「社会人基礎力の意味や、今の時代に求められる定義を詳しく知りたい」
「部下の主体性や考え抜く力を育てるには、どのような指導が効果的なのかな」
このような悩みを抱えていませんか?
そこで本記事では、経済産業省などの資料をもとに、以下の内容を詳しく解説します。
- 社会人基礎力の定義
- 自己診断方法
- 管理職や部下の能力を高める手順
人事シェアサービスを運営し、数多くの組織課題を解決してきたcoacheeの知見をもとに、実務へ活かせるノウハウも紹介します。
本記事を読んで、個人の能力向上だけでなく、組織全体の業務品質の向上や属人化の解消に役立ててください。
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【一覧表付き】社会人基礎力とは?経済産業省が提唱する「人生100年時代」の定義

社会人基礎力とは、2006年に経済産業省が提唱した「職場や地域社会で多様な人々と仕事をするために必要な力」です。
「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力と、それらを構成する12の能力要素から成り立ちます。
ここでは、ビジネスパーソンとして必須の「社会人基礎力」の定義と、時代に合わせてアップデートされた新しい概念を解説します。
参考:経済産業省「社会人基礎力」
「前に踏み出す力」を構成する3つの要素
「前に踏み出す力」は、失敗を恐れずに一歩踏み出し、粘り強く取り組む力を指します。指示を待つのではなく、自ら能動的に動く姿勢が求められます。
具体的な要素と定義は以下の通りです。
| 能力要素 | 定義 | ビジネスでの行動例 |
| 主体性 | 積極的に取り組む姿勢 | 指示を待つのではなく、自らやるべき仕事を見つけ、積極的に手を挙げる。 |
| 働きかけ力 | 周囲の人々に自ら呼びかけ、協力を得ながら物事を動かす力 | 上司や同僚、関係部署に自ら声をかけ、協力を仰ぎながらプロジェクトを推進する。 |
| 実行力 | 自ら目標を掲げ、困難があっても諦めずに最後までやり遂げる力 | 困難な課題に直面しても諦めず、設定した目標の達成に向けて粘り強く行動し続ける。 |
「考え抜く力」を構成する3つの要素
「考え抜く力」は、物事に疑問を持ち、考え抜く力を指します。単に与えられた作業をこなすのではなく、自律的に課題を見つけ、解決策を導き出すために、自ら問いを立てて考え抜く姿勢が求められます。
具体的な要素と定義は以下の通りです。
| 能力要素 | 定義 | ビジネスでの行動例 |
| 課題発見力 | 現状を深く分析し、解決すべき本質的な問題や目標を特定する力 | 売上が低下している現状に対し、データ分析を行い、真の原因(ボトルネック)を特定する。 |
| 計画力 | 課題解決までの手順を具体的に描き、必要な準備や段取りを整える | プロジェクトのゴールから逆算してスケジュールを引き、リスクを想定した準備を行う。 |
| 創造力 | 新しいアイデアや価値を創り出す力 | 既存の枠組みにとらわれず、異なる視点を組み合わせて新規事業や改善案を立案する。 |
「チームで働く力」を構成する6つの要素
「チームで働く力」は、さまざまな背景を持つ人たちが、共通のゴールを達成するために、互いに助け合い、力を合わせる能力です。専門性や価値観の異なるメンバーと協働し、組織として成果を出すために必要な対人スキルです。
具体的な要素と定義は以下の通りです。
| 能力要素 | 定義 | ビジネスでの行動例 |
| 発信力 | 自分の考えや情報を、相手に理解しやすいように論理的に伝える力 | 会議やプレゼンで、結論から論理的に話し、相手に意図を正確に伝える。 |
| 傾聴力 | 相手の話に耳を傾け、その背景や意図を含めて深く理解しようとする力 | 部下や顧客の話を途中で遮らず、相手の背景や感情を含めて理解しようとする。 |
| 柔軟性 | 自分とは異なる意見や立場を受け入れ、状況に合わせて柔軟に対応する力 | 自分のやり方に固執せず、状況の変化や他者の意見を取り入れて軌道修正を行う。 |
| 状況把握力 | チーム内の関係性や場の空気を読み取り、自分がどう振る舞うべきかを判断する力 | チームの雰囲気やメンバーの忙しさを察知し、適切なタイミングでサポートに入る。 |
| 規律性 | 社会的な規範や組織のルール、他者との約束を誠実に守る力 | 法令遵守はもちろん、社内規定や納期、会議の時間などを徹底して守る。 |
| ストレスコントロール力 | プレッシャーや困難な状況でも、自分の感情を適切に管理し対処する力 | プレッシャーのかかる状況でも冷静さを保ち、適切な休息や相談でメンタルを維持する。 |
人生100年時代の社会人基礎力3つの視点
経済産業省は2018年に「人生100年時代の社会人基礎力」として定義をアップデートしました。
これまでの「3つの能力」を土台としつつ、それらをキャリアの中でどう活用していくかという「3つの視点」が新たに追加されています。
| 3つの視点 | 概要 | 求められるアクション |
| 何を学ぶか(学び) | 学び続けることを学ぶ | 自らのキャリアを長期的に見据え、必要なスキルや知識を主体的に学び直し続ける。 |
| どう学ぶか(統合) | 自らの体験、経験、能力とキャリアを組み合わせる | 過去の経験や新たに得た知識を統合し、自分なりの強みや価値として再構成する。 |
| どう活躍するか(目的) | 自己実現や社会貢献に向けて行動する | 自分が社会や組織でどのような価値を提供したいかという目的意識を持ち、行動する。 |
なぜ今「社会人基礎力」が重要なのか?不足していると直面する2つのリスク

