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役職定年制度とは?実態やメリット・デメリット、導入方法を解説

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coachee 広報チーム
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「役職定年制度の導入を検討したいが、概要が詳しくわからない」
「制度設計から運用までスムーズに進めるポイントは?」
「役職定年制度導入による社員のモチベーション低下を防ぐ方法を知りたい」

管理職層の高齢化や人件費の増加に伴い、役職定年制度の導入を検討している人事担当者も多いのではないでしょうか。

本記事では、役職定年制度の基本的な仕組みから、メリット、導入方法、社員のモチベーション維持のための施策までを解説します。

また、最近の廃止傾向やポストオフ制度との違いについても触れているため、自社に最適な人事制度を構築したい方に役立つ内容です。

本記事を読んで、役職定年制度への理解を深めて、導入するかどうかを決めましょう。

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役職定年制度とは

役職定年制度とは、特定の年齢に達した社員が現在の役職から外れる仕組みです。役職(管理職ポスト)ごとに定年年齢を設定し、該当年齢になると役職者はその地位から離れることになります。

人事院による「民間企業の勤務条件制度(令和5年調査結果)」では、役職定年制度を取り入れている企業は全体の16.7%と報告されました。大企業(従業員500人以上)では導入率が27.6%と比較的高いものの、制度全体としては縮小傾向にあります。

出典:民間企業の勤務条件制度(令和5年調査結果)|人事院

役職定年の年齢

役職定年の具体的な年齢は会社によって異なりますが、多くの企業では50代後半から60歳に設定されています。

例えば会社の定年退職年齢が60歳、役職定年が55歳に定められている場合、54歳で部長職に就いている社員は、翌年に役職定年を迎えます。55歳の年が終わると部長の地位から外れ、定年退職までの5年間は別のポジションで働く仕組みです。空いた部長ポストには新たな人材が登用されます。

このように、役職定年制度は組織の新陳代謝を促し、若手人材の昇進機会を作り出す役割を担っています。

役職定年制度の実態

独立行政法人 高齢・障害・求職者雇用支援機構が実施した調査によると、役職定年制度により、役職から外れた後も「所属部署の主要な業務」を続ける人が52.8%と約半数を占めていると報告されました。

役職定年後は「社員の補助・応援」として働く人が20.3%「部下マネジメント等の管理業務」を担当する人が10.8%「所属部署の後輩社員の教育」に携わる人が5.4%と、役職定年者にサポート業務を任せられるケースも少なくありません。

給与面では、役職定年後は9割以上の人が年収ダウンを経験しており、60代後半になると役職定年前の年収の50%未満になる人が4割にも達します。

役職定年時の異動については「異動があった」と回答した人は32.8%「異動はなかった」と答えた人は67.2%でした。役職定年者の約7割は同じ部署で仕事を続ける一方、3割以上が別部署で新たな業務に従事しています。

このように役職定年制度は、対象者の仕事内容や勤務場所、収入に影響を与える制度と言えます。

出典:65歳定年時代における組織と個人のキャリアの調整と社会的支援|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

出典:50代・60代の働き方に関する調査 報告書|公益財団法人 ダイヤ高齢社会研究財団

役職定年制度のメリット3選

役職定年制度の導入には、以下のようなメリットがあります。

  • 人件費の削減につながる
  • 組織の活性化を促進できる
  • 若手社員の成長機会を創出できる

制度の目的に合わせて、メリットを活かした運用を検討してください。

1.人件費の削減につながる

役職定年制を導入することで、企業は人件費の増加を抑制しやすくなります。例えば、年功序列型の企業では、55歳以降も役職者の給与が自動的に上昇し続けるケースが多く、企業負担が年々重くなっていました。

しかし役職定年制により、一定の年齢を迎えた社員を役職から外すことで、役職手当や管理職向けの報酬をリセットでき、給与水準の上昇を抑えられます。例えば、一人につき数百万円単位の人件費削減につながる場合もあるでしょう。

特に日本企業では、年齢による昇給が文化的に根付いているため、役職定年制は人件費コントロール手段の一つとして広く活用されています。

2.組織の活性化を促進できる

役職定年制は、企業組織に新たな活力をもたらす仕組みとしても効果を発揮します。従来の年功序列文化では、課長や部長といった管理職ポストが長年同じ人物に占有され、若手や中堅社員の登用チャンスが限られる傾向がありました。

