「労務管理の仕事内容について理解を深めたい」
「勤怠管理や人事管理と何が違うのだろう」
このように悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
労務管理とは、従業員が安心して働けるように行う様々な業務のことです。勤怠管理や人事管理とは何が違うのか、具体的に労務管理とはどのような業務が該当するのか、具体例を交えながら解説していきます。
記事を最後まで読むことで、労務管理に対する理解が深まるだけでなく、適切に人事として仕事をすすめるためのコツも分かります。仕事に対する理解度を上げるためにも、ぜひ最後までお読みください。
なお「労務管理は自己流で対応しているが、本当にこれで良いのか、より効率的な業務の進め方はあるのか誰かに相談したい」と悩んでいる方は、coachee人事シェアを活用してみませんか。人事経験が豊富なプロ人材が、貴社の人事・採用業務の効率化に貢献します。ぜひ下記からサービス詳細をご確認ください。
労務管理とは?簡単に解説
労務管理とは、従業員が安心して働けるよう、労働に関する手続きや管理を行う仕事です。
たとえば勤怠管理を行って従業員の出勤・退勤時間を把握し、給与計算を行って給料を振り込んだり、社会保険への加入手続きを行ったりします。労務管理が適切にできていないと、給料の支払いミスや不払い、社会保険への加入漏れなど、重大なトラブルを招きかねません。
勤怠管理との違い
勤怠管理は労務管理の一部です。
勤怠管理とは、従業員の出勤・退勤時間や有給の消化状況などを管理する業務のことです。一方の労務管理では、勤怠管理の業務に加えて社会保険や給与の管理など、幅広い業務を行います。
人事管理との違い
人事管理と労務管理はいずれも「自社の従業員」に関する仕事を行います。
しかし、人事管理では配置転換や人事評価など「従業員の処遇」を管理するのに対し、労務管理では社会保険や勤怠管理など「会社の人事制度」を管理するものです。
なお、場合によってはどちらも同じ意味で使われることがあります。
労務管理の仕事内容
労務管理の詳しい仕事内容を見ていきましょう。
- 法定三帳簿の作成・管理
- 労働契約の締結・管理
- 勤怠管理
- 給与計算
- 就業規則の作成・管理
- 各種社会保険の手続き
- 職場環境の改善
- 福利厚生の管理
それぞれ具体的に解説します。
法定三帳簿の作成・管理
法定三帳簿とは、労働基準法により管理が義務付けられている下記3つの帳簿のことです。
- 労働者名簿
- 賃金台帳
- 出勤簿
労働者名簿とは、労働基準法第百七条により義務付けられている、全従業員の氏名・年齢などを記載した書類のことです。
(労働者名簿)第百七条使用者は、各事業場ごとに労働者名簿を、各労働者(日日雇い入れられる者を除く。)について調製し、労働者の氏名、生年月日、履歴その他厚生労働省令で定める事項を記入しなければならない。②前項の規定により記入すべき事項に変更があつた場合においては、遅滞なく訂正しなければならない。 |
賃金台帳とは、賃金を支払うたびに該当労働者の労働時間や時間外労働時間などを記載しなければならない書類です。
(賃金台帳)第百八条使用者は、各事業場ごとに賃金台帳を調製し、賃金計算の基礎となる事項及び賃金の額その他厚生労働省令で定める事項を賃金支払の都度遅滞なく記入しなければならない。 |
出勤簿は、法律における規定はありません。ただし「労働者の労働時間や休憩時間、休日などを適切に管理する」義務が企業側にある観点から、出勤簿のように労働者の勤務状況を把握できる書類の整備が必要です。
たとえばタイムカードのように、該当の労働者がいつ出勤し、いつ退勤したのか分かる書類の整備が求められます。
労働契約の締結・管理
人材を採用する場合、労働契約書を締結する必要があります。これは民法第六百二十三条では下記のように規定されており、雇用契約の作成・締結と管理は民法を守るためにも必ず行わなければなりません。
第六百二十三条 雇用は、当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生ずる。 |
引用:民法|e-GOV法令検索
雇用契約を締結・管理は労務管理の重要な仕事の1つといえるでしょう。
勤怠管理
従業員が時間通りに出勤しているか、遅刻や早退、有給の消化状況はどうか確認するためにも勤怠管理は欠かせません。