現代のビジネスシーンでは、技術革新や市場の変化が激しく、過去の正解が通用しない場面が増えています。不確実な環境において、自ら課題を見つけ、多様な人々と協力して成果を出す「社会人基礎力」は、全てのビジネスパーソンにとって成長の土台となる能力です。
社会人基礎力を高めることは、個人のキャリア形成に役立つだけでなく、組織全体の生産性を維持するためにも欠かせません。
もしこれらの能力が不足していると、単に仕事が滞るだけでなく、以下のようなリスクに直面する可能性があります。
| 想定されるリスク | 個人への影響 | 組織への悪影響 |
| 成長・昇進機会の喪失 | 「主体性」や「考え抜く力」が不足していると、上司から「指示待ち人間」と判断され、重要なプロジェクトや昇進の対象から外される。 | 指示待ちの姿勢が定着すると、難易度の高い業務を任せられず、本人のスキルアップの機会が失われる。 |
| 組織内での孤立 | 「傾聴力」や「柔軟性」が欠如していると、周囲とのコミュニケーション不全を起こし、協力を得られなくなる。 | チームワークが機能せず、職場環境が悪化する。「静かな退職」などのエンゲージメント低下を招く。 |
特に、チーム内での対話や相互理解が不足すると、メンバーの心理的安全性が失われてしまいます。その結果、従業員が「必要最低限の業務以外は行わない」という消極的な姿勢に転じる「静かな退職」を引き起こす要因にもなりかねません。
組織の活力を維持し、健全なエンゲージメントを築くためには、まず現状の課題を正しく把握することが大切です。
「静かな退職」の兆候やその背景にある組織課題については、以下の記事で詳しく解説しています。
あなたや部下の社会人基礎力は?「社会人基礎力」の自己診断チェックシート

社会人基礎力は抽象的な概念であるため、自身では「できている」と誤認するケースが少なくありません。客観的に能力を把握するためには、行動レベルでのチェックが有効です。
厚生労働省では、自身の基礎力を確認できるチェックシートを提供しています。
以下の画像のような項目を活用し、現状を診断してみてください。

出典:厚生労働省「エンプロイアビリティチェックシート」
【管理職・リーダー向け】自身の社会人基礎力をアップデートする3つの方法

経験豊富な管理職は「新しい知識は日々の業務を通じて自然に身につく」と考える傾向にあります。
実際にパーソル総合研究所の調査でも、ミドル・シニア層の約7割が「仕事は仕事の中で学ぶのが一番」と回答しています。
しかし、既存業務の延長線上だけでは過去の成功体験に縛られやすく、根本的な「アップデート」は難しいでしょう。
そこで本項では、これまでのやり方を意識的に刷新し、自身の社会人基礎力を高める3つの手法を解説します。
出典:パーソル総合研究所「ミドル・シニアの学びと職業生活に関する定量調査」
1.【前に踏み出す力】過去の成功体験を手放し「アンラーニング(学習棄却)」を実践する
管理職が社会人基礎力の「前に踏み出す力」を身につけるには、過去の成功パターンを意図的に手放す「アンラーニング」を実践しましょう。
例えば「昔はこのやり方でうまくいった」と思うのではなく、あえて若手が使う最新のデジタルツールや手法を教わることなどが挙げられます。
2.【考え抜く力】課題の本質を見抜くために「抽象化思考」を鍛える
経験豊富なリーダーには、トラブルを処理するだけでなく、事象の背後にある共通の構造を見抜く「抽象化思考」が求められます。
例えば、ある業務でミスが発生した際、担当者の不注意として片付けるのは避けましょう。「なぜそのミスが防げなかったのか」と問いを重ねて、組織全体の仕組みやルールの不備を見つけ出す姿勢が大切です。
具体的な事象を汎用的な法則に変換する習慣を身に付けることで、未知の課題に直面しても、過去の学びを応用して解決に導く力が養われます。
3.【チームで働く力】多様な意見を取り入れるために「傾聴力」と「柔軟性」を鍛える
社会人基礎力の「チームで働く力」を身に付けるためには、多様な意見を統合するスタイルへ転換する必要があります。具体的には以下の力が求められます。
| 求められる能力 | 内容 |
| 傾聴力(相手の意見を丁寧に聴く力) | 単に話を聞くだけでなく、うなずきや共感を示して部下が話しやすい環境を作る。適切なタイミングで「それは具体的にどういうこと?」と質問を投げかけ、相手の意見を深く引き出す。 |
| 柔軟性(意見の違いや立場の違いを理解する力) | 自分のやり方に固執せず、相手の立場を尊重して理解に努める。自分とは異なる意見や、時には耳の痛いアドバイスも進んで受け入れる姿勢を見せる。 |
【部下育成編】社会人基礎力を身につけてもらう4つのステップ

