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インクルージョンとは?ダイバーシティだけでは失敗する理由と導入の流れ

hidechika-takahashi
coachee 広報チーム
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「インクルージョンとは何?ダイバーシティと何が違うのか知りたい」
「多様な人材を採用したものの、現場で摩擦が起きてうまく定着しない」

労働人口の減少や価値観の多様化を背景に、人材の定着や組織力向上に悩む人事担当者や経営層も多いのではないでしょうか。

インクルージョンとは、単に多様な人材を集める「ダイバーシティ」だけでなく、「個々の違いが認められ、組織の一員として活かされている状態」を指します。

本記事では、以下の内容を詳しく解説します。

  • インクルージョンとは
  • ダイバーシティとの違い
  • メリット
  • インクルージョンを阻む要因
  • 施策
  • 成功事例

本記事を読むことで、概念から現場への導入方法まで網羅的に理解できるようになります。

インクルージョンの本質を知り、社内の心理的安全性を高めて、組織全体の生産性やイノベーションの創出に役立ててください。

もし、自社に合ったインクルージョン推進や人事制度の構築に課題を感じている場合は、採用から体制構築までを人事のプロが支援する「coachee人事シェア」の活用もおすすめです。

専門的なノウハウを持つプロ人材が伴走するため、効果的な組織変革が期待できます。ぜひ一度、ご相談ください。

インクルージョンとは


インクルージョンとは、直訳すると「包括」や「包含」という意味を持ち、ビジネスにおいては個々の違いが尊重されて能力が発揮されている状態を指します。

ダイバーシティのように単に多様な人材が集まっているだけでなく、組織への帰属意識と自分らしさの両方が満たされていることが特徴です。

関連する概念(インテグレーションなど)との違い

インクルージョンを正しく理解するためには、関連する他の概念との違いを知ることが大切です。ここでは、インクルージョンと関連する概念をまとめました。

概念状態の定義組織での具体例
インクルージョン(包摂)組織側が環境やルールを変え、個々の違いをそのまま活かしている状態。・育児中の社員に合わせて会議時間を変更する。
・言葉の壁をツールで解消し、外国籍社員の意見を取り入れる。
エクスクルージョン(排除)特定の人々を組織や社会から拒絶し、参加を排除している状態。・女性や外国人の採用を一切行わない。
・「うちは男性社会だから」と門前払いする。
セグリゲーション(分離)組織には入れるが、マジョリティとは別の場所に隔離されている状態。・障がい者雇用枠があるが、別棟のプレハブで単純作業のみを行う。
・女性だけの「補助職」コースがある。
インテグレーション(統合)同じ場所にいるが、マイノリティが既存のルール(マジョリティ)に合わせることを強いられる状態。・女性でも管理職になれるが、男性と同じ長時間労働が条件
・「郷に入っては郷に従え」と、個性を消すことを求める。

例えば、インテグレーションは個人が組織に合わせることを求めますが、インクルージョンは組織が柔軟に変化します。

個人の強みを最大限に引き出すためには、組織のルール自体を多様な背景に合わせて設計し直す姿勢が必要です。

ダイバーシティ・エクイティとの関係性

以下の表で、インクルージョンとダイバーシティ・エクイティとの違いをまとめました。

概念意味・状態組織での課題・特徴
ダイバーシティ人材の多様性(属性の違い)が存在している状態多様な人材を集めるだけでは、互いに無関心になったり対立したりするリスクがある。
インクルージョン多様な人材が受け入れられ、それぞれの能力が活かされている状態違いを尊重する風土があり、摩擦を建設的な議論に変えやすくなる。
エクイティ全員に一律の支援をするのではなく、個々の状況に合わせて挑戦できる環境を整えること慈悲的差別を防ぎ、誰もが公平に能力を発揮できる基盤を作る。

ダイバーシティは多様な人材が存在する状態を指すのに対し、インクルージョンはその多様性が活かされている状態を指します。

さらに近年は、エクイティと呼ばれる公平性の概念を加えることも重要視されています。全員に同じ支援をするのではなく、個々の状況に合わせて挑戦できる環境を整えることが必要です。

これらを組み合わせたD&I(ダイバーシティ&インクルージョン)や、DEI(ダイバーシティ、エクイティ&インクルージョン)として推進することで、組織の力を総合的に高められます。

