「人材育成をもっと体系的に進めたいが、どこから手をつければいいのかわからない」
「育成担当者が忙しすぎて、育成計画を立てる時間すら確保できない」
このように、人材育成の進め方に頭を抱えている人事担当者も多いのではないでしょうか。
人材育成は一度仕組みを整えてしまえば、組織全体の生産性と定着率を底上げできるうえ、仕組みが回り始めれば担当者の負担も軽減されます。
そこで本記事では、人材育成の代表的な手法から計画の立て方、よくある課題と対処法、そして外部のプロ人材を活用した事例まで、実務で役立つポイントをまとめています。ぜひ最後までお読みください。
人材育成の主な手法
人材育成に使われる手法は複数あり、目的や対象者によって使い分けることが重要です。ここでは実務でよく活用される代表的な6つの手法を解説します。
OJT
OJT(On-the-Job Training)とは、実際の業務を通じて知識・スキルを習得させる育成手法です。即効性が高く、現場で直接使えるスキルが身につく点が強みです。
ただしOJTは、ただ仕事を任せるだけでは機能しません。効果的に実施するには、事前に育成計画を設計し、担当者のスキルにあった適切な内容を教える必要があります。
よくある失敗は「担当者に人材育成を丸投げしてしまうこと」です。指導役の力量に成果が左右され、育成の質にばらつきが生じてしまいます。OJTを機能させるには、担当者へのトレーナー研修はもちろん、定期的な進捗確認など組織として人材育成の仕組みを整備することが欠かせません。
Off-JT
Off-JT(Off-the-Job Training)は、通常業務から離れて行う研修・教育のことです。
OJTが「個別の現場対応力」を育てるのに対し、Off-JTは「組織として底上げすべき知識・マインド」を均一に学んでもらうことに適しています。
近年はeラーニングの活用も広がっており、受講タイミングを分散させることで業務への影響を最小限に抑えながら研修を実施できます。集合研修と組み合わせることで、インプットはオンライン、実践やディスカッションは対面と役割を分担させるのもおすすめです。
OJTとOff-JTの組み合わせ
OJTとOff-JTはどちらか一方で完結させるのではなく、組み合わせて設計することで育成効果が高まります。
この考え方を体系化したのが「7:2:1の法則」です。人が成長する源泉を「経験70%・他者からの薫陶20%・研修10%」と捉え、育成施策全体をこの比率で設計します。
| 割合 | 内容 | 対応する手法 |
|---|---|---|
| 70% | 実務経験・挑戦的な業務 | OJT、プロジェクトアサイン |
| 20% | 上司・先輩・同僚との関わり | メンター制度、1on1、コーチング |
| 10% | 研修・書籍・eラーニング | Off-JT |
このモデルを活用すると、「研修だけ実施して終わり」という状態を防ぎ、学んだことを実務で定着させるサイクルを回せます。育成計画を立てる際は、3つの要素がバランスよく組み込まれているかチェックしてみましょう。
メンター制度
メンター制度とは、直属の上司ではなく比較的年次の近い先輩社員が、仕事上の悩みやキャリアについて継続的にサポートする仕組みのことです。
評価する立場にいない第三者がサポートを行うため、部下が上司には話しにくい悩みを打ち明けやすい環境が生まれます。新入社員や若手の早期離職防止、心理的安全性の向上を目的として導入する企業もあります。
1on1
1on1とは、上司と部下が定期的に行う1対1の面談です。業務の進捗確認にとどまらず、部下の成長や悩み・キャリア志向を把握することを目的とします。
従来の評価面談と異なるのは、「部下のための時間」という位置づけである点です。上司が傾聴・質問に徹することで、部下の自律的な思考と行動を引き出します。週次・隔週など短いサイクルで継続することが、関係構築と早期課題発見につながります。
1on1の導入・運用方法については下記記事もあわせてご参照ください。
関連記事:1on1ミーティングとは?注目されている背景や期待される効果などを解説
コーチング