ここでは、部下に社会人基礎力を身に付けてもらう方法を紹介します。
1. 【現状把握】期待する役割と現状のギャップを「12の能力要素」で言語化する
まずは、経済産業省の「12の能力要素」を共通言語として使い、現状と期待値のギャップを明確に伝えましょう。
「もっとしっかりしてほしい」といった曖昧な指摘は避け「『規律性』は満たしているが『発信力』を伸ばしてほしい」とフィードバックします。用語を定義することで、部下は客観的に自分の課題を認識しやすくなります。
2. 【前に踏み出す力】失敗を許容する環境を作り「主体性」を引き出す
「前に踏み出す力(主体性・実行力)」を引き出すには、結果だけでなく「挑戦したプロセス」を評価することが必要です。
部下が失敗した際に叱責するのではなく「新しい方法を試したことは良かった」と伝えましょう。これにより、心理的安全性(安心して行動や発言できる状態)が確保されることで、部下は失敗を恐れずに自ら手を挙げ、行動できるようになります。
チームの心理的安全性を高め、主体的な行動を促す土壌づくりについては、以下の記事で詳しく解説しています。
【実践ガイド】従業員エンゲージメントとは?向上施策や事例、導入手順を解説
3. 【考え抜く力】ティーチングではなく「コーチング」で思考力を養う
「考え抜く力(課題発見・創造力)」を養うには、上司がすぐに答えを教える「ティーチング」を控える必要があります。
部下から相談を受けた際は「君はどう思う?」「その根拠は何か?」と問いかける「コーチング」のアプローチを徹底しましょう。
安易に正解を与えず、自ら深く考え抜き、答えを導き出させることで「仮説を立ててから相談する」という行動が定着します。
4. 【チームで働く力】定期的な1on1で変化をフィードバックし行動を定着させる
社会人基礎力を定着させるには、月1回などの定期的な1on1ミーティングで、部下の行動を「能力要素」と紐づけて言語化することが欠かせません。
「昨日の会議では、最後まで相手の話を遮らずに聞いていたね。あの『傾聴力』があったからこそ、チーム内で本音の議論ができたと思うよ」 「スケジュールの遅れを即座に共有してくれたのは、素晴らしい『状況把握力』だね。早めの報告のおかげで、トラブルを未然に防げたよ」
評価された行動を具体的に認識させることで「再現性」が高まり、意識せずとも実践できる能力として定着します。
こうして社会人基礎力が「当たり前の基準」として定着した部下は、すでに組織を牽引するリーダーとしての資質を備え始めています。
基礎力の習得だけで終わらせず、彼らを「次世代の幹部候補」としてさらに引き上げるには、ここからもう一段階視座を高めた育成が必要です。
将来の経営幹部を目指す、あるいは次世代リーダーを育成する視点については、以下の記事も参考にしてください。
【完全ガイド】幹部候補の育成方法5ステップ|成功のポイントや事例を紹介
組織の社会人基礎力を身に付けるためにcoachee人事シェアで支援できること

組織全体の社会人基礎力を高めるためには、個人の努力だけでなく、評価制度の設計や育成プログラムの導入といった仕組みづくりが必要です。
「coachee人事シェア」では、経験豊富なプロ人事が以下の支援を行います。
| 支援例 | 内容 |
| オンボーディングプログラム設計 | 新入社員や中途入社者が早期に社会人基礎力を発揮できるよう、組織への定着を支援するプログラムを構築 |
| 人事制度設計・評価設計 | 社会人基礎力の12要素をコンピテンシー評価や行動目標に落とし込み、社員の成長を公正に評価する仕組みを作る |
| 人材開発・研修 | 階層別(若手・リーダー・管理職)に求められる社会人基礎力を定義し、実践的なワークショップや研修を企画・実行 |
経営者やCHRO経験者、副業人事など多様なプロフェッショナルが、貴社の課題に合わせて伴走支援します。
社会人基礎力を高めて変化に強いキャリアを築こう

社会人基礎力とは、職場や地域社会で多様な人々と仕事をするために必要な能力です。経済産業省が提唱する「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つの能力は、キャリア形成の土台となります。
管理職はアンラーニングを実践して自身の思考や行動を更新し、部下には12の能力要素に基づいたフィードバックを行いましょう。
一方で、社会人基礎力を個人の意識だけに頼らず、組織全体の「強み」として定着させるための教育体制を自社のみで整えるには、相応のノウハウと時間が必要です。
もし「自社に合った形で社会人基礎力を高める仕組みを作りたい」とお考えなら、プロ人事が伴走する「coachee人事シェア」の活用をおすすめします。
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