役職定年制を導入することで、一定年齢以上の社員が役職を退く仕組みができ、ポストの新陳代謝が促されます。

40代の中堅社員が課長に昇進する機会が生まれたり、30代の若手がプロジェクトリーダーに抜擢されたりするケースが増えるなど、組織全体に新しい視点がもたらされます。

3.若手社員の成長機会を創出できる

将来の幹部候補や若手社員の育成では、能力に応じて早期から管理職を経験させることが効果的です。しかし年功序列の仕組みでは若手人材の成長機会が制限されがちです。

キャリアアップの見込みがない環境では成長意欲が低下し、最終的には離職につながるリスクも生じます。

役職定年制を設けると、若手社員が役職に就く機会が増え、早い段階から管理職としての経験を積めるようになります。結果として人材育成が促進され、組織の未来を担う人材の確保につながるでしょう。

役職定年制度のデメリット2選

役職定年制度には、以下2つのデメリットもあります。

  • 有能な人材も一律で役職を外される
  • 役職定年者のモチベーションが低下する

それぞれのデメリットを確認します。

1.有能な人材も一律で役職を外される

役職定年制度のデメリットは、業績や能力に関係なく年齢だけで判断される点です。どれほど優秀な実績を持っていても、指定された年齢に達すれば役職から降りる必要があります。

豊富な専門知識を蓄積している人材や、卓越したリーダーシップで売上に貢献してきた管理職であっても例外はありません。これにより、企業は貴重な人材の経験やスキルを十分に活用できなくなるリスクがあります。

2.役職定年者のモチベーションが低下する

役職定年は実質的な降格処遇となるため、対象者の仕事への意欲が大きく下がる傾向があります。

優れた業績を上げていても、特定の年齢に達すれば降格すると制度として決まっているため、達成感や成長感が得られにくくなります。実際に調査では、役職から外れた後に仕事への意欲が「下がった」と回答した人が59.2%いるという結果も出ています。

このように役職定年制度を導入する際は、対象となる社員のやる気を維持できる対策も併せて検討すべきです。「役職定年後の社員のモチベーションを向上させる施策」で詳しく解説するため、参考にしてください。

出典:65歳定年時代における組織と個人のキャリアの調整と社会的支援|独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構

【4Step】役職定年制度の導入方法

本項では、導入から運用までの4つのステップを解説します。

  • 目的を明確化する
  • 対象や年齢などを決定する
  • 従業員に相談する
  • 就業規則などを改訂する

各ステップの詳細を説明します。

1.目的を明確化する

最初に取り組むべきは、自社が役職定年制を導入する目的や必要性の精査です。安易に他社の真似をして導入すると、運用がうまくいかず従業員の士気低下を招く恐れがあります。

役職定年制度には人件費削減や組織活性化といったプラス面がある一方、有能な人材の力が発揮できなくなったり、モチベーション低下を招いたりするなどの課題も伴います。

自社の経営状況や組織課題を分析し、役職定年制度の導入が本当に最適な解決策かどうかを見極めましょう。

2.対象や年齢などを決定する

導入を決めたら、対象となる年齢や役職範囲、役職定年後の処遇などの制度設計を行います。

すべての管理職ポストに適用するのか、一部の役職のみに限定するのかを明確にしましょう。加えて、役職定年年齢、降格後の職位や給与水準なども決定します。

制度設計の際は、説明責任を果たせるよう根拠を持った条件設定を心がけ、状況に応じて柔軟に調整できる余地を残しておくと良いでしょう。

3.従業員に相談する

役職定年制度は対象者にとって不利益が生じる可能性があるため、企業側の一方的な決定は避けるべきです。計画段階から対象社員や労働組合との対話を進め、制度の内容に関する意見を求めましょう。

