「人事評価で使われているみたいだけど、コンピテンシーって何?」
「優秀な人材を見極めるための評価基準を作りたい」
コンピテンシーとは、優れた成果を出す人に共通して見られる行動特性のことです。
本記事を読めば、コンピテンシーの意味や注目される背景はもちろん、人事評価・採用・育成での具体的な活用方法まで理解できます。
評価導入の6ステップや面接での質問集、具体的なコンピテンシーの例も掲載しているため、客観的な評価基準を構築したい人事担当者の方に最適です。
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コンピテンシーとは?意味や注目される理由

コンピテンシーとは「高い成果を出す人に共通する行動の特性」を意味する言葉です。
単なるスキルや資格ではなく「顧客のニーズを的確に把握する」「チームの力を引き出す」など、成果につながる行動のあり方を指します。
企業でコンピテンシーが活用されるのは、人材育成や人事評価、採用などの場面です。優秀な人材の思考や姿勢、行動の特徴を明文化することで、自社が求める人物像が明確になります。
コンピテンシーとほかの用語との違い
以下にコンピテンシーと他の用語との違いをまとめました。
| 用語 | 意味 | 具体例 |
| コンピテンシー | 成果を生み出す行動特性や思考パターン、価値観。 | 困難な状況でも粘り強く取り組む、主体的に提案するなど。 |
| スキル | 専門的な知識や技術そのもの。 | 語学力、高度なパソコン操作、会計知識など。 |
| ケイパビリティ | 組織やチーム単位での業務遂行能力。 | 営業体制の柔軟性、設計チームの開発力など。 |
| コア・コンピタンス | 競合に真似できない強み。 | 独自の技術力、圧倒的なブランド力など。 |
コンピテンシーはスキルや知識の有無では測れない、成果を出せる人の共通行動パターンを可視化する枠組みとして活用されています。
コンピテンシーが注目される背景
近年、企業でコンピテンシーが重視される背景として、評価制度の変化が挙げられます。
かつての人事制度は年功序列や上司の主観的評価が中心でした。しかし、働き方の多様化やジョブ型雇用の広がりにより「誰が・どのように成果を生み出したか」を明確に評価する仕組みが求められるようになりました。
一方で「結果だけを見る」という評価の限界も指摘されています。短期的な成功よりも、再現性のある行動プロセスを重視することで、組織全体の成長につなげることが求められています。
そのため、ハイパフォーマーの行動をモデル化し、採用・育成・評価に活かすコンピテンシーが注目されているのです。
コンピテンシーが活用される3つのシーン|それぞれのメリットも解説

以下では、コンピテンシーのメリットを解説します。
人事評価|客観的な基準で評価可能
コンピテンシーは、人事評価の精度を高めるための有効な基準です。
従来の人事評価では、数値目標や成果などの「結果」に偏りがちで、評価者の主観が入りやすいという課題がありました。これにより、実際の貢献度や努力が正当に評価されないケースも少なくありません。
一方で、コンピテンシーを活用すれば「どのような行動を通じて成果を上げたのか」というプロセスに着目でき、評価の納得感が高まります。あらかじめ求める行動基準を明文化しておくことで、評価者間のばらつきを防ぎ、客観性の高い運用が可能になります。
実際に、楽天グループ株式会社では「期待される行動を継続的に発揮していたか」を評価軸とし、その実践度合いを給与にも反映する仕組みを取り入れています。
参考:楽天グループ株式会社「キャリア開発」
人材採用|採用のミスマッチを防げる
採用活動では、スキルや経歴といった表面的な情報だけで候補者を判断すると、実際に活躍できるかどうかや、企業文化との相性といった点を見落としがちです。
そこで、コンピテンシー評価を取り入れることで、候補者の「行動特性」や「価値観」を可視化し、職場でのパフォーマンスや定着の可能性をより正確に見極めることができます。
たとえば、クラレグループでは、採用時に「協働性・主体性・チャレンジ精神」という行動特性を重視しています。これにより、自社のカルチャーと一致する人物像を明確にし、入社後に活躍しやすい人材を選定する仕組みを整えているのです。
参考:クラレグループ「職種紹介」
人材育成|育成計画を立てやすくなる
人材育成の場面でも、コンピテンシーは有効です。
採用後に、各人の能力やキャリア育成の方向性を定める際には、社内のハイパフォーマーの行動・思考をもとに作成したコンピテンシー要件を全社員に周知・浸透させることで、育成計画を立てやすくなります。
定義された行動特性が共有されていれば、研修プログラムなどの設計が体系的に進められ、個人の成長と組織の成果の両立につながるでしょう。
【一覧表】コンピテンシーの具体例

