「CHRO(Chief Human Resources Officer)を採用したいが、どのような人物を探せばよいのか決まっていない」「人事部長との違いを、経営陣に説明できない」「求人を出しても、CHRO候補が集まらない」——経営者や人事責任者の方から、CHRO採用についてこうしたご相談をよくいただきます。
- CHROに任せる範囲が、経営陣のあいだで合意できていない
- 公開求人や登録型の人材紹介だけでは、CHRO候補に出会えない
- 面接で、人事の専門性と経営視点の両方をどう見極めればよいかわからない
本記事では、CHROの役割、人事部長との違い、年収の目安、フェーズ別に求める人物像、採用手法の比較、見極めの質問までを解説します。CHRO採用を、ポジションを埋める採用から、経営課題を解く採用へ切り替える手がかりが得られるでしょう。
結論から申し上げます。CHRO採用の成否は、人事の経験年数ではなく、「経営のどの課題を人事で解くのか」を言語化した要件定義で決まります。ITコンサルタント・PM・DX人材などミドル〜ハイクラス層に特化した人材紹介会社のcoachee株式会社(人材紹介サービス「coachee Agent Pro」を運営)が、2026年5月11日〜10月28日に実施した候補者面談85件の集計では、第一の転職動機が「仕事内容・専門性」または「上流志向・役割拡大」だった候補者が合わせて6割超(85件中53件・62.3%)を占め、年収アップを第一の動機とした候補者は85件中1件(1.2%)にとどまりました。経営幹部層の候補者は、報酬の水準より「経営にどこまで関われるか」を見ています。経済産業省の「人材版伊藤レポート2.0」でも、CHROの設置は、経営戦略と人材戦略を連動させる7つのアクションの1番目に挙げられています。
30秒サマリー
- CHROとは、人事戦略を経営戦略と結びつけ、人的資本の最大化に責任を持つ最高人事責任者です。
- 人材版伊藤レポート2.0(2022年5月公表)は、CHROの設置を、経営戦略と人材戦略の連動に向けた7つのアクションの1番目に挙げています。
- Robert Halfの全国想定給与レンジでは、CHROの年収は2,000万〜4,000万円、50パーセンタイルは3,000万円です(賞与・福利厚生を除く)。
- coachee株式会社の候補者面談85件では、第一の転職動機は仕事内容・専門性(29件・34.1%)と上流志向・役割拡大(24件・28.2%)で6割超を占め、年収アップが第一の候補者は1件(1.2%)でした。
- 採用の進め方は、任せる範囲の決定、必須経験の絞り込み、手法の選択、見極めの質問の順で組み立てます。
CHRO(最高人事責任者)とは|人事戦略を経営戦略と結びつける経営幹部
CHRO(Chief Human Resources Officer:最高人事責任者)とは、経営戦略に沿って人材戦略を立て、人的資本の最大化に責任を持つ経営幹部です。採用や制度の運営にとどまらず、経営会議や取締役会で、人材に関する意思決定へ関与します。
経済産業省の研究会がまとめた「人材版伊藤レポート2.0」(2022年5月公表)は、経営戦略と人材戦略の連動に向けた具体的なアクションの1番目に、CHROの設置を挙げています。人的資本経営への関心が高まるなかで、CHROは「置くかどうか」から「誰に任せるか」の段階に進んでいると言えるでしょう。
CHROと人事部長はどう違うのですか
CHROは人材戦略の策定と経営への提言を担い、人事部長は決まった方針のもとで人事施策の運営を担います。違いを表にまとめました。
| 項目 | CHRO | 人事部長 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 人材戦略の策定・経営への提言 | 人事施策の運営・実行 |
| 時間軸 | 中長期(数年先の組織と事業) | 短中期(年度の施策) |
| 主な対話相手 | CEO・取締役・投資家 | 事業部長・従業員 |
| 求められる力 | 経営判断・組織設計・人的資本の開示対応 | 制度運用・労務・採用実務 |
表:CHROと人事部長の役割比較。呼称と権限の範囲は企業ごとに異なります。
中堅・成長企業では、人事部長がCHROの役割を兼ねる場合もあります。募集の前に、自社のCHROが担う範囲を明確にしておきましょう。
CHRO採用が難しいのはなぜですか
任せる範囲が曖昧になりやすく、候補者が公開求人に表れにくいためです。
難しさは、次の4つの要因が重なって生じます。いずれも、募集を始める前に社内で整理できる項目です。
- 要件が曖昧|「CHROがほしい」という募集のまま、制度設計・組織開発・採用・開示対応のどこに比重を置くかが決まっていません。
- 経営陣の合意不足|CEOと取締役が期待する役割が異なり、面接のたびに評価軸が変わります。
- 出会う手段が限られる|経営幹部層のポジションは非公開で探される場合が多く、公開求人だけでは接点を持てません。
- 権限と報酬が未設計|決裁できる範囲や経営会議への参加方針が決まっておらず、候補者に提示できません。