タイムカードや勤怠管理システムなどを活用して、労働時間を正確に把握しましょう。
給与計算
勤怠実績をもとに、従業員の給与や社会保険料、割増賃金(残業代)を計算します。
法律の改正や働き方の多様化にともない、計算方法は以前よりも複雑です。ミスなく給与を計算するには、給与管理システムを活用したり過去の経験やスキルの積み重ねが重要になったりします。
就業規則の作成・管理
常時10人以上の労働者を雇用している場合は、就業規則の作成および労働基準監督署への届出が必須です。違反すると罰則を科せられるため、組織を拡大するタイミングでは欠かせない業務です。
また就業規則は従業員へ周知することも必要で、かつ必要に応じて規則の修正を行う必要もあります。労務管理を行う場合は、就業規則の管理はもちろん、場合によっては作成にもかかわれるかもしれません。
各種社会保険の手続き
健康保険や厚生年金といった社会保険はもちろん、労災保険、健康保険などに加入する手続きを行うのも、労務管理の仕事です。
従業員を採用したり退職者が発生したり、育休や休業などが開始した場合には様々な手続きが必要になります。
職場環境の改善
ハラスメントの防止や高齢者・女性の活躍を促進するのも、労務管理の仕事です。
多様な従業員が働きやすい職場環境を構築することで、自社に適した人材を採用しやすくなったり従業員の離職を防いだりしやすくなります。
福利厚生の管理
福利厚生には、法律で定められた「法定福利厚生」と、企業側が任意で導入できる「法定外福利厚生」があります。
- 法定福利厚生:社会保険や労災保険などへの加入
- 法定外福利厚生:社宅や社員食堂などの導入
これらの福利厚生の提供や維持・管理も、労務管理の仕事です。
労務管理の仕事内容を理解する際に押さえておきたい課題点
労務管理の仕事は、時代の流れに合わせて変化を続けています。たとえば下記は、近年特に求められている、人事業務を行ううえでの課題となっている点です。
- ハラスメントへの対策
- 多様な働き方への対応
- IT技術を活用した生産性向上への対応
それぞれ詳しく解説します。
ハラスメントへの対策
パワハラやセクハラと言った単語は今やテレビのニュースや新聞でも使われる、一般的なものになりました。しかしハラスメントを訴える声がなくなることはなく、対策が十分にできているとはいえない状況です。
そこで政府は令和6年5月に法改正を行い、下記のハラスメントへの対策を事業主に義務付けています。
- パワーハラスメント
- セクシャルハラスメント
- 妊娠、出産、育児休業・介護休業等に関するハラスメント
このような背景から、人事にもハラスメント対策への施策立案や実行などが強く求められています。
多様な働き方への対応
近年、日本では時短勤務やリモートワークなど多様な働き方をする人が増えています。背景として、少子化による働き手の減少、それにともなう女性や高齢者の労働参加などが挙げられます。
このような背景から、従来であれば「正社員とアルバイト」で管理できていたものが、時短勤務の社員やリモートワーク社員、派遣の人、業務委託の人など、多様な働き方をしている人を管理する必要性が高まっているのです。
政府でも中小企業の働き方改革を支援しようと、働き方改革特設サイトを設けるなどしています。人事としても多様な働き方を認める人事制度の改革、それにともなう勤怠管理業務の効率化などが求められているのです。
IT技術を活用した生産性向上への対応
IT技術を活用した業務の効率化も、人事に求められている仕事の一つです。
たとえばタイムカードで勤怠管理を行っているのであれば、オフィスへの入退室で勤怠管理を行えるシステムを導入する。リモートワークを導入するのであれば遠隔でも社員の勤怠状況を管理できるシステムの導入が求められます。
システムの導入には手間とお金がかかります。しかし一度導入してしまえば生産性が上がり、中長期的には大きく得をする可能性があります。
ここまで労務管理の課題点を紹介しました。もし「自社のリソースやノウハウだけで対応できるか不安」と悩んでいるのであれば、この機会にcoachee人事シェアを活用して、プロ人材の知見を活用してみませんか。
適切な労務管理を行うコツ
労務管理を適切に行うためにはどうすれば良いか、主なポイントをご紹介します。
- 最新の法改正をチェックしておく
- 適切に情報を管理する
- 業務を改善する意識を持つ
