「リモートワークを導入したいけど、どのように進めたらよいかわからない」
「リモートワークでは、どのように勤怠管理すればよいのだろう?」
「セキュリティリスクのない導入方法を知りたい」
このように悩んでいませんか?
リモートワークを導入する際は、自社の目的や課題に合わせて計画的に準備する必要があります。
本記事では、リモートワーク導入に必要な10の手順を解説します。また、リモートワークには欠かせない5つの環境整備や導入時に活用できる助成金も詳しく説明するため、導入する際の参考にしてください。
本記事で紹介するリモートワーク導入時のポイントを押さえて、社内の体制を構築し、オンライン上でも業務を円滑に進められるようにしましょう。
【2024年最新】企業のリモートワーク導入状況・導入率を解説
近年、テレワークの導入企業は着実に増加しています。令和4年に総務省が実施した通信利用動向調査によると、現在テレワークを取り入れている企業の割合は50%を超えています*。2020年の新型コロナウイルス感染症の拡大以降、急速に導入が進んだ結果です。
特に、テレワークと出社を組み合わせたハイブリッドワークを採用する企業が増えています。完全なリモートワークではなく、出社とリモートのメリハリをつけた働き方を選択する企業が多いとわかります。
導入する企業が増えているリモートワークですが、コミュニケーションが取りづらかったり、セキュリティリスクが高まったりする課題があります。そのため、適切な手順を踏んで導入することが大切です。次項から、リモートワークの導入手順を解説します。
*出典:令和5年度テレワーク人口実態調査-調査結果(概要) -|国土交通省
【10Step】リモートワークの導入手順・準備
リモートワーク導入には、綿密な準備と計画的な手順を考える必要があります。本項では、リモートワークを円滑に導入するための10のステップを紹介します。
- 導入の目的を明確にする
- 現状の業務と課題を把握する
- リモートワークの対象範囲を決める
- 体制を構築する
- ITツールを導入する
- 社内ルールを整備する
- 社内説明会を開催する
- リモートワークに役立つ研修を行う
- 試験導入する
- 導入を開始する
リモートワークをスムーズに導入するために、導入手順を確認しておきましょう。
1.導入の目的を明確にする
リモートワーク導入の際は、目的を明確に定義する必要があります。生産性向上や優秀な人材確保、オフィス経費の削減など、導入によって達成したい具体的な効果を特定するためです。
特定したら目標を数値化し、達成度を測定するための成果指標を設定しましょう。導入の目的があいまいだと、効果の検証が難しくなり、制度として定着しない恐れがあります。
2.現状の業務と課題を把握する
次に、現行の就業規則や人事評価制度、ITセキュリティ環境などの現状を詳細に分析します。特に勤怠管理や評価方法は、リモートワークに適合しないケースが多いため、見直しが必要です。
各部門の業務フローや使用システム、セキュリティルールなども含めて現状を把握しましょう。
3.リモートワークの対象範囲を決める
リモートワークの対象となる社員や業務、実施頻度を具体的に決定します。一度にすべての業務や社員を対象とするのではなく、リモートワークとの親和性が高い業務から段階的に導入しましょう。
特に導入初期は週1-2日程度の限定的な実施から開始し、徐々に範囲を拡大していくアプローチが効果的です。
4.体制を構築する
リモートワーク推進のための社内体制として、プロジェクトチームを発足させます。
経営企画や人事総務、情報システムなど関連部門の代表者を集めた横断的なチームを編成します。社内ルールの整備やIT環境の構築、セキュリティ対策の検討など、具体的な導入施策を推進しましょう。
5.ITツールを導入する
体制を構築したら、必要なITツールを業務内容に応じて選定し、導入します。一般的には以下のようなツールがあります。
- Web会議システム
- チャットツール
- 勤怠管理システム
- セキュリティソフトなど
オンライン会議や遠隔でのコミュニケーションを可能にするチャットツールや、リモートワーク下での勤怠を行うツールなどの役立つ機能があります。また、セキュリティリスクを軽減するために、セキュリティソフトなども取り入れましょう。
6.社内ルールを整備する
リモートワーク導入時には、業務時のトラブルにつながらないように、以下のように具体的なルールを策定しましょう。
社内ルール | 内容 |
