「ジョブローテーションを導入すると、会社にどのようなメリットがあるのか知りたい」
「自社に合った制度設計の進め方がわからない」
ジョブローテーションとは、企業が計画的に従業員の職務や部署を一定の期間で定期的に異動させる人事制度です。
本記事では、ジョブローテーションの定義から、時代遅れと言われる理由、メリット・デメリットを解説します。導入判断のチェックリストや成功事例、現代に合わせた「社内公募」などの新しい形も紹介するため、自社に合った運用方法を見つけるヒントが得られるでしょう。
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ジョブローテーションとは、社員の能力開発などを目的に、職務や部署を異動させる制度

ジョブローテーションとは、社員の能力開発や組織全体の活性化を目指して、数か月から数年単位で計画的に職務や部署を変更させる人事異動制度です。
単なる欠員の穴埋めではなく、中長期的な人材育成計画に基づいて実施される点が特徴です。
期間は企業ごとに異なりますが、一般的には3年〜5年程度のスパンで実施されるケースが多く見られます。日本企業における実施率は高く、労働政策研究・研修機構によると、従業員300人以上の企業では半数以上、1,000人以上の企業では約7割が導入されています。
参考:労働政策研究・研修機構「企業の転勤の実態に関する調査」
通常の人事異動との違い
一般的な人事異動とジョブローテーションには、目的や期間において明確な違いがあります。
通常の人事異動は、退職者が出た際の欠員補充や、組織改編に伴う人員調整といった会社都合が優先される傾向にあります。これに対し、ジョブローテーションはあくまで「人材育成」を主な目的としており、社員のキャリア形成やスキルアップを重視して実施される点が特徴です。
また、人事異動は突発的に発生するケースが多い一方で、ジョブローテーションは「3年〜5年で次の部署へ」といった具合に、あらかじめ決められたサイクルや計画に基づいて実施されます。
ジョブローテーションが使われる場面
ジョブローテーションは、主に人材育成の観点から以下のような場面で活用されています。
- 日本企業の新卒一括採用後の育成期間
- 総合職としてさまざまな業務を経験させる場合
- 将来の管理職・幹部候補の育成フェーズ
新入社員が「営業」から「総務」「生産管理」「企画」へと数年ごとに部署を異動するケースが典型例です。このように複数の部署を経験させることで、会社全体の業務フローを理解した人材を育てられます。
ジョブローテーションが日本だけ・時代遅れと言われる3つの理由|デメリットも紹介

かつては日本型雇用の象徴として当たり前だったジョブローテーションですが、近年では「時代遅れ」「廃止すべき」といった声も聞かれるようになりました。
その背景には、働き方の変化や専門性を重視する市場トレンドが影響しています。ここでは、なぜ否定的な意見が増えているのか、3つの理由とデメリットを解説します。
専門性が身につきにくいから
ジョブローテーションが時代遅れといわれるのは、短期間で部署が変わるシステムに対して、一つの分野を深く掘り下げる「専門性」が身につきにくいという批判があります。
特にエンジニアやマーケターなど、高度な専門スキルが求められる職種においては、数年単位で部署が変わることがキャリア形成上のマイナスになる場合があります。
「専門職」としての市場価値を高めたいと考える現代の若手社員にとって、広く浅く経験することへの不安感は無視できない要素です。
一時的な生産性の低下や現場の負担増加につながるから
異動直後は業務知識がリセットされるため、本人が戦力になるまでに時間がかかり、部署全体のパフォーマンスが低下する懸念があります。
受け入れ側の現場管理職にとっては、未経験者を一から育てる教育コストが重く、既存社員の疲弊を招きやすい点が課題です。
例えば「経理部」から「製品開発部」のように、前職との関連性が低い異動が繰り返されると、その都度ゼロベースでの学習を強いられます。こうした配置により、業務の効率が短期的に失われます。
従業員のエンゲージメント低下と離職リスクにつながるから
会社主導の画一的なローテーションは、社員の「自律的なキャリア形成」を阻害し、エンゲージメントを低下させます。自身の希望や適性が無視される環境では「やらされ感」が強まり、仕事への熱意や組織への愛着を持てなくなるためです。
特に転勤などを強制されると、個人のライフプランとの両立も困難になり、最終的には離職を選ぶリスクも高まるでしょう。
モチベーション低下を防ぎ、定着率を高めるための「エンゲージメント向上施策」については、以下も参考にしてください。
【実践ガイド】従業員エンゲージメントとは?向上施策や事例、導入手順を解説
ジョブローテーションを導入する目的やメリット

