとおりです。
- 難易度の高い業務が上司に集中し、いつまでも現場から抜け出せなくなる
- チーム全体の基準が「現状維持」に固定され、高い目標を達成できなくなる
部下が「今のスキルでできる範囲」に留まり続けると、新しい課題や難易度の高い案件に対応できる人材が育ちません。
そのしわ寄せは、管理職であるあなたに向かいます。「部下に任せると失敗するから」「教えるより自分がやった方が早い」と仕事を任せないでいると、結局あなたがイレギュラー対応や新規案件を巻き取ることになり、いつまでもプレイヤー業務に忙殺されることになります。
また、チーム全体に「今のままで十分」という空気が定着すると、あなたがどれだけ高い目標を掲げても、部下は「それは私の仕事ではありません」「無理です」と挑戦を拒むようになります。
結果としてチームの成果は頭打ちになり、組織を成長させられないリーダーとして、評価まで下がってしまう可能性もあります。
部下のコンフォートゾーンを「広げる」マネジメント手法5選

「コンフォートゾーンから抜け出そう」と言われることがありますが、急激な変化は恐怖心をあおり、かえって現状維持への執着を強めるケースがあります。
重要なのは、安心できる領域を完全に捨てることではなく、徐々に活動範囲を「広げる」というアプローチです。
ここでは、部下の領域を無理なく広げるマネジメント手法を紹介します。
1. 「SMARTの法則」を用いて適切なストレッチ目標を設定する
部下をラーニングゾーンへ導くには、目標の難易度設定が重要です。簡単すぎればコンフォートゾーンにとどまり、難しすぎればパニックに陥ります。
そこで役立つのが「SMARTの法則」です。単なる目標管理のフレームワークとしてではなく、部下の不安を解消し、挑戦を促すための「共通の判断基準」として活用しましょう。
| SMARTの法則 | 内容 |
| Specific(具体的) | 何をすべきか明確か |
| Measurable(測定可能) | 進捗が数字でわかるか |
| Achievable(達成可能) | 努力すれば届く範囲か |
| Relevant(関連性) | 組織目標や本人のキャリアと関連しているか |
| Time-bound(期限) | いつまでにやるか |
特に重要なのが「Achievable(達成可能)」の設定です。成功確率が50〜70%程度の「ストレッチ目標(背伸びすれば届く目標)」を設定すると、適度な緊張感と挑戦意欲を引き出せます。
【具体的な設定例:営業職の場合】
| 目標例 | 週に3件だけ、未開拓の〇〇業界へアプローチする。受注率は問わないが、断られた理由をリスト化し、来月末までにトークスクリプトの改善案を提出する |
| 理由 | 行動量が明確で、結果(受注)ではなくプロセス(改善案)に焦点を当てているため、心理的安全性を保ちながら新しい領域へ踏み出せる。 |
2. 失敗を許容し「ラーニングゾーン」への挑戦を称賛する
新しい領域への挑戦には失敗がつきものです。失敗した際に「なぜできなかったんだ」と叱責される環境では、部下は恐怖からコンフォートゾーンに逃げ込んでしまいます。
居心地の良さだけを追求するのではなく、高い目標に挑戦する意欲を引き出す環境が必要です。
したがって、管理職は、部下の「結果」だけでなく、以下のようにコンフォートゾーンから踏み出した行動を称賛しましょう。
【具体例】
| 契約には至りませんでしたが、従来の提案資料を刷新して挑んだアプローチは素晴らしい試みでした。あの資料は汎用性が高いため、他の案件でもチームの資産として活用できますね。 |
このように「挑戦そのものに価値がある」とフィードバックを通じて伝えることが大切です。心理的な安全性が確保されることで、部下は失敗を恐れずにラーニングゾーンでの活動を継続できるようになります。
関連記事:【実践ガイド】従業員エンゲージメントとは?向上施策や事例、導入手順を解説
3. 定期的な1on1で心理的障壁を取り除く
部下が新しい挑戦をためらう背景には、「自分には能力が足りない」「失敗すれば評価が下がる」といった心理的な思い込みが潜んでいます。
こうした主観的な不安を解消するには、定期的な1on1ミーティングを通じた個別対話が欠かせません。管理職が部下の本音に耳を傾け、不安の正体を客観視させることで、挑戦への心理的ハードルを下げられるからです。
効果的な対話を進めるための手順は以下の通りです。
| 不安の言語化 | 「何が不安か」を問いかけ、部下が無意識に抱いている恐怖を言葉にさせる |
| 事実と感情の切り分け | 失敗のリスクを具体的に検証し、それが「過度な思い込み」ではないかを確認する |
バックアップの明示: | 「万が一の際は私が責任を持つ」と具体的に伝え、安全圏を保障する |
このように、対話を通じて「挑戦に伴うリスクは限定的である」と正しく認識させることが大切です。
面談の具体的な進め方については、以下の記事も参考にしてください。
関連記事:キャリア面談とは?社内で実践するメリットや進め方、成功のコツなどを解説
4. スモールステップで小さな成功体験を積み重ねさせる
脳の防衛本能(ホメオスタシス)を刺激しないよう、変化を小さく刻む「スモールステップ法」も有効です。
既存業務の一部を切り出し、権限の一部を委譲する形で仕事を任せてみましょう。
| プロジェクト全体ではなく「一部」を任せる | いきなりプロジェクトリーダー(PL)にするのではなく「定例会議のファシリテーション」や「新人メンバー1名のメンター役」だけを任せる。 |
| 「決定権」を限定的に渡す | 「最終決定は私がするが、A案かB案かの一次選定と、その理由付けまでは君が決めていい」と伝え、意思決定のプレッシャーを分散させる。 |
「失敗しても上司がカバーできる範囲」で役割を与えると、部下は安全にラーニングゾーンでの経験を積むことができます。小さな成功体験が積み重なると、ラーニングゾーンが新しいコンフォートゾーンへと変わり、自然と扱える業務領域が広がっていきます。
5.意図的にコンフォートゾーンも用意する
成長のためにはラーニングゾーンへ行く必要がありますが、常に緊張状態にあると心身が疲弊し、燃え尽き症候群(バーンアウト)になるリスクがあります。
コンフォートゾーンは「悪」ではなく、エネルギーを回復させる重要な「休息地」でもあります。
マネジメントにおいては「挑戦させる期間」と「慣れた業務で自信を取り戻す期間」のバランスを意識しましょう。部下が疲れている様子なら、一時的にコンフォートゾーンへ戻ることを提案して、十分に回復してから再挑戦を促すのが良いでしょう。
管理職自身が「コンフォートゾーン」から脱却する2つのステップ