コーチングとは、対話を通じて相手の内側にある答えを引き出す手法です。答えを教える「ティーチング」とは異なり、質問・傾聴・フィードバックを組み合わせることで、本人の自律的な思考と行動変容を促します。
管理職や幹部候補など、自ら考えて動くことが求められる層への育成に有効です。また、1on1やメンター面談にコーチング的なアプローチを取り入れることで、日常の対話の質も高まります。
社員の自律的な成長を促す育成体制を整えたいとお考えであれば、育成の仕組みづくりを経験してきた人事プロフェッショナルの力を借りることも選択肢の1つです。coachee Agent Proでは、組織課題に応じた人事業務の支援サービスを提供しております。
人材育成計画の立て方
人材育成は、手法を知るだけでは成果につながりません。「誰を・いつまでに・どう育てるか」を計画として設計してはじめて、組織全体に一貫した育成が根付きます。ここでは、実務で使える計画立案の流れを解説します。
自社の現状と課題を把握する
育成計画の出発点は、現場の実態を正確に把握することです。「何から始めればいいかわからない」という場合は、まず以下の2点を確認してください。
- スキルマップの有無を確認する
- 育成ニーズをヒアリングする
スキルマップとは、社員ごとの保有スキルと習熟度を一覧化した表です。すでに存在する場合は内容が現状を反映しているかを検証し、ない場合は簡易版から作成を始めます。職種・等級ごとに「求められるスキル」と「現在のレベル」を比較することで、育成が必要な領域が明確になります。
その後、現場・管理職・経営層それぞれの視点からニーズを収集します。見るべき観点は階層によって異なります。
| ヒアリング対象 | 確認すべき観点 |
|---|---|
| 経営層 | 3〜5年後に必要な人材像・事業戦略との整合性 |
| 管理職 | 現場で不足しているスキル・育成の障害になっている要因 |
| 現場社員 | 自身の成長実感・身につけたいスキルや知識 |
3つの視点を重ね合わせることで、「経営が求めるが現場が気づいていない課題」や「現場では感じているが経営に伝わっていないニーズ」を可視化できます。
育成対象者と目標を設定する
現状把握が済んだら、誰を・どのレベルまで育てるかを具体的に設定します。目標が曖昧なままスタートすると、研修を実施しても成果の検証ができず、改善のサイクルが回りません。
階層別の目標設定は、以下の型を参考にしてください。
| 対象階層 | 育成の焦点 | 目標設定の例 |
|---|---|---|
| 新入社員 | 基礎的な業務遂行力・社会人マナー | 入社6ヶ月以内に担当業務を単独で完結できる |
| 中堅社員 | 専門性の深化・後進指導力 | 1年以内にOJTトレーナーとして新入社員を担当できる |
| 管理職 | 組織マネジメント・戦略的思考 | 期末までにチームの目標達成率を前期比10%改善する |
育成手法を選択し研修計画を設計する
目標が決まれば、それに合った手法を選びましょう。
「とりあえず外部研修」では費用対効果が上がりにくく、現場への定着も進みません。階層と課題に応じて手法を組み合わせることが重要です。
| 階層・課題 | 推奨手法 | 備考 |
|---|---|---|
| 新入社員の基礎習得 | OJT + Off-JT(集合研修) | 体系的なインプットと現場実践を並行する |
| 中堅社員の専門性強化 | eラーニング + OJT | 業務を止めずに学べるeラーニングが有効 |
| 管理職のマネジメント力向上 | 1on1 + コーチング + 外部研修 | 実践と内省を繰り返す設計が効果的 |
| 全階層の底上げ | eラーニング | 受講タイミングを分散でき、コストも抑えやすい |
費用対効果の観点では、外部研修は質の担保がしやすい反面、コストが高くなりがちです。eラーニングは初期導入コストはかかるものの、受講者数が増えるほど1人あたりの単価が下がります。内部OJTは費用を抑えられる一方、担当者の工数と育成品質の管理が課題になります。
3つを組み合わせて予算と効果のバランスをとることが現実的です。