ここでは、ジョブローテーションがもたらす5つのメリットについて解説します。
1.組織の属人化を解消できる
定期的に担当者が入れ替わることで、特定のベテラン社員に業務が集中するリスクを回避し、組織全体のマルチタスク化を進められます。
担当者が変わるタイミングで引き継ぎが発生するため、業務のマニュアル化や棚卸しが自然と進みます。これにより、ブラックボックス化していた業務プロセスが可視化され、業務効率化のきっかけを作れる点がメリットです。
2.部門間の連携を強化できる
複数の部署を経験した社員が増えることで、前後の工程や他部署の事情を理解した上でのコミュニケーションが可能になります。
例えば「営業」「マーケティング」「人事」など、異なる部署の知識がつながることで、組織全体を俯瞰した判断ができるようになります。結果として、部署間の対立が解消され、顧客に対して複合的な提案ができる強い組織づくりにつながるでしょう。
3.従業員の適性を発見できる
「営業には向いていない」と思っていた社員が、管理部門に異動して才能を開花させるなど、思いがけない適性を発見できるケースがあります。
一つの業務しか知らない状態よりも、多様な経験を積むことで「自分は何が得意か」を客観的に把握できます。その結果、納得感を持って配置転換を受け入れられるようになり、ミスマッチによる早期離職の防止や、定着率の向上につながります。
4.イノベーション創出につながる
異なる部署の知見や視点が掛け合わさることで、新しいアイデアが生まれやすくなります。イノベーションの多くはゼロから生まれるのではなく、既存の知識の「新しい組み合わせ」から生じるためです。
特定の専門分野に閉じこもらず、多角的な視点を持つ社員が増えれば、複雑な課題に対してもこれまでにない切り口で解決策を見出せるようになるでしょう。
5.将来の幹部候補を育成できる
経営幹部には、特定の部署だけでなく、会社全体を俯瞰して判断する「全体最適」の視点が求められます。
ジョブローテーションを通じて財務・営業・人事など多角的な実務を経験すれば、各部門の利益構造や課題を肌感覚で理解できます。結果として、一部署の利益にとらわれず、全社的な視座で正しい経営判断を下せるリーダーが育つでしょう。
将来の会社を担うリーダーを計画的に育てるための具体的なステップや、成功のポイントについては以下の記事で詳しく解説しています。
【完全ガイド】幹部候補の育成方法5ステップ|成功のポイントや事例を紹介
ジョブローテーションが必要か判断するチェックリスト

自社にジョブローテーションを取り入れるべきか、あるいは見直すべきか迷う場合もあるでしょう。企業の業態やカルチャーによって向き不向きがあります。
ここでは、導入判断の目安となるチェックポイントを整理しました。
導入が向いている企業
以下の特徴を持つ企業は、ジョブローテーションのメリットを享受しやすいと言えます。
- ゼネラリスト育成が必要な企業
- チームワーク重視の企業
- 長期雇用を前提とする企業
- 変化の激しい業界
その他、退職率が比較的低く、業務内容をマニュアル化しやすい環境であることも導入成功のポイントです。教育にコストをかける人的・資金的な余裕がある場合も向いています。
導入を見送るべき・見直すべき企業
一方で、以下の条件に当てはまる場合は、慎重な判断が必要です。
- 高度な専門職が中心の企業
- 即戦力を求める企業
- リソースに余裕がない中小企業
これらの企業では、頻繁な異動が専門性の深化を妨げたり、教育コストが負担となって現場が疲弊したりするリスクがあります。短期的な成果や専門スキルを優先すべきフェーズであれば、無理に導入せず、現状の配置を維持するのが良いでしょう。
ジョブローテーションの成功事例と失敗事例から学ぶポイント