以下では、代表的な10のコンピテンシー項目をわかりやすく整理しました。
| コンピテンシー項目 | 概要 |
| ① 自己認知・自己管理 | 自分の強み・弱みを理解し、感情や行動を適切にコントロールできる力。 |
| ② ストレス耐性 | 困難やプレッシャーの中でも冷静に対処し、パフォーマンスを維持できる力。 |
| ③ 課題解決能力 | 問題の本質を見抜き、論理的かつ現実的に解決策を導く力。 |
| ④ 計画性・組織力 | 目標達成に向けてタスクを整理し、計画的に遂行できる力。 |
| ⑤ 主体性・実行力 | 指示を待たず、自ら課題を見つけ行動に移す積極性と推進力。 |
| ⑥ 達成・目標指向性 | 困難な目標にも粘り強く挑戦し、成果を出すために努力し続ける姿勢。 |
| ⑦ リーダーシップ | チームをまとめ、目標に向かって周囲を動かす指導力と影響力。 |
| ⑧ コミュニケーション能力 | 相手の意図を正確に理解し、わかりやすく伝える力。 |
| ⑨ 協調性・チームワーク | 他者と連携し、チーム全体の成果を最大化する協働姿勢。 |
| ⑩ 誠実性・責任感 | 倫理観を持ち、任された仕事を最後までやり遂げる信頼性と誠実さ。 |
コンピテンシーを評価するための質問集については「ハイパフォーマーを見抜くコンピテンシー評価の面接質問集」で解説します。
コンピテンシー評価を導入する手順6Step

コンピテンシー評価を導入する際には以下の手順が効果的です。
Step 1:ハイパフォーマーを選出して行動特性を抽出する
まず、社内で既に高い成果を上げているハイパフォーマーを選出し、その人たちの行動や思考を分析します(「成果を出すためにどのような行動を取ったか」「どのような判断・価値観があったか」など) 。
分析をもとに、部門ごと・職種ごとに「評価すべき行動特性(コンピテンシー項目)」を整理して設計します。職種・役割によって求められる行動が異なるため、個別の設計が重要です。
Step 2:コンピテンシーモデルを作成する
次に、ハイパフォーマー分析から得られた行動特性をもとに、各職種・部門のコンピテンシーモデルを設計します。
| モデルの種類 | 特徴と概要 |
| 実在型モデル | 社内のハイパフォーマーをもとに設計。現実に即したモデルで納得感が得られやすいが、モデルとなる従業員が優秀すぎると適用しづらい。 |
| 理想型モデル | 経営方針や企業理念に基づき、目指すべき人物像から設計。企業文化の醸成に有効だが、理想が高すぎると活用しづらい。 |
| ハイブリッド型モデル | 実在型をベースに理想型を加味して設計。幅広い人材に適用しやすい。 |
この3分類により、自社にとって最適なアプローチを検討しやすくなります。評価制度や育成方針との整合性も意識しながら、適切なモデルの選定が求められます。
Step 3:評価基準・項目を設定する
コンピテンシーを評価制度として活用するには、評価の「項目」と「レベル」を整理した評価シートの作成が不可欠です。
例えば「主体性」「協調性」などのコンピテンシー項目ごとに、どのような行動が求められるのかを明文化し、それぞれに段階的な評価基準(レベル1〜5など)を設定します。
この評価シートを用いることで、評価の観点が統一され、評価者によるばらつきや主観が入りにくくなります。
Step 4:評価レベルを設計する
次は、コンピテンシーの評価レベルを設計しましょう。
| レベル名 | 内容の概要 |
| レベル① 受動行動 | 上司などの指示に従い、業務の一部を担う段階。自発性は乏しく、受け身の姿勢が中心。 |
| レベル② 通常行動 | 与えられた業務を問題なく遂行できる段階。業務の手順やルールを理解して対応できる。 |
| レベル③ 能動行動 | 決められたルールに則りながらも、主体的に業務に取り組む段階。自分なりの工夫が見られる。 |
| レベル④ 創造行動 | 成果を上げるために自ら方法を考え、柔軟な対応ができる段階。業務改善や提案が期待できる。 |
| レベル⑤ パラダイム転換行動 | 既存の枠にとらわれず、新たな価値や手法を創出できる段階。組織に変革をもたらす行動が見られる。 |
このように段階を明確に設定することで、従業員の現状把握ができ、人事評価の基準として活用しやすくなります。
Step 5:評価者向けの研修を実施する
評価制度を運用するにあたっては、評価者(上司・人事担当者)向けの研修が必要です。研修では、コンピテンシーモデル・評価項目・レベルの意図を共有し、評価基準の統一を図りましょう。
Step 6:評価を実施し改善を繰り返す
制度を実際に運用した後は、定期的なレビューと改善が欠かせません。
モデルや評価項目が現状の役割・事業環境に合致しているかを確認し、必要に応じてアップデートします。
コンピテンシーは採用面接にも活用できる!ポイントを解説