関連記事:ダイバーシティとは?メリット、現場が疲弊しない導入手順を解説

関連記事:DEI(ディーイーアイ)とは?意味・必要な理由や戦略、事例をわかりやすく解説

インクルージョンがビジネスで注目される3つの背景


インクルージョンが求められるようになった背景には、社会構造や経営環境の変化があります。

  • 労働力不足・少子高齢化
  • グローバル化・価値観の多様化
  • 人的資本経営・ESG投資・SDGs

労働力不足や少子高齢化が進む現代では、これまで通りの画一的な採用基準では必要な人材を確保できません。

実際に、企業の人手不足感を示す雇用人員判断D.I.は、マイナス水準で低下傾向にあります。

このように人手不足が深刻化する中では、シニア層や外国人など、さまざまな背景を持つ人材が活躍できる環境づくりが企業の存続に直結する重要な要素です。

また、グローバル化や働き方に対する価値観の多様化が進み、単一の価値観だけで市場のニーズに応えることは困難になりました。

さらに、投資家も人的資本経営やESG投資の観点から、多様性を活かす組織体制を評価する傾向にあります。これらの理由から、インクルージョンの推進は企業の持続的な成長に不可欠な戦略となっています。

ダイバーシティだけでは得られないインクルージョンのメリット

多様な人材を採用するだけでなく、インクルージョンを実現することで組織に独自の強みが生まれます。この章では、3つのメリットを解説します。

異質な意見をイノベーションに変えられる

インクルージョンが浸透した組織では、異なる意見同士の摩擦から新しいアイデアを生み出せます。多様性があるだけの状態では、意見の対立が単なる人間関係の摩擦で終わってしまうことが少なくありません。

違いを尊重する風土が根付いていれば、異なる視点を建設的な議論へと発展させられます。実際に、マイノリティの視点を取り入れたことで新しい市場の開拓や新製品の開発につながった企業も存在します。多様な視点を掛け合わせることが、企業の成長を促す原動力となります。

意思決定の質が高まり、リスクが低減する

多様な視点から意見を交わすことで、組織の意思決定の質が向上し、見落としがちなリスクを減らせます。似たような属性や価値観を持つ人だけで議論すると、無意識のうちに特定の方向に意見が偏りやすいため注意が必要です。

一方で、インクルージョンが機能している環境では、さまざまな角度から計画や方針が検証されるため、想定外のトラブルや見落としを防ぎやすくなります。多様な意見を組み合わせて客観的に状況を判断できるため、より賢明な経営判断を下すことができます。

組織全体の業務改善と生産性向上につながる

特定の誰かのための配慮(インクルージョン)が、結果として組織全体の働きやすさにつながるケースもあります。

例えば、障がいを持つ社員のために業務マニュアルを整理したり、コミュニケーションの手法を明確化したりする取り組みです。これらは結果的に業務の標準化を進め、すべての社員のミス削減や作業効率の向上につながります。

なぜ進まない?インクルージョンの阻害要因・問題とダイバーシティだけでは失敗する理由


ダイバーシティが進んでいる一方で、能力を発揮できるインクルージョンの段階に至っていない企業は少なくありません。

例えば、パーソルダイバースの調査によると、障がい者の雇用数は21年連続で過去最多を更新していますが、役職に就いている人の割合はわずか7.2パーセントにとどまっています。

引用:パーソルダイバース「はたらく障害者の就業実態・意識調査2025 vol.1 就業実態

また、女性活躍の推進においても、難易度の高い仕事などの経験を持つ女性の割合は男性に比べて低い傾向にあります。

出典:公益財団法人 21世紀職業財団「ダイバーシティ&インクルージョン推進状況 調査結果 要約版 (2022)

多様性は確保されつつあるものの、能力を発揮して昇進する「インクルージョン」の段階には至っていないケースが依然として多く見られます。

ここからは、上記の調査のように、インクルージョンが進まない理由や課題について解説します。

1.アンコンシャス・バイアス(無意識の偏見)

無意識の思い込みや偏見が、適切な人材配置や評価を妨げる大きな原因です。男性は仕事で女性は家庭、あるいはシニア層は新しい技術に弱いといった固定観念が、本人も気付かないうちに判断に影響を与えます。