実施・振り返り・改善のサイクルを回す
育成計画は「実施して終わり」では意味をなしません。振り返りと改善を繰り返すことで、計画の精度が上がり、組織に根付いた育成の仕組みが育ちます。
研修後のアンケートにとどまらず、1on1や評価制度と連動させることで育成効果を継続的に確認できます。また研修で学んだスキルが実務でどう発揮されているかを1on1で確認し、評価にも反映させる設計も効果的です。
こうした育成のPDCAを形骸化させないために、運用ルールをあらかじめ決めておくことが重要です。PDCAサイクルの運用ルールの例は、下記のとおりです。
| フェーズ | 実施内容 | 推奨タイミング |
|---|---|---|
| Plan | 育成目標・手法・スケジュールの策定 | 期初・年度始め |
| Do | 研修・OJT・1on1の実施 | 通年 |
| Check | 受講者アンケート・スキル評価・面談での確認 | 研修後・半期ごと |
| Action | 計画の修正・次期の手法見直し | 半期・年度末 |
このように「誰が・いつ・何を確認するか」を担当者レベルまで落とし込むことで、人が変わっても仕組みが継続します。
人材育成でよくある課題と対処法
人材育成の重要性は理解していても、実際に取り組もうとすると壁にぶつかるケースは多くあります。ここでは現場でよく聞かれる3つの課題と、それぞれの対処法を解説します。
育成する側のスキルや時間が不足している
管理職からは「部下を育てたいが、自分の業務で手いっぱい」という声が多く聞かれます。プレイヤーとして優秀だった人材が管理職に登用されるケースは多いですが、仕事ができることと人を育てられるかどうかは別のスキルが要求されるものです。
育成の手法やフィードバックの伝え方を体系的に学ぶ機会がないまま管理職になり、プレイングマネージャーとして自身の業務も抱える環境では、部下育成は構造的に後回しになりやすいといえます。
この課題を内部だけで解決しようとすると、時間がかかるうえに効果も安定しません。育成の仕組みを設計し直すフェーズでは、外部のプロ人材を活用することがおすすめです。
育成体制の構築を専門家に任せたいとお考えであれば、coachee Agent Proをご活用ください。育成の仕組みづくりから運用定着まで、経験豊富な人材が貴社の課題に向き合います。
社員が忙しく育成に時間を割けない
「研修に参加させたいが、現場が回らない」
「OJTの時間を確保しようとしても、急な業務が入ってしまう」
上記は、中小企業の人事担当者から多く聞かれる悩みです。
この課題の根本には、育成が「業務の合間にやるもの」として位置づけられていることにあります。優先度が低いため、忙しくなるたびに後回しになってしまうのです。解決するには、育成を業務設計に組み込むことが重要です。
- 業務時間のうち〇時間は人材育成を行う
- 特定の日時に1on1や勉強会の予定を入れる など
また「時間がない」は仕事環境の問題にも関係します。人材育成が後回しにならないよう、組織レベルで仕組みを作ることが重要です。
育成が属人的でノウハウが蓄積されない
OJT担当者が異動・退職した途端に育成の質が落ちるのは、ノウハウが担当者個人の頭の中にしか存在しないためです。新しい担当者が一から手探りで始める状況は、組織として避けるべきリスクです。
対処法は、育成ナレッジの言語化と体系化です。まず現担当者のやり方を書き起こした育成マニュアルを作成し、職種・等級ごとのスキルマップで習得状況を可視化します。OJTの実施内容やフィードバックを記録として残す習慣をつけることで、担当者が変わっても育成の継続性を保てます。
育成の属人化は仕組みで防ぐことができます。まずは「あの人がいたから育成できていた」という状態から脱することが重要です。
人材育成の仕組みづくりは外部のプロと連携するのがおすすめ
育成計画の立て方や手法の選び方を理解しても、「実際に社内で動かせる人材がいない」「設計にかける時間が確保できない」という問題にぶつかるケースは少なくありません。そのような状況にある場合は、外部のプロ人事の力を借りてみませんか?