採用面接においても、コンピテンシーを活用することで、単なるスキルや経歴だけでは測れない「成果につながる行動特性」を把握できます。
具体的には「過去にどのような行動を取ったか」「その行動がどんな結果を生んだか」を深く掘り下げる面接手法、いわゆる「コンピテンシー面接」を取り入れることが有効です。
コンピテンシー面接を行う際には、STARフレームワーク(Situation/Task/Action/Result)を活用すると、候補者の過去の行動を構造的に引き出せるため効果的です。
以下は、STARフレームワークを用いた面接の方法をまとめました。
| 名称 | 内容 | 質問例 |
| Situation(状況) | 候補者が取り組んだ場面・背景 | 「最近取り組んだプロジェクトの状況を教えてください」 |
| Task(課題) | その状況における目的や課題 | 「その中であなたが担った課題は何でしたか?」 |
| Action(行動) | 課題解決に向けて行った具体的な行動 | 「その課題に対して、どのようにアプローチしましたか?」 |
| Result(結果) | 行動によって得られた成果・学び | 「その行動によって、どのような結果が得られましたか?」 |
コンピテンシー面接をより精度高く機能させるには、以下の3点が重要です。
- 候補者の行動がどの「コンピテンシーレベル」に該当するかを評価する
- 面接官間で「同じレベル・同じ指標」で判断できるよう、評価基準を共有する
- 主観に偏らないよう、複数の面接官で同一候補者を評価し、結果をすり合わせる
このような手順を踏むことで、採用面接においてもコンピテンシーに基づいた評価を実施できます。
ハイパフォーマーを見抜くコンピテンシー評価の面接質問集

