「これまで意欲的に働いていたのに、突然糸が切れたようにやる気を失ってしまった」
「最近、部下の覇気がなくなっており、離職してしまわないか心配だ」
これらは「バーンアウト(燃え尽き症候群)」の兆候かもしれません。バーンアウトは個人の問題だけでなく、職場環境の問題も潜んでいる場合があります。
本記事では、バーンアウトの意味やうつ病との違い、なりやすい人の特徴、企業ができる予防策を解説します。セルフチェック項目や、人事のプロを活用した組織改善の成功事例も紹介しますので、ぜひ参考にしてください。
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バーンアウト(燃え尽き症候群)とは
バーンアウトとは、それまで精力的に仕事へ打ち込んでいた人が、心身の疲労によりエネルギーが枯渇し、まるで燃え尽きたかのように意欲や関心を失ってしまう状態のことです。「燃え尽き症候群」とも呼ばれます。
大きな目標を達成したり、打ち込めるものがなくなったりした時に陥りやすい状態です。
バーンアウトとうつ病の違い
バーンアウトとうつ病は、意欲の低下や不眠など共通する症状が多く見られますが、下記のような違いもあります。
| バーンアウト | うつ病 | |
|---|---|---|
| 主な背景 | 職場での慢性的なストレス | 仕事に限らない様々なストレス |
| 影響範囲 | 仕事場面で強く出やすい | 生活全般に広がりやすい |
| 典型像 | ・消耗感・仕事への心理的距離(冷笑、否定的)・職務効力感の低下 | ・抑うつ気分の持続・興味、喜びの低下 など |
参考:World Health Organization「Burn-out an “occupational phenomenon”」
バーンアウトとうつ病の見極めを素人が行うのは困難です。不調を感じる場合は自己判断せず、心療内科や精神科など専門医の診察を受けることをおすすめします。
バーンアウトになりやすい人の特徴
バーンアウトになりやすい人の特徴は下記のとおりです。
- 責任感が強く、完璧主義な性格
- 他者への共感性が高く、断れない性格
- 仕事熱心でプライベートとの境界が曖昧
- 理想が高く、現実とのギャップに苦しみやすい
責任感が強く完璧主義な人ほど、手を抜くことができず、常に最高の成果を求めがちです。また、他者への共感性が高い人は、相手の気持ちを優先してしまい、頼まれごとを断れずにキャパシティを超えて仕事を抱え込んでしまうことがあります。
さらに、高い理想を持つ人は「こうあるべきだ」という思いが強いため、思うようにいかない場面に直面すると無力感を覚えやすく、燃え尽きてしまうリスクが高まります。
バーンアウトを引き起こしやすい職場の特徴
バーンアウトは個人の資質だけでなく、その人が置かれている環境にも大きく左右されます。特に以下のような特徴がある職場では、バーンアウトのリスクが高まります。
- 長時間労働や過重労働が当たり前になっている
- 属人的な人事評価が行われている
- マイクロマネジメントを行う管理職がいる
- 職場の風通しが悪い
それぞれ詳しく解説します。
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長時間労働や過重労働が当たり前になっている
長時間の残業や休日出勤が常態化している職場は要注意です。朝早くから夜遅くまで休みなく働き続けていると、なかなか疲労が回復しません。
このような環境が当たり前になっている場合、そもそも企業の労務管理体制自体に改善の余地が多く残されている可能性が高いでしょう。
関連記事:労務管理とは?仕事内容や勤怠管理・人事管理との違いを簡単に紹介
属人的な人事評価が行われている
評価基準が曖昧で、成果そのものよりも「上司に気に入られているか」といった属人的な要素で評価が決まってしまう職場も、バーンアウトの温床となりがちです。
どれだけ努力して成果を上げても正当に評価されないと、従業員は「あんなに頑張ったのに報われない」と無力感を覚え、仕事への熱意を失ってしまいます。
関連記事:社員を適切に評価するには?人事評価制度を見直すメリットや方法を紹介
マイクロマネジメントを行う管理職がいる
マイクロマネジメントとは、上司が部下の業務に対して過干渉になり、細かい手順や進め方に至るまで逐一指示や監視を行うマネジメント手法のことです。
自分の裁量で仕事を進められないのはもちろん、人によっては30分に1回など非常に細かい業務報告を求めるため、仕事がなかなか進みません。その結果、徒労感や無力感を覚えてバーンアウトに陥るリスクが高まります。
職場の風通しが悪い
部署間の交流がなく隣の部署が何をしているか分からないなど風通しの悪い職場も、バーンアウトする社員の発生リスクが高いです。
他にも、上司や同僚と業務以外の雑談をする機会がほとんどなく、困ったことがあっても気軽に相談しにくい雰囲気の職場では、従業員が孤立を深めやすくなります。