実際にジョブローテーションを導入している企業の事例を知ることで、運用のイメージが湧きやすくなります。
ここでは、成功企業の取り組みと、よくある失敗パターンから学ぶべきポイントを解説します。
ジョブローテーションの成功事例 (ニトリ)
ニトリでは、ジョブローテーションを単なる異動ではなく「配転教育」と定義し、社員の自己実現を支援する仕組みとして運用しています。
特徴は、会社命令ではなく、社員自身が描く「なりたい姿」をベースに異動が決まる点です。
【ニトリの配転教育の特徴】
| 30年分のキャリアプラン | 全社員が半期に一度、自身の将来像を記した「キャリアプラン」を提出します。これを基に、上司やキャリアカウンセラーと相談しながら異動先を決定します。 |
| 段階的な育成フェーズ | 「20代は多様な経験を積む時期」「30代以降は専門性を磨く時期」と定義されています。店舗経験からスタートし、現場感覚を持ったスペシャリストを目指します。 |
| 不安を解消する研修制度 | 希望部署の業務を事前に体験できる「ジョブシャドウイング」など、異動によるミスマッチやスキル不足を防ぐ教育体制が整っています。 |
【成功のポイント】
- 「会社都合」ではなく「個人のキャリア」を起点にしているため、異動に対する納得感が高い。
- 全員が「店舗(現場)」を経験してから異動するため、開発や管理部門に行っても顧客視点がブレない。
参考:NITORI「人材育成」
ジョブローテーションの失敗事例
一方で、十分な準備なしに実施して失敗するケースも少なくありません。
例えば、事前トレーニングが不足した状態でローテーションを実施した結果、不慣れな従業員による作業遅延や不良品の発生を招いた事例があります。現場の教育体制が整っていない状態で人だけを動かすと、既存社員の負担が増すばかりか、サービス品質の低下につながります。
また「3年経ったから異動」という期間ありきの運用にも注意が必要です。まったく関連性のない部署への脈絡のない異動が続くと、専門スキルが積み上がりません。また、将来に不安を感じた社員は退職につながりやすくなります。
【失敗の原因】
- 期間ありきの機械的な運用 「育成」という本来の目的を見失い、定期異動させること自体が目的化してしまっている。
- 現場の教育コストへの配慮不足 受け入れ側の負担(マニュアル整備やOJTの時間)を考慮せず、丸投げしてしまっている。
- キャリアの脈絡がない異動 前後の業務に関連性や意味付けがなく、社員の専門性がリセットされ続けている。
失敗を防ぐためのコツは次項で解説します。
ジョブローテーションを成功させる運用のコツ

ジョブローテーションを成功させるためには、単に制度を作るだけでなく、運用面での工夫が不可欠です。
| 運用のポイント | 具体的なアクション |
| 1. 目的と期間の明確化 | ・「ゼネラリスト育成」か「多能工化(1人の従業員が複数の業務を担当できるように教育 ・育成すること)」か、目的に応じて最適な期間(数か月〜3年)を設定する。 ・「この期間でこれを学ぶ」という習得目標を持たせる。 |
| 2. ジョブローテーションの意図・意味の共有 | ・「なぜ今この異動が必要か」を伝え、当事者意識を持たせる。 ・「営業の提案力は人事の採用業務でも活きる」など、過去の経験と新しい業務のつながり(ポータブルスキル)を具体的に示して納得感を高める。 |
| 3. キャリア面談との連動 | ・会社都合だけでなく、本人の希望。 ・適性を聞く1on1の場を設ける。 |
| 4. 受け入れ体制の整備 | ・現場負担を減らすため、業務の標準化やマニュアル整備を事前に行う。 ・オンボーディングプログラムを用意して立ち上がりを支援する。 ・異動直後のパフォーマンス低下を不当に低評価しないよう、評価基準を調整する。 |
導入にあたっては、社員への十分な説明と、現場の負担を軽減する仕組みづくりが重要です。
ジョブローテーションを導入・見直しするなら2つの制度も検討しよう

従来の「会社命令・強制型」のジョブローテーションだけが正解ではありません。現代の働き方や社員の志向に合わせ、柔軟な制度を取り入れる企業が増えています。
ここでは、ジョブローテーションの目的を果たしつつ、社員の自律性を尊重できる2つの選択肢を紹介します。
社内公募
社内公募とは、空きポストを社内に公開し、希望する社員が手挙げで応募する仕組みです。
「命令」から「自律的な選択」に変えることで、社員の納得感とモチベーションが高まります。グループ会社への転籍や海外勤務など、キャリアの選択肢を広げる機会として活用されており、離職防止の効果も期待できます。
社内複業制度
現在の部署に籍を置いたまま、週1日や業務時間の20%などの時間を使って他部署のプロジェクトに参加するスタイルです。
完全に異動するわけではないため、元の部署における戦力ダウンや、専門スキルが断絶するリスクを回避できます。大規模な引き継ぎも不要なため、従業員と企業の双方にとって負担が少ないのが特徴です。
「異動はさせられないが、部門間の連携は強化したい」といった場合に、リスクを抑えつつ他部署の知見を取り入れられる有効な手段といえるでしょう。
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ジョブローテーションとは、社員の能力開発や組織活性化を目的に、計画的に部署や職務を変更する制度です。
専門性の低下や離職リスクから「時代遅れ」との声もありますが、属人化の解消や幹部育成においては依然として有効な施策です。
導入にあたっては、対象部署の選定やキャリア面談の実施など、現場の負担と社員の意向に配慮した運用が欠かせません。
また、従来の強制的な異動だけでなく、社内公募や複業制度といった自律性を促す新しい形の検討も重要です。
ただし、自社だけで制度設計を行うと、現場の実情と合わず形骸化したり、社員のエンゲージメントを下げてしまったりする恐れがあります。
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