実施範囲 | リモートワークの対象となる従業員や作業場所のルール |
申請・承認方法 | リモートワークを承認する従業員は誰なのか、ツールでの承認方法などを決める |
評価制度 | 成果物で評価するなど、定量的な評価制度を構築する |
勤怠の管理方法 | ツールでの勤怠管理方法などを決める |
費用の負担 | パソコンや通信費用などのリモートワークでかかる費用の負担について決める |
上記の内容を参考にして、社内ルールを策定しましょう。
7.社内説明会を開催する
リモートワークの対象となる社員や上司・同僚に向けて、導入の目的や運用ルールを説明する機会を設けましょう。
経営層が直接説明することで、全社的な取り組みとしての重要性を印象づけられます。説明会では導入の狙いや期待される効果、具体的な運用ルールなどを明確に伝え、従業員の疑問にも丁寧に答えていきます。
8.リモートワークに役立つ研修を行う
導入したITツールの使用方法や情報セキュリティに関する研修を実施します。情報漏洩リスクや具体的な対策方法の十分な教育が必要です。研修は対象者の役割に応じて内容を変え、管理職向けにはリモートでのマネジメント手法なども含めるとよいでしょう。
9.試験導入する
本格導入の前に、問題点を洗い出すために、限定的な範囲でトライアルを実施します。3~6か月程度の期間を設定し、運用上の課題を洗い出していきます。
試験導入は業務が比較的落ち着いている時期に行い、問題が発生した際にすぐに対応できる体制を整えておきましょう。
10.導入を開始する
トライアル期間で浮上した課題を解決した上で、本格的なリモートワークの導入を開始します。
導入後も、運用状況を定期的にモニタリングし、必要に応じて改善を加えましょう。社員の声に耳を傾け、制度の定着と生産性向上の両立を目指してください。
リモートワーク導入時の5つの環境整備
リモートワークを円滑に進めるためには、事前の環境整備が必要です。本項では、リモートワーク導入時に行うべき5つの環境整備を詳しく解説します。
- インターネット環境を整備する
- PCやモニターを準備する
- 勤怠管理システムを導入する
- コミュニケーションツールを導入する
- セキュリティ対策を行う
以下の項で詳しく解説します。
1.インターネット環境を整備する
リモートワークを効果的に行うには、従業員の自宅のインターネット環境を整える必要があります。対象となる従業員の自宅にネット環境が整っているかどうかを確認し、整備されていない場合は早急に手配しましょう。
すでにネット回線が引かれている場合でも、業務を行う上で通信速度が問題になるケースもあります。安定性に優れているのは光回線ですが、従業員の自宅の状況によってはつながりづらい恐れもあるため、モバイルWi-Fiを貸与する選択肢もあるでしょう。
2.PCやモニターを準備する
業務に適したパソコンやモニターも用意する必要があります。会社が貸与する場合は、テレワークの業務開始日までに従業員の元に届くように手配してください。
一方で、個人パソコンを使用する場合は、セキュリティリスクが高くなる可能性があります。その場合は、業務用と私用のパソコンを分けるなどの適切な対策を取りましょう。
3.勤怠管理システムを導入する
リモートワークでは、自宅が作業場となるため、勤務時間の概念が薄れてしまい、始業と終業の区切りがあいまいになってしまうケースがあります。そのため、テレワークに適した勤怠管理システムや制度の導入が欠かせません。
したがって、システムを活用することで、全社的に勤務時間を明確に把握し、適切に管理できるようになります。従業員の働き方を可視化し、過剰な長時間労働を防ぐとともに、生産性の向上にもつなげていきましょう。
4.コミュニケーションツールを導入する
リモートワークでは、メンバー間のコミュニケーションが希薄になりがちです。そこで、気軽にチャット連絡ができ、グループ通話やオンライン会議ができるSlackやChatworkなどのコミュニケーションツールを導入しましょう。
また、離れた場所にいるメンバーの状況把握には、スケジュール管理機能のついたツールが役立ちます。コミュニケーションの活性化を図るためにも、適切なツールの選定が求められます。
5.セキュリティ対策を行う
リモートワークは、自社の情報を外部に持ち出すため、ウイルス感染や情報漏洩などさまざまなセキュリティリスクが高まります。そのため、以下のように業務で必要なポリシーを定めるとともに、セキュリティ対策の基本方針の明記が重要です。
- セキュリティガイドラインの策定