バーンアウトのセルフチェック項目
自分がバーンアウトの状態にあるか、あるいはその予兆がないか確認してみましょう。以下の項目に多く当てはまる場合は注意が必要です。
- 朝、目が覚めると「仕事に行きたくない」と強く感じる
- 以前は楽しかった仕事に、興味ややりがいを感じなくなった
- 些細なことでイライラしたり、顧客や同僚に冷たい態度をとったりしてしまう
- 「自分はこの仕事に向いていない」「何の役にも立っていない」と感じる
- 十分に寝ても疲れが取れない、または眠れない日が続いている
- 頭痛や腹痛など、原因不明の体調不良が続いている
企業としては、上記の項目を社員へ共有し、当てはまる項目が多い社員には面談を行うなど対策を実施しましょう。
社員のバーンアウトを防ぐために企業ができること
社員がバーンアウトしないよう企業側が実施できることをご紹介します。
- 人事評価制度を見直す
- 人員配置と業務量を見直す
- 社内のコミュニケーションを促す施策を行う
- 社員一人ひとりの役割を明確にする
- 管理職へマネジメント研修を実施する
バーンアウトは個人の問題だけでなく、会社などの環境要因も強く影響します。優秀な社員の離職を防ぐためにも対策を行いましょう。
人事評価制度を見直す
属人的な人事評価が行われているなど、人事評価制度に問題がないか見直しましょう。
人事評価制度を見直し、客観的に社員を評価できる仕組みを作ることで、社員の納得感が高まり、「頑張っているのに評価されない」という徒労感からくるバーンアウトのリスクを低減できます。
人員配置と業務量を見直す
特定の優秀な社員にばかり仕事が集中していないか、業務量を確認することも重要です。
社員一人ひとりのスキルや経験、適性を考慮し、適切なポジションへ配置できているかを見直しましょう。適切な人材配置を行うことで、過度な負担の偏りを防げるだけでなく、生産性の向上や社員のモチベーション維持にもつながります。
社内のコミュニケーションを促す施策を行う
業務上のやり取りだけでなく、気軽に相談できる関係性を築くことが大切です。
たとえばランチミーティングで雑談の機会を作ったり、定期的な1on1ミーティングを実施して上司と部下が対話する場を設けたりするのが有効です。
社員一人ひとりの役割を明確にする
「どこまでが自分の仕事か」という役割分担が曖昧だと、責任感の強い社員が「あれもこれも」と業務を引き受けてしまい、キャパシティを超えてしまう恐れがあります。
社員一人ひとりの役割やミッションを明確に定義し、業務範囲を明確にすることで、特定の個人に過度な負担がかかるのを防ぎましょう。
管理職へマネジメント研修を実施する
現場の管理職が適切なマネジメントを行えるよう、研修を実施することも企業側に求められています。
評価者向けの研修を通じて評価の目線を統一したり、部下のメンタルヘルスケアや業務調整の方法を学んだりする機会を提供しましょう。管理職が正しい知識とスキルを身につけることで、部下をバーンアウトさせない組織運営を行いやすくなります。
関連記事:【完全ガイド】幹部候補の育成方法5ステップ|成功のポイントや事例を紹介
組織課題の解決や環境整備には人事のプロを活用しよう
バーンアウト対策にかけるリソースやノウハウが不足している場合は、人事・採用のプロ人材を活用してみてはいかがでしょうか。外部の知見を取り入れることで、客観的な視点から組織の課題を特定し、効果的な改善策を実行できます。
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バーンアウトをはじめとする人事課題に対してcoacheeが支援を行った事例
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関連記事:製造業における働き方改革の推進と人事労務オペレーションの高度化
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関連記事:情報通信企業における新人事制度構築と労務管理体制の再設計
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関連記事:グローバル小売企業におけるHRBPとしての組織開発と制度改革プロジェクト推進
社員がバーンアウトしにくい環境作りを行おう
本記事では、バーンアウトの症状やなりやすい人の特徴、そして企業として取り組むべき予防策について解説しました。
社員が心身ともに健康で、長く活躍できる環境を整えることは、企業の持続的な成長に不可欠です。まずは自社の評価制度や労務環境を見直し、バーンアウトを引き起こす要因がないか点検することから始めましょう。
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