「ジョブ型雇用について詳しく知りたい」
「メンバーシップ型雇用との違いや、導入する際の手順がわからない」
このような悩みを抱える人事担当者の方もいるのではないでしょうか。
ジョブ型雇用は、従来の日本企業で一般的だったメンバーシップ型雇用とは異なる仕組みです。導入する前に概要を把握し、メリットとデメリットについて理解を深めましょう。
本記事では、ジョブ型雇用の特徴やメンバーシップ型雇用との違い、注目されている背景を解説します。導入手順や導入を成功させるためのポイントも紹介しますので、ぜひ最後までお読みください。
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ジョブ型雇用の特徴

ジョブ型雇用とは、特定の職務(ジョブ)を実行できるスキルや経験、資格を持った人材を採用することです。
企業は「職務記述書(ジョブディスクリプション)」を事前に作成し、仕事内容や必要なスキルを明確に定義し、その職務に適した人材を採用・配置します。賃金は、担当する職務の価値や難易度に基づいて決定されるのが特徴です。
ジョブ型雇用とメンバーシップ型雇用の違い
メンバーシップ型雇用とは、職務を特定せず総合職として採用し、社内での異動や転勤を通じてさまざまな経験を積ませる方法です。日本企業で長らく主流だった雇用形態です。両者の主な違いを表にまとめました。
| 比較項目 | ジョブ型雇用 | メンバーシップ型雇用 |
| 考え方 | 仕事に人をつける | 人に仕事をつける |
| 採用 | 職務に空きが出たら、必要なスキルをもつ人材を採用する | 新卒一括採用を中心に、基本的に定期的に採用する |
| 職務範囲 | 職務記述書(ジョブディスクリプション)で明確に定義する | 仕事内容が限定されず、会社の辞令により決定する |
| 異動・転勤 | 原則なし ※職務が変わる場合は本人の同意が必要 | あり |
| 賃金 | 職務の価値や仕事での成果に基づき決定する | 勤続年数や上司からの評価に基づき決定する |
メンバーシップ型雇用では「人に仕事をつける」という考え方をもとに、勤続年数や仕事での活躍に応じて賃金が上がる傾向があります。「仕事に人をつける」ジョブ型雇用とは、採用や評価、配置の考え方が根本的に異なります。
ジョブ型雇用が注目されている背景
近年、ジョブ型雇用が注目される背景には、以下の3点が挙げられます。
【1.経団連によるジョブ型雇用の推進】
2024年9月10日、日本経済団体連合会(経団連)はジョブ型人事説明会を開催し、このなかで「ジョブ型人事の導入を進めていく必要がある」と提言しています。
※参考:日本企業におけるジョブ型人事導入検討に向けて|一般社団法人 日本経済団体連合
【2.専門人材の不足】
DX(デジタルトランスフォーメーション)の進展などに伴い、高度な専門知識をもつ人材の需要が高まっています。特に日本では、デジタル化推進にともなう課題として「人材不足」を挙げる企業がアメリカ・ドイツ・中国よりも多いです。
【デジタル化推進における課題(各国比較)】

特定の職務について専門性を高めていくことを重視する「ジョブ型雇用」では、DXを進められる専門人材を育成するうえで役立ちます。
【3.労働者のキャリア形成志向】
令和2年度に行われた調査によると、「自分で職業生活設計を考えていきたい」「どちらかといえば、自分で職業生活設計を考えていきたい」という人が、20歳未満を除くほぼすべての世代で50%を上回っています。この結果から、働く人のキャリア形成意識が高まっていることが伺えます。

引用:第2-(4)-1図 労働者の職業生活設計の考え方(年齢階級別)|厚生労働省
特定の業務や分野で自分のスキル・専門性を高めていくことが重要になるジョブ型雇用は、こうした労働者の志向と合致します。
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ジョブ型雇用を導入するメリット

ジョブ型雇用を導入することは、企業と社員の双方にメリットがあります。
【企業側のメリット】
- 専門性の高い人材を採用しやすい
- 仕事の成果に応じて社員を評価できる
【社員側のメリット】
- 専門的なキャリアを形成しやすい
- 仕事の成果に応じた報酬を受け取りやすい
専門性の高い人材にアプローチできるため、業務課題や不足している部署の問題を迅速に解決しやすいです。社員側としても、特定の分野でエキスパートとしてのキャリアを形成しやすいため何を学べばよいのか分かりやすく、転職を迫られた場合も専門性を活かして職場を移りやすい点がメリットといえます。
ジョブ型雇用を導入するデメリット