- プロの意見を参考にする
最新の法改正をチェックしておく
採用や雇用に関する法律は新しく改正される可能性があります。
すべての法改正が自社の業務に影響するとは限りません。しかし、気づかないうちに法律が変わり不適切な労務管理を行わないためにも、情報をこまめにチェックすることが大切です。
適切に情報を管理する
情報管理を徹底することも、人事をはじめとしたビジネスパーソン全員に求められるものです。
「〇〇社の個人情報が流出した」といったニュースを見聞きしたことがある人もいるでしょう。情報が流出すると、顧客からの信頼を失うだけでなく従業員の個人情報が違法に取引されてしまう恐れがあるなど、大変怖いものです。
個人情報や顧客情報は社外に持ち出さない、社用パソコンの管理方法にルールを設ける、セキュリティを強化する、といった方法で適切に情報を管理しましょう。
業務を改善する意識を持つ
人事に関する法改正やセキュリティの問題など、労務管理を巡る状況は日々変化しています。そのため「昔のやり方を踏襲する」「言われたこと以外の仕事はしない」という意識では、人事として成長するのは難しいでしょう。
現在担当している業務で改善できそうな点があれば上司に提案する、許される範囲で実際に改善に取り組んでみる、といった業務効率への改善に意識を向けることが大切です。
プロの意見を参考にする
人事のプロに相談して意見を聞いてみることも、労務管理を適切に行ううえで大切です。
- 新しいことに取り組みたいものの、社内に知見がない
- 頼れる先輩がおらず、自分が人事部を引っ張っていくしかない
- 今の施策が正しいのか、専門家にレビューしてもらいたい
このような状況に陥ったとき、外部の専門家に相談すれば状況が改善する可能性があります。coache人事シェアでは、労務管理をはじめとした人事のエキスパートが多数登録しています。
「正社員で雇うほど資金に余裕がない」
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ずさんな労務管理を行うことによる弊害
労務管理が適切に行われていないとどのような弊害があるのでしょうか。主な問題点を紹介します。
- 監督省庁から指導を受けて様々な不利益が発生する恐れがある
- 従業員のモチベーションが低下し生産性が下がる恐れがある
- 従業員の離職や訴訟といったトラブルが頻発する恐れがある
監督省庁から指導を受けて様々な不利益が発生する恐れがある
不適切な労務管理を続けていると、労働基準監督署から是正勧告を受ける恐れがあります。
是正勧告を無視すると書類送検または罰金といった刑を受けてしまいかねません。そうなると家宅捜索を受けたり金融機関からの融資・取引を停止されたりするリスクがあります。自治体によっては入札停止になる場合もあるようです。また厚生労働省が公開している「ブラック企業リスト」に載る恐れもあります。
このような理由から、労務管理は必ず適切に行わなければなりません。
従業員のモチベーションが低下し生産性が下がる恐れがある
労務管理がずさんだと、従業員のモチベーションが低下してしまいかねません。
たとえば残業代が適切に支給されていない、長時間の残業が続いているのに是正される見込みがない、福利厚生が使えない、といった状態では、前向きに働くことは難しいでしょう。場合によっては離職や訴訟にも発展してしまいかねません。
従業員の離職や訴訟といったトラブルが頻発する恐れがある
ずさんな労務管理を続けていると、従業員の離職に留まらず訴訟を起こされる恐れもあります。
裁判まで発展すると、弁護士に依頼したり裁判の対応を行ったりと、本業以外のことで社内のリソースが奪われてしまいます。また離職者が増加すると、ネットの口コミサイトに悪評が出回ったり、口コミで同業他社に自社の悪評が広まったりと、様々な不利益を招いてしまいかねません。
このようなトラブルを避けるためにも、人事は適切に労務管理を行う必要があります。
労務管理の仕事内容を理解して適切に業務を進めよう
本記事では「労務管理の仕事内容」をテーマに、具体的な業務内容やずさんな労務管理を行うことの弊害などを紹介しました。労務管理は従業員が安心して働くために欠かせない業務です。適切に労務管理を行い、安心して働ける会社を目指しましょう。
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