自社だけで育成体系を構築しようとすると、試行錯誤に時間とコストがかかります。一方、育成制度の設計・運用を多く経験してきたプロの人材が関わることで、自社の課題に合った仕組みをより短期間で整えることができます。
【人事のプロ人材を活用するメリット】
- 専門人材を採用する時間とコストをカットできる
- 社内のしがらみがないため、客観的な立場で施策を推進できる
- 他社での設計・運用実績が豊富にあるため、実際に業務で機能する仕組みを短期間で構築できる
coachee Agent Proは、人事制度設計・育成体系の構築・評価制度の整備など、幅広い人事課題に対応できる即戦力人材を提供するサービスです。育成の仕組みをゼロから作りたい、あるいは既存の体制を見直したいという場合は、まずお気軽にご相談ください。
人材育成を体系化した企業の事例
実際にcoacheeのプロ人事と連携して育成体制を整えた企業の事例を3つご紹介します。
医療機器メーカー:階層別研修体系の構築
医療診断機器の製造・販売を手がけるこの企業は、グローバル競争の激化と並行してM&Aを実施したことで、人事制度の統合と人材育成の体系化が急務となっていました。
coacheeでは、人事制度の再構築・新処遇制度の導入・労務対応を進めながら、教育領域では階層別・目的別の研修体系を一から構築し、全社の教育方針の企画・運営を担いました。
結果として、職制の明確化と公正な評価制度が整備され、教育体系の充実によって管理職層・若手人材の双方の育成が促進されました。労務対応力の強化とあわせて、組織の安定性と人材力の底上げに成功した事例です。
関連記事:医療機器メーカーにおける人事制度改革と人材育成の体系化
物流グループ:次世代経営者育成スキームの整備
東証プライム上場の総合物流グループの持株会社では、グループ全体の経営ビジョンを実現するために、横断的な人材管理と戦略的な人事制度の構築が必要とされていました。
coacheeでは、中期人事戦略の策定・タレントマネジメント体制の構築・経営幹部育成スキームの整備を主導しました。ジョブ型人事制度の導入や人事基幹システムの刷新も並行して推進しています。
人材配置の最適化と次世代経営者育成の仕組みが整備されたことで、経営の持続性が高まりました。全社視点でのタレントマネジメントにより、戦略と人材活用を連動させた人事機能を実現した事例です。
関連記事:物流グループ中核企業における人事制度改革と次世代人材育成体制の構築
医療・福祉法人:評価制度導入と育成体制の再構築
医療・福祉・介護サービスを展開するこの法人グループは、事業成長と新規事業所の開設、病院移転プロジェクトが重なり、管理部門の機能拡充と人事体制の再構築が急がれていました。
coacheeでは、採用・人事労務・教育・総務・財務経理の各業務を統括しながら、評価制度の導入・評価運用・社員研修の企画までを一貫して担いました。
評価制度の導入によって人材育成・昇進管理の体制が強化され、組織の持続的な成長を支える基盤が整いました。従業員数400名規模の組織でも、外部のプロと連携することで育成と評価の仕組みを同時に整備できた事例です。
関連記事:医療・福祉法人における経営管理基盤の強化と人事総務・財務体制の再構築
「自社で人材育成を体系化するのは難しい」と感じている場合は、外部のプロ人材を活用してみませんか。自社で想定していたよりも早く人材育成の仕組みを整えられる場合があります。
育成体制の構築や見直しをご検討であれば、ぜひcoacheeまでご相談ください。