メリットがある一方で、ジョブ型雇用にはデメリットも存在します。
【企業側のデメリット】
- 社員が転職してしまうリスクが高くなる
- 会社全体を俯瞰できる人材が少なくなる
- メンバーシップ型から転換する際のコストが高い
【社員側のデメリット】
- 常にスキルアップやキャリア形成を意識する必要がある
- 現在の仕事で必要とされなくなった場合、失業するリスクが高い
企業側のリスクとしては、専門性の高い人材は他社からも求められることが多いため、引き抜かれてしまいやすい点が挙げられます。社員としても、自分の担当している仕事のニーズがなくなった場合に失業するリスクが高い点もデメリットといえます。
ジョブ型雇用を導入する手順

ジョブ型雇用を導入する一般的な手順は、以下のとおりです。
- どの職種・役割にジョブ型雇用を当てはめるか検討する
- ジョブディスクリプションを作成する
- 職務の価値を決める
- 等級を設定する
- 職務ごとの賃金を設定する
- 定期的にジョブディスクリプションや職務の価値を見直す
それぞれ詳しく解説します。
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1.どの職種・役割にジョブ型雇用を当てはめるか検討する
まず、社内のどの職種や役割にジョブ型雇用を適用するかを決定します。
全社一斉に従来のメンバーシップ型雇用から切り替えると、現場の混乱を招くリスクが高まります。まずは専門性の高い職種や、成果が明確な部署などから試験的に導入し、徐々に適用範囲を広げていくのが現実的です。
たとえば「新卒採用者は将来の幹部候補としてメンバーシップ型雇用を継続する」といったように、自社の戦略に合わせて制度を使い分けることも大切です。
2.ジョブディスクリプションを作成する
適用する職務が決まったら、職務記述書(ジョブディスクリプション)を作成します。
職務記述書とは、職務ごとに行うべき仕事内容、責任の範囲、権限、求められるスキル、経験、資格、成果目標などを具体的に明記した文書です。これは採用時の募集要項になるだけでなく、入社後の業務遂行や人事評価の基準となります。
3.職務の価値を決める
作成したジョブディスクリプションに基づき、それぞれの職務の「価値」を客観的に評価します。職務の価値とは、その仕事が会社にどれだけ貢献するか、どれだけ重要か、難易度はどれくらいか、といった尺度です。
職務の価値を評価する手法には、以下のようなものがあります。
- 単純比較法:職務同士を1対1で比較する手法
- 分類法:あらかじめ設定した等級の定義をもとに、どのレベルに該当するか評価する手法
- 要素比較法:職務を要素ごとに分けて比較する手法
- 要素別点数法:評価要素ごとに点数を設定し、合計点数で職務の価値を決める手法
4.等級を設定する
評価した職務の価値に基づき、職務をいくつかの等級(グレード)に分類します。
たとえば「レベル1:定型業務」「レベル2:専門的判断が必要な業務」「レベル3:高度な戦略立案」といったように、価値の大きさに応じて数段階の等級を設定します。
5.職務ごとの賃金を設定する
設定した等級ごとの賃金を設定します。同じ等級であれば、原則として同じ水準の賃金が適用されます。職務の価値が高い等級ほど、賃金レンジも高く設定するのが一般的です。
6.定期的にジョブディスクリプションや職務の価値を見直す
ジョブ型雇用は、一度導入したら終わりではありません。事業内容の変化や市場環境の変動にともない、職務内容や求められるスキルは変わっていきます。
制度が実情にそぐわないものとならないよう、定期的にジョブディスクリプションや職務の価値、賃金設定を見直し、更新することが重要です。
ジョブ型雇用を導入するポイント

ジョブ型雇用の導入を成功させるためには、以下のポイントを押さえる必要があります。
経営層が主体となり導入する
人事制度の変更は、社員の働き方や評価に直結する重要な経営判断です。経営層が導入の目的やビジョンを明確に示し、主体となって推進しなければなりません。
経営層のリーダーシップが不足すると、部署間の調整が難航したり、制度が形骸化したりするリスクが高まります。
客観的な評価基準を整備する
ジョブ型雇用では、「何をすれば評価されるのか」が明確でなければなりません。「〇〇を達成すれば評価される」「次の等級に上がるにはこの成果が必要」など、期待される成果や役割を具体的な基準で示すことが重要です。
評価基準が明確になれば、社員は目標に向かって行動しやすくなり、納得感をもって働けるようになります。
外部の専門家の知見を活かす
長年続いたメンバーシップ型雇用からジョブ型雇用へ移行するのは、簡単なことではありません。職務分析や評価制度の設計には専門的なノウハウが必要です。
社内だけで意見がまとまらない場合や、ノウハウが不足している場合は、外部の専門家の知見を活かすことも有効な手段です。社内のしがらみにとらわれず、専門的な視点から客観的なアドバイスが期待できます。
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