- データの持ち出し方法
- 各種ツールのアクセス制限
- 緊急時の対応など
総務省の「情報セキュリティポリシーの策定」なども参考にしながら、セキュリティ体制を構築しましょう。
リモートワークを導入した後にやること・成功のポイント
本項では、リモートワーク導入後に行うべき3つのポイントを解説します。
- 導入後の評価を測定する
- 対面でのミーティングを定期的に行う
- リモートワークでもマネジメントを行う
リモートワークで業務を円滑に遂行するためにも、本項で紹介する3つのポイントを参考にしてみてください。
1.導入後の評価を測定する
リモートワークの効果をさまざまな観点から確認するために、定量的・定性的な両面から評価しましょう。定量評価(値化できるものを材料として客観的に評価する方法)では、業務生産性や効率性など数値化が可能な指標を設定し、導入前後の効果を確認してください。
一方、定性評価(数値化できない事象に対して評価する方法)では、従業員満足度や組織へのコミットメントなどを測ります。従業員アンケートを通じて把握しておきましょう。
アンケートでの具体的な聞き取りによって、テレワークのメリットやデメリット、改善すべき点などを把握でき、現状の課題や今後の方向性が見えてきます。
2.対面でのミーティングを定期的に行う
リモートワーク環境下では、対面でのコミュニケーションの重要性がこれまで以上に高まります。表情やジェスチャー、声のトーンなどの非言語コミュニケーションを通じて、より円滑なコミュニケーションが可能になるからです。
また、会議の前後の雑談を通じて、チームの心理的安全性を高める効果も期待できます。リモートワークでは、気軽に話せる機会が減りがちですが、対面ミーティングを定期的に設けることで、チームメンバー同士の信頼関係を築けるはずです。Web会議ツールの活用と並行して、対面での議論の場を大切にしていきましょう。
3.リモートワークでもマネジメントを行う
テレワークのマネジメントでは、チーム内の対話量を増やすために、マネジメント側も意識を変えましょう。報告や相談を待つのではなく、自分から部下へ情報を取りにいく姿勢が大切です。
例えば、上司から積極的に声をかけ、部下の困りごとを引き出しましょう。「少しでも困ったことがあればすぐに相談する」「1日30分の定例で部下の相談タイムを設ける」など、コミュニケーションのルールを新たに策定します。部下の仕事ぶりが見えづらいからこそ、信頼関係の構築と、きめ細やかなフォローが重要です。
リモートワーク導入の企業事例2選
本項では、リモートワークを積極的に取り入れている2つの企業の事例を紹介します。
- カルビー株式会社
- イオン株式会社
各社の特徴的な取り組みや工夫から、リモートワーク導入のヒントを得られるでしょう。
1.カルビー株式会社
カルビー株式会社では、在宅勤務の日数上限を設けていないのが特徴です。社員は毎日リモートで働けて、自宅だけでなくカフェやシェアオフィスなど、自分に合った場所での仕事が可能です。
一方で、業務のアウトプットをしっかりと確認するため、リモートで仕事をした翌日までに報告するなどの工夫をしています。これにより、自由度の高い働き方を実現しつつ、生産性の維持・向上、効果の測定にもつなげています。
2.イオン株式会社
イオン株式会社は2015年から在宅勤務制度を導入しています。店長をはじめとする店舗管理職を対象に、週1回程度のペースで在宅勤務を試験的に開始しました。
その際、業務内容を店舗でしかできない仕事とそれ以外を区分けすることにより、小売業などの対面販売が基本となる業務でもテレワークを実現させています。
こうしたテレワーク導入により、育児や介護を担っている社員でも管理職としての勤務が可能となりました。その結果、女性管理職の増加にもつながっています。細かい業務の分類によって、テレワークを実現できています。
リモートワーク導入時の失敗例と対策
リモートワークは適切な対策を講じないまま導入すると、以下のように業務効率や生産性が低下する可能性があります。
- コミュニケーション不足による業務効率低下
- 労務管理の問題による生産性低下
リモートワーク導入する際に失敗しないためにも、本項で紹介する失敗事例と対策方法を参考にしてみてください。
1.コミュニケーション不足による業務効率低下
リモートワークを導入した企業の中には、社員同士のコミュニケーション不足により、チームでの協調性が保てなくなった企業もあります。例えば、アメリカの大手IT企業のIBMは、2009年に約40%の社員がリモートワークを行う体制を構築しましたが、2017年には在宅勤務を禁止しました。主な理由は、社員同士のコミュニケーション不足によって、チームワークが損なわれてしまったからです。