悪気がなくても、日常のささいな言動がマイノリティの疎外感を生んでしまうケースがあります。自分自身のバイアスに気付くことは難しいため、定期的な研修や対話を通じて自覚を促す取り組みが必要です。

2.同質性を好む組織風土と抵抗勢力 

言葉にしなくても通じ合うことを重視してきた組織では、異質な人材の受け入れに強いストレスを感じる傾向があります。暗黙の了解に頼る文化は効率的に見えますが、多様な意見を排除してしまう危険性をはらんでいます。

また、既存の多数派である社員が、自分たちの立場が脅かされると感じて変化に抵抗するケースも少なくありません。多様な意見を調整する手間を避けてしまうと、インクルージョンはなかなか前進しません。

3.慈悲的差別によるマイノリティの戦力外化 

良かれと思って配慮しすぎることが、逆に相手の成長機会を奪う慈悲的差別(意思を確認せずに過度な配慮などをすること)につながります。例えば、子育て中だからという理由で重要な仕事を任せない状況が続くと、本人は期待されていないと感じてしまうでしょう。

過剰な配慮は当事者のやる気を削ぐだけでなく、周囲からの特別扱いという不満を生む原因にもなります。一人ひとりの状況に合わせて適切に挑戦できる環境を整えることが、真の公平性につながるでしょう。

自社のインクルージョン度合いを測る2つの基準


組織のインクルージョンがどの程度進んでいるかを把握するためには、帰属意識と独自性という2つの基準を用いることが効果的です。この章では、以下の内容について解説します。

基準意味
帰属意識チームの一員として温かく迎え入れられ、自分が必要とされているという安心感や結びつき。
独自性周囲に同調するのではなく、その人ならではの個性や強みが価値あるものとして尊重されている感覚。

これら2つの基準の高低により、組織は以下の4つのタイプに分類されます。

タイプ状態特徴対策
インクルーシブ(理想型)帰属意識:高独自性:高【結束と個性の共存】
一体感があり個も活きる。革新が起きやすい。
成功要因を分析し、好事例として他部署へ横展開する。
同化型帰属意識:高独自性:低【仲は良いが画一的】
同調圧力が強く、異質な意見が出にくい。
心理的安全性を高め、反対意見や多様な視点を歓迎する。
個人主義帰属意識:低独自性:高【一匹狼の集まり】
個の能力は高いが、横の連携が希薄。
チームビルディングや対話を増やし、相互理解を深める。
疎外型帰属意識:低独自性:低【疎外的】
居場所がなく、自分らしさも発揮できない。
帰属意識と独自性の両面から、早急かつ包括的に改善する。

上記の内容をもとに、自社が現在どのタイプに当てはまるかを客観的に分析しましょう。

現状の課題を正しく認識することで、組織に必要な改善策を立てられます。

インクルージョンを実践する5つの施策・導入ステップ 


インクルージョンを組織に定着させるためには、段階的かつ具体的な施策の実行が求められます。以下の表に、実践に向けた5つのステップと具体的な取り組み内容をまとめました。

ステップ具体的な取り組み内容
1.経営層からのコミットメントを発信する経営トップが意義と目的を明確に発信し、経営目標に組み込みます。経営層自身が研修を受講し、率先して行動する姿勢を見せることが重要です。
2.アンケートで現状の課題を可視化する従業員サーベイを実施し、属性ごとの不満や疎外感を客観的に分析します。定性的なインタビューも併用して、数字に表れない現場の声を拾い上げます。
3.アンコンシャス・バイアス研修を実施する全社員を対象に、無意識の偏見に気付くための研修を継続的に開催します。ケーススタディを用いて、具体的なNG言動を学ぶことが効果的です。
4.公平な評価制度と柔軟な働き方を整備するテレワークや短時間勤務など、多様な働き方の選択肢をあらかじめ用意します。多面評価などを導入し、成果に対して公平に評価される人事制度を構築します。
5.デジタルツールでコミュニケーションを活性化するチャットツールなどを活用し、情報へのアクセス格差をなくすことがポイントです。サンクスカードなどの称賛ツールを導入し、心理的安全性を高めることも有効です。