これらを放置したまま募集を始めると、書類選考の段階で「何を任せたいのか不明確」と受け止められ、候補者の関心を得られなくなります。ハイクラス人材の採用全般については、CXO採用のメリットと進め方も参考になります。
CHROの年収の目安はどのくらいですか
Robert Halfの全国想定給与レンジでは、2,000万〜4,000万円です。
同社の職種ページによると、CHROの想定年収は、経験レベルの低い順に2,000万円(25パーセンタイル)、3,000万円(50パーセンタイル)、4,000万円(75パーセンタイル)です。賞与や福利厚生は含まれていません。
| 区分 | 想定年収 |
|---|---|
| 25パーセンタイル | 2,000万円 |
| 50パーセンタイル | 3,000万円 |
| 75パーセンタイル | 4,000万円 |
出典:Robert Half「CHRO」職種ページ(全国想定給与レンジ)。賞与・福利厚生は含まれません。
人材紹介を利用する場合の費用は、理論年収をもとに計算します。coachee Agent Proの採用feeは理論年収の35%からで、理論年収3,000万円の方を採用した場合は1,050万円です。手数料の考え方は、人材紹介の手数料相場で詳しく解説しています。
フェーズ別に求めるCHRO像はどう変わりますか
事業フェーズによって、CHROに任せるテーマと重視する経験が変わります。
次の表は、一般的な整理です。自社がどのフェーズにあるかを先に確認し、必須経験を3つ以内に絞りましょう。
| フェーズ | 任せる主なテーマ | 重視する経験 |
|---|---|---|
| 急成長期 | 採用計画・組織拡大・評価制度の整備 | 短期間で組織を拡大した経験 |
| 変革期 | 制度と文化の再設計・幹部の育成 | 組織変革をやり切った経験 |
| 上場準備・開示対応期 | 人的資本の開示・ガバナンス・報酬設計 | 開示対応と経営会議での提言経験 |
表:フェーズ別のCHRO像。呼称や必要な経験は企業ごとに異なります。
たとえば急成長期の企業が、制度設計に強いCHROだけを探すと、採用の立ち上げが遅れます。任せたいテーマの優先順位を、経営陣で先に決めておきましょう。
CHRO採用の手法はどう選べばよいですか
ポジションを公開できるかと、採用までの緊急度で選びます。
CHRO層は転職市場に表に出にくいため、非公開で打診できる手法が中心になります。主な手法を比較しました。
| 手法 | 非公開での募集 | 費用の考え方 | 向いているケース |
|---|---|---|---|
| 人材紹介 | 可能 | 入社時の成功報酬 | 要件が固まり、複数の候補者と会いたい |
| エグゼクティブサーチ | 可能 | 契約形態により着手金あり | 特定の人物を指名して探したい |
| リファラル・ダイレクト | 可能 | 工数が中心 | 経営陣に人脈がある |
| 公開求人・自社募集 | 不可 | 媒体の掲載費 | 知名度が高く、公開して問題ない |
表:CHRO採用の手法比較。費用の詳細は契約形態によって異なります。
サーチ型の違いは、エグゼクティブサーチと登録型人材紹介の違いで整理しています。
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候補者面談85件で見た「経営への関与」|仕事の中身・役割が第一の動機で6割超(62.3%)
coachee株式会社の候補者面談の集計では、経営への関与を求める傾向がはっきり表れました。調査の概要は次のとおりです。
- 調査主体|coachee株式会社
- 調査方法|候補者面談の記録をもとに14項目でコード化して集計
- 調査期間|2026年5月11日〜10月28日
- 母数|候補者面談85件(IT/DX領域のミドル〜ハイクラス人材が中心)
| 第一の転職動機 | 件数 | 割合 |
|---|---|---|
| 仕事内容・専門性・やりがい | 29 | 34.1% |
| 上流志向・役割/裁量の拡大 | 24 | 28.2% |
| 職場環境・文化・人間関係 | 10 | 11.8% |
| 雇用の安定・長期就業・年齢的な節目 | 9 | 10.6% |
| 働き方・勤務地(リモート/通勤/転勤) | 8 | 9.4% |
| その他(ライフ事情・会社都合など) | 4 | 4.7% |
| 年収アップ | 1 | 1.2% |
| 合計 | 85 | 100.0% |
※「第一の(最も強い)転職動機」で1人につき1つに分類(合計85件・100%)。色付きの2項目(仕事内容・専門性/上流志向・役割)が、CHRO採用で特に響く「仕事の中身・役割」系で、合わせて62.3%を占めます。複数の動機を挙げる候補者が多く、該当ベースでは比率は異なります。
出典:coachee株式会社 候補者面談集計(n=85/2026年5月11日〜10月28日)