コミュニケーション不足による業務効率低下を防ぐために、オンラインでの定期的な雑談時間を設けるなど、意図的にカジュアルなコミュニケーションの機会を作りましょう。例えば、週に1回、30分程度の雑談タイムを設定し、仕事以外の話題で交流する時間を持つのも効果的です。
2.労務管理の問題による生産性低下
リモートワークを導入する際には、適切な労務管理体制を整える必要があります。そうしないと、業務の質の低下や勤務時間中の副業、仕事の下請け流用など、さまざまな問題が発生する恐れがあるからです。
実際に、米Yahoo!は、2013年にテレワークを禁止に踏み切りました。その背景には、在宅勤務中の社員の生産性低下や勤務時間中の副業などの問題がありました。管理者による適切な労務管理体制が整っていなかったことが、失敗の要因です。
このような失敗を防ぐには、就業状況を正確に把握できる勤怠管理システムの導入が有効です。例えば、GPSや顔認証機能を搭載した勤怠管理アプリを使えば、社員がいつ・どこで・どれくらい働いているのかを詳細に把握できます。また、日報や週報の提出を徹底し、上司が部下の業務進捗状況を定期的にチェックする体制も必要です。
リモートワーク導入時に従業員が悩んでいることや課題
リモートワークの導入に際して、従業員が抱える悩みや直面する課題は多岐にわたります。948人の人事・教育担当者に対する調査では「コミュニケーションの不足」を挙げた企業が74.9%と最多となりました。リモートワーク環境下では対面でのコミュニケーションが減少するため、情報共有や意思疎通に支障をきたすケースが多いでしょう。
さらに「テレワークに不向きな職種・業務による不平等の発生(73.0%)」と挙げた人も多く、従業員間の不公平感を生み出す可能性があります。
「残業の削減(48.8%)」や「業務効率の悪化(44.8%)」などの生産性に関わる問題点も指摘されています。リモートワーク環境では、業務の進捗管理や適切な労働時間の把握が難しくなるため、残業の増加や効率性の低下を招きやすい傾向です。
一方で「育児・介護との両立がしやすい(44.6%)」というメリットも挙げられています。リモートワークは、仕事と家庭の両立を支援する側面もあります。ただし、急遽テレワークを取り入れた企業ほど、マイナスの影響を指摘する割合が高いでしょう。
リモートワーク導入時に活用できる助成金
本項では、リモートワーク導入時に活用できる2つの補助金を紹介します。
- 人材確保等支援助成金
- IT導入補助金
経費を抑えながら導入するためにも、活用してみてください。
1.人材確保等支援助成金
人材確保等支援助成金は、質の高いテレワークを新たに導入・実施することで、従業員の雇用管理改善や人材確保などの面で成果を上げた中小企業を対象とした助成金です。テレワーク環境の整備や従業員のテレワークスキル向上に取り組むことで、働き方改革を推進し、優秀な人材の確保につなげられます。
助成金の支給額は、取り組み内容によって異なりますが、最大で100万円が支給されます。申請にあたっては、テレワーク実施計画書の作成や、実施後の報告書の提出が必要です。
2.IT導入補助金
IT導入補助金は、各企業の抱える課題に対応したITツール導入に要する経費の一部を補助する制度です。業務の効率化や生産性の向上を目指す企業を支援し、競争力の強化を後押しします。
補助率は、企業規模や導入するITツールによって異なりますが、導入費用の3/4程度が補助されます。
申請の際は、ITツール導入計画の策定や見積書の用意が必要です。また、導入後は効果報告書の提出が求められるため、準備しておきましょう。
リモートワークの導入手順を理解して社内の業務を円滑にしよう
リモートワークの導入は、業務の選定から始まり、ルール作りや課題の改善まで、計画的に進めていく必要があります。また、リモートワークを導入する目的や自社の課題に合わせた環境整備も重要です。
本記事で紹介したリモートワークの導入手順や環境整備のポイントを活かして、リモートワークを円滑に導入できるようにしましょう。
リモートワークの導入に不安があったり、実施しているけど成果を感じられなかったりする場合は、専門家に相談するのもおすすめです。
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