これらのステップを順番に進めると、現場の混乱を防ぎながら、多様な人材が活躍できる土壌を整備できます。

トップの明確な意思表示から始まり、現状把握や意識改革を経て、最終的に制度やツールの導入へと落とし込む流れが大切です。

関連記事:スーパーフレックス制度とは?導入のメリット・デメリットや手順

インクルージョンの取り組み事例と学べるポイント

実際にインクルージョンを推進している企業の事例を知ることで、自社での具体的な活用イメージを掴めます。

この章では、以下の3つの企業の事例について解説します。

物流グループ|多様な働き方を受け入れる制度基盤の構築

ある総合物流グループの持株会社では、経営戦略と連動した人事基盤の刷新を通じて、多様な人材が活躍できる環境を整えました。

具体的には、ジョブ型人事制度やテレワークの導入に加え、全社視点でのタレントマネジメント体制を構築しました。柔軟な働き方の受け入れや適材適所の配置を進めた結果、個々の強みを活かして働くというインクルージョンの土台が形成されています。

この取り組みにより、人材配置の最適化が進み、戦略と人材活用が連動する組織体制が実現しました。

物流グループ中核企業における人事制度改革と次世代人材育成体制の構築

NEC|多様な人材活用を進めるI&Dを推進

NECでは、多様な人材を受け入れる土壌がなければ能力は活かせないと考え、インクルージョンを先頭に置いた「I&D」という方針を掲げています。以下の4分野に役員を配置し、トップ層から意識改革を進めています。

  • LGBTQ
  • ジェンダー
  • 障がい
  • マルチカルチャー

さらに、全役員にD&I検定の受験を義務付けたり、顔認証技術を活用して障害者手帳の提示負担を減らしたりと、多角的なアプローチを行っています。経営層と現場の両方の視点を持ちながら、技術力も活かして推進している点が特徴です。

参考:NECYouTubeチャンネル「NECグループにおけるインクルージョン&ダイバーシティの方針 [NEC公式]

常磐谷沢製作所|手先の器用さを活かした取り組み

常磐谷沢製作所では、ヘルメットなどの製造部門に勤務する全盲の社員の強みに着目しました。本人の手先の器用さを活かすため、視覚を使わずに正確な加工ができる専用の作業補助工具をジョブコーチとともに手作りで開発しました。

この工夫により、対象社員がスムーズに作業できるようになり、担当できる業務の幅が大きく広がりました。さらにチーム全体で新たな補助具を考案する動きが生まれ、部門全体の業務改善にも貢献しています。

参考:厚生労働省「障害者への合理的配慮好事例集

【成功のポイント】

これらの事例に共通しているのは、単に多様な人材を受け入れるだけでなく、組織側が「制度」や「環境」を意図的に変化させている点です。

個人の強みを活かすために人事制度を見直したり、業務を支援する補助具や技術を導入したりと、働きやすい仕組みづくりに注力しています。

その結果として、特定の人材の活躍にとどまらず、部門全体の業務改善や組織力の底上げといった大きな成果につながっています。

インクルージョンの推進なら、採用から体制構築まで可能なcoachee人事シェア

インクルージョンとは、個々の違いが尊重され、誰もが能力を発揮できる組織の状態です。多様な人材を集めるだけでは摩擦や対立が生じやすいため、無意識の偏見に気付き、柔軟な働き方や公平な評価制度を整える必要があります。

経営層からの発信と現場の課題把握を両輪で進めることで、組織全体の心理的安全性が高まり、新しいアイデアや生産性の向上につながります。

とはいえ、自社内だけでインクルージョンを推進することは、ノウハウ不足から難航するケースも少なくありません。

もし、効果的な組織変革をスピーディーかつ確実に進めたいとお考えであれば、採用から体制構築までをプロが伴走支援する「coachee人事シェア」の活用を選択肢の一つとしてご検討ください。

「coachee人事シェア」では、多様な働き方を受け入れるジョブ型人事制度の設計や、タレントマネジメントの導入など、専門的な知見を持つプロ人材が貴社の課題に合わせて伴走します。

自社のインクルージョン推進に悩んでいる方は、ぜひ一度無料相談をご活用ください。

記事を書いた人
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coachee 広報チーム

国家資格キャリアコンサルタントの資格を持つ高橋秀誓と、採用責任者、人事責任者などの豊富な経験を持つスタッフが率いるcoacheeの広報チーム。
皆様に採用や人事業務に役立つ情報を提供します。

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