ここでは、ハイパフォーマーを見抜くために効果的な質問を10のコンピテンシー項目別に紹介します。
| コンピテンシー項目 | 面接質問例 |
| ① 自己認知・自己管理 | ・自分の強みと弱みを、最近の仕事の事例を交えて教えてください ・これまでの経験の中で「自分の考え方が変わった」と感じた出来事はありますか? |
| ② ストレス耐性 | ・強いプレッシャーを感じた状況をどのように乗り越えましたか? ・理不尽だと感じる要求を受けた際、どのように気持ちを整理し対応しましたか? |
| ③ 課題解決能力 | ・前例のない課題に直面したとき、まずどのように状況を整理しますか? ・あなたが主体的に改善した事例を教えてください。 |
| ④ 計画性・組織力 | ・複数のタスクが同時に進む中で、どのように優先順位を決めましたか? ・計画が思いどおりに進まなかった際、どのように立て直しましたか? |
| ⑤ 主体性・実行力 | ・指示がない中で、自分から課題を見つけて行動した経験を教えてください。 ・反対意見がある中で、自分の考えを実現させた経験はありますか? |
| ⑥ 達成・目標指向性 | ・困難な目標に挑戦した経験と、その結果を教えてください。 ・目標達成が難しいと感じたとき、どのようにモチベーションを保ちましたか? |
| ⑦ リーダーシップ | ・チームで成果を上げた際、あなたが果たした役割を教えてください。 ・異なる意見を持つメンバーをまとめた経験はありますか? |
| ⑧ コミュニケーション能力 | ・専門知識のない相手に、複雑な内容を説明した経験を教えてください。 ・相手の本音を引き出すために、どのような質問の仕方を意識していますか? |
| ⑨ 協調性・チームワーク | ・チーム内で意見が分かれたとき、どのように合意形成を進めましたか? ・異なる考え方を持つ人と協働する上で、心がけていることはありますか? |
| ⑩ 誠実性・責任感 | ・自分のミスで周囲に迷惑をかけた経験があれば、どのように対応しましたか? ・誰も見ていない状況でも、ルールや約束を守ったエピソードを教えてください。 |
質問の目的を明確にし「なぜそう考えたのか」「その結果どう変わったのか」まで掘り下げることで、表面的な回答の奥にある価値観や判断基準を引き出せます。
コンピテンシー評価・採用を成功させる2つのポイント

本章では、評価・採用を機能させるために重要な2つのポイントを紹介します。
1.面接と人事評価で同じ基準を使う
まず、採用段階(面接)と入社後の評価制度で用いる基準を統一することが重要です。
評価軸が面接と入社後で異なると、候補者の選考時に何を基準に評価されたのかが不明瞭になり、入社後の評価でも一貫性が保てません。
したがって、評価項目やコンピテンシーレベルをあらかじめ面接時から明示しておきましょう。入社後も「どのような行動が求められ、どう評価されるのか」が明確になり、候補者・社員・評価者の間で共通認識が取れるようになります。
2.職種ごとに評価基準を最適化する
職種ごとに異なる業務内容や成果の出し方に合わせて、評価基準をカスタマイズすることが、コンピテンシー評価を機能させる上で欠かせません。
たとえば、営業職では「顧客志向」や「目標達成意欲」が重視される一方で、バックオフィス職では「正確性」や「協調性」が求められることが多く、必要な行動特性は大きく異なります。
そのため、すべての職種に共通の評価項目を設定するのではなく、各職種・部門に応じたコンピテンシー項目とレベル構造を設計し、実態に即した基準を整えることが重要です。
コンピテンシーに関するよくある質問

ここでは、コンピテンシーに関するよくある質問と回答を紹介します。
コンピテンシー評価を人材育成に活かす方法は?
まず、コンピテンシー評価を育成に活かすためには、社員がどのような行動特性を発揮すべきか明示的に理解できる研修を設計することが重要です。
研修を通じて「どのような行動が望ましいか」「そのために何をすればよいか」を具体的に示すことで、育成の現場での実践がしやすくなります。
コンピテンシー評価とほかの人材評価との違いは?
コンピテンシー評価とほかの人材評価の違いは以下のとおりです。
| 制度名 | 特徴・目的 |
| コンピテンシー評価 | 成果を出すために必要な行動特性(思考・価値観・判断)を基準に評価する制度。 |
| 360度評価(多面評価) | 上司・同僚・部下・他部署といった複数の視点から対象者を評価し、多角的なフィードバックを得る制度。 |
| 能力・スキル評価 | 個人が持つ専門知識・スキル・達成した成果を中心に評価する従来型の制度。 |
なお、これらの制度は必ずしも単一で使われるのではなく、組み合わせて運用されるケースも見られます。(例えば、360度評価の中にコンピテンシー項目を組み込むなど)
コンピテンシーの高い人材の採用ならcoachee Agent Pro

コンピテンシーとは、高い成果を上げる人に共通する「行動特性」や「思考パターン」を指します。
単なるスキルや経験ではなく、成果につながる行動プロセスを評価できるため、人材採用・育成・評価などの場面で注目されています。
こうしたコンピテンシー重視の採用を進めたい企業には、人材紹介サービス「coachee Agent Pro」がおすすめです。
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