管理職は、得意領域であるプレイング業務にリソースを投下し、本来のマネジメント業務が疎かになる傾向があります。
しかし、部下に挑戦を求めるなら、まずは管理職自身がコンフォートゾーンから抜け出し、背中を見せる必要があります。
ここでは、管理職自身が「コンフォートゾーン」から脱却する方法を紹介します。
1. 自分が「マネジメントのラーニングゾーン」にいることを自覚する
まず「忙しい」を言い訳にして、マネジメント業務から逃げていないか自問しましょう。
実務は得意で快適なコンフォートゾーンですが、部下の育成や組織課題の解決といったマネジメント業務は、正解がなくストレスのかかるラーニングゾーンであるケースが多いです。
「マネジメントに苦戦しているのは、自分が新しい領域で成長している証拠だ」と捉え直し、意識的に管理業務へ時間を割く覚悟を持つことが大切です。
2. プレイヤーとしての業務を意図的に手放す
次に、自分が抱えている実務を部下に任せる決断をします。
具体的には、以下の方法で実務を手放します。
| 1.業務の棚卸し | 自分の業務を「判断が必要な業務(コア)」と「手順が決まっている業務(ノンコア)」に分ける。ノンコア業務は、自分がやる方が早くても、部下のラーニングゾーンとして任せる。 |
| 合格ラインの設定 | 「自分なら100点でできる」という基準を捨て「60点の出来なら、あとは修正すればOK」と割り切る。 |
強制的にマネジメントに向き合わざるを得ない環境を作ると、部下に「任せられる経験(ラーニングゾーン)」を提供することにもつながります。
コンフォートゾーンを広げた事例|coacheeでの事例を解説

ここでは、停滞感を打破し、自身のコンフォートゾーンを大きく広げた弊社の支援事例を紹介します。個人のキャリア支援における事例ですが、人が変化するために必要な要素は、組織での部下育成にもそのまま共通しています。
【転職時にコンフォートゾーンを広げた事例】
M.Mさんは、大手メーカーで大規模プロジェクトを統括してきたベテランPMでした。しかし、市場の変化に伴い、慣れ親しんだ従来の手法だけでは通用しないという危機感を抱き、退職を決意されました。
退職後、2年間のブランクを経て再就職を目指す際、M.Mさんは強い不安に直面しました。「自分の価値は今の市場で通用するのか」という不安があったといいます。
しかし、弊社の支援を通じて「客観的な視点」を取り入れたことで、変化が起きました。自身の経験を「次世代のPM像」という新しい価値へ変換できる企業と出会い、活動領域を拡張させたのです。
M.Mさんが一歩踏み出せたのは、不安を受け止め、市場価値を正しく伝えてくれる「プロの伴走」があったからです。
これは組織のマネジメントも同様で、部下が停滞するのは本人のやる気の問題だけではありません。「失敗しても安全だと思える環境」や「客観的に背中を押す仕組み」の不足が大きな要因だといえます。
多忙な管理職がこうした体制をゼロから構築するのは、現実的に難しいでしょう。そこで有効なのが、人事のプロフェッショナルによる外部支援の活用です。
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コンフォートゾーンとは、不安やストレスを感じずに安心して過ごせる心理的な領域のことです。現状維持は心身の回復に役立つ一方、長期間とどまり続けると成長の停滞を招きます。
部下の能力を引き出すには、適度な負荷がかかる「ラーニングゾーン」へ導くことが大切です。
とはいえ「部下のコンフォートゾーンを広げたいが、自分も忙しくてじっくり向き合う時間がない……」 と悩む管理職の方も多いでしょう。
そこで、部下の挑戦を後押しする組織づくりにお困りなら「coachee人事シェア」が役立ちます。
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