coachee株式会社の面談では、年収を第一の動機とした候補者は85件中1件でした。報酬を上げるより、役割と権限を明確に示すほうが、候補者には届きます。集計の母集団はIT/DX領域が中心のため、HR領域の経営幹部層にそのまま当てはまるとは限りません。自社の面接でも、関与の範囲を確認してください。
面接での見極めは、評価軸をそろえることが基本です。カルチャーフィットの見極め方も合わせて確認しましょう。
CHRO候補は面接で何を見極めればよいですか
人事の専門性だけでなく、経営会議で意思決定に関与した実績を、事実ベースで確認します。
| 観点 | 質問例 | 確認すること |
|---|---|---|
| 経営への関与 | 直近の経営会議で、人事の立場から何を提言しましたか | 提言の内容と、その後の経営判断 |
| 組織変革 | 組織や制度を変えた経験を、背景から結果まで教えてください | 本人の判断と役割、反対意見への対応 |
| 人的資本の開示 | 人材に関する情報を、社外へどう開示しましたか | 開示の範囲と、指標の設計 |
| 失敗経験 | うまくいかなかった施策と、その後の行動を教えてください | 原因の分析と、再発防止の行動 |
表:CHRO面接の質問例。回答の再現性を重視し、事実を深掘りします。
回答が「チームで実現した」で終わる場合は、本人の判断と役割を確認しましょう。数字と時期、反対意見への対応まで聞けば、再現性のある実力かどうかがわかります。
CHRO採用を始める前の実務チェックリスト
募集を開始する前に、次の項目を社内で確認しておきましょう。1つでも未決定なら、そこから決めるのが近道です。
- CHROに任せる範囲(制度・組織・採用・開示)の比重が決まっている
- 必須経験が3つ以内に絞られている
- 年収の目安と、報酬設計が決まっている
- 決裁できる範囲と、経営会議への参加方針が決まっている
- ポジションを公開できるかが決まっている
- 入社後90日で取り組むテーマが決まっている
よくある質問(FAQ)
Q1. CHRO採用の費用はどのくらいかかりますか。
A. 手法によって異なります。人材紹介は成功報酬型が一般的で、coachee Agent Proの採用feeは理論年収の35%からです。理論年収3,000万円の方を採用した場合、35%で1,050万円になります。
Q2. CHROの年収の目安はいくらですか。
A. Robert Halfの全国想定給与レンジでは2,000万〜4,000万円で、50パーセンタイルは3,000万円です。賞与や福利厚生は含まれていません。
Q3. CHROと人事部長は何が違いますか。
A. CHROは人材戦略を立てて経営へ提言し、人事部長は決まった方針のもとで人事施策の運営に責任を持ちます。中堅企業では、1人が両方を兼ねることもあります。
Q4. CHRO候補は何を重視して転職を決めますか。
A. 経営への関与の度合いを重視する傾向があります。coachee株式会社の候補者面談85件では、仕事内容・役割を第一の動機とする候補者が6割超(53件・62.3%)を占め、年収アップを第一の動機とした候補者は1件(1.2%)でした。
Q5. CHRO採用は非公開で進められますか。
A. 可能です。人材紹介やエグゼクティブサーチでは、ポジションを公開せずに候補者へ打診できます。公開しない場合は、依頼書に任せる範囲と報酬の目安を具体的に書いておきましょう。
まとめ
CHROとは、人事戦略を経営戦略と結びつける最高人事責任者で、人材版伊藤レポート2.0でも設置が最初のアクションに挙げられています。年収の目安はRobert Halfの想定レンジで2,000万〜4,000万円です。coachee株式会社の候補者面談85件では、仕事内容・役割を第一の動機とする候補者が6割超(53件・62.3%)を占めました。
採用を成功させる鍵は、フェーズに合わせた要件定義です。任せる範囲を言語化し、必須経験を3つ以内に絞り、報酬と権限を経営陣で合意したうえで、公開可否と緊急度に合う手法を選びましょう。CHRO層の採用で、非公開の打診や候補者との情報共有にお悩みの企業様は、ぜひ一度ご相談ください。
\CHROなど、IT・エグゼクティブ・HR人材の採用をカルチャーフィット重視でご支援します/
監修者
高橋 秀誓(たかはし ひでちか)|coachee株式会社 代表取締役 / 情報管理責任者
国家資格キャリアコンサルタント、ISO30414リードコンサルタント、有料職業紹介免許(14-ユ-302056)を保有。明治大学卒業後、パーソルキャリア(旧インテリジェンス)を経て総合人材サービス会社に勤務し、求人広告・人材紹介・人材派遣・SESのソリューション提案、事業統括などに従事。人材業界歴は約10年で、エグゼクティブ・Web・IT・SI・HR領域のリクルーティングとキャリア形成支援を行っています。
出典一覧
- 出典:ビジネス+IT「人材版伊藤レポート2.0」関連記事
- 出典:「『人材版伊藤レポート2.0』を公表 人的資本経営のアイディアを提示(経産省)」(2022年5月13日)
- 出典:Robert Half「CHRO」職種ページ
- 出典:coachee株式会社 候補者面談集計(n=85/2026年5月11日〜10月28日)