反対意見が多数寄せられた場合は、内容の見直しが必要になります。

4.就業規則などを改訂する

従業員の同意が得られたら、決定した内容に基づき、就業規則や人事制度の改訂を進めます。

改訂にあたっては、労働関係法令に則った手続きを行うとともに、役職定年制度の内容について、社内に対して周知と説明を実施してください。

社内周知が不十分なまま制度を適用しようとすると、たとえ就業規則に記載されていても、労働契約法違反と見なされ契約自体が無効となるリスクがあります。

そのため、十分な説明を行い、従業員の理解と納得を得たうえで制度運用を開始するようにしましょう。

役職定年後の社員のモチベーションを向上させる施策

本項では、役職定年者の意欲向上に効果的な3つの方法を解説します。

  • キャリアデザイン研修を実施する
  • 金銭以外の報酬や成長機会を与える
  • 役職定年者の上司のマネジメント研修を行う

施策を組み合わせると、役職定年後も社員の能力を最大限に活用できる環境づくりが可能になります。

1.キャリアデザイン研修を実施する

役職定年を迎えた社員の中には、これまで築いてきた管理職としてのアイデンティティを失い、今後のキャリアに不安を抱く人も少なくありません。そうした社員に対しては、キャリアデザイン研修の実施が効果的です。

研修では、会社から期待する新たな役割を伝えたうえで、定年後も見据えたキャリアビジョンを考える機会を提供します。

例えば、自身のこれまでの経験を棚卸しし、強みやスキルを再確認するワークを取り入れたり、今後チャレンジしたい分野や目標を設定するサポートを行ったりするプログラムが有効です。

このような取り組みにより、役職定年後も自分らしいキャリアを主体的に描けるようになり、定年後の再雇用期間においても高いモチベーションをもって活躍してもらえるでしょう。

2.金銭以外の報酬や成長機会を与える

役職定年後の社員は、役職手当の減少だけでなく、組織内での存在意義が見えにくくなることでモチベーションが低下しやすくなります。

そのため、金銭的な待遇だけでなく「名誉」「成長」「対人関係」といった非金銭的な価値を意識的に提供することが重要です。

具体的には、以下のような取り組みが考えられます。

  • 顧客や社内からの感謝の声を直接フィードバックする
  • スキル習得に向けた研修や社内プロジェクトへ参画する機会を提供する
  • 若手社員のメンター、専門分野の技術アドバイザーなどの役割に配置する

特に、後進育成や技術伝承といった役割は、単なる実務では得られない「次世代に貢献する喜び」を感じやすく、高い満足感につながります。

このように、役職定年後も組織に必要とされていることを感じてもらうことで、意欲を持って働き続ける環境を整えられます。

3.役職定年者の上司のマネジメント研修を行う

役職定年制度により新たに管理職となる社員は、年上の部下を持つケースが増えてきます。

しかし、年下の上司が年上の部下に対して遠慮してしまうと、適切な指示やフィードバックができず、組織のパフォーマンス低下を招く恐れがあります。

このような課題に対応するため、年下上司向けのマネジメント研修を実施することが有効です。

研修では、年齢差がある部下との接し方、適切なフィードバックの伝え方、立場に応じた評価・指導の方法などを学びます。

例えば「相手の経験を尊重しつつ、成果には明確にフィードバックするスキル」や「年齢差を意識しすぎないリーダーシップ発揮法」などを学びます。

このように、上司・部下双方が力を発揮できる環境を整えることで、役職定年者も新任管理職も安心して新たな役割に取り組めるようになるでしょう。

役職定年制度の廃止が続く現状

近年、役職定年制度を見直す企業が増加しており、廃止や運用変更に踏み切る動きが加速しています。

年齢のみを基準に一律でポストから外す仕組みに対して、能力や意欲に関係なく役職を失うことへの問題意識が高まっているためです。

背景には、2021年に施行された高年齢者雇用安定法の改正があります。

これにより、企業は65歳までの定年延長義務に加え、70歳までの就業機会確保に努力義務を負うことになり、シニア社員の戦力化に本格的に取り組む必要性が増しています。

特に優秀なシニア社員については、高いエンゲージメントを維持しながら能力を発揮してもらうことが企業の成長につながります。

しかし、役職定年制度では年齢のみで役職を外すため、本人のモチベーション低下や組織の活力低下を招くリスクが大きく、制度そのものが時代に合わなくなりつつあります。

そのため、最近では「一定基準を満たせば役職継続を認める」「スキル評価に基づく配置転換に切り替える」といった、新たな運用に移行する企業も増えています。

結果として、役職定年制度の廃止や柔軟な運用の流れが強まっているのが現状です。

出典:高年齢者雇用安定法の改正~70歳までの就業機会確保~|厚生労働省

役職定年制度に代わるポストオフ制度が導入されるケースが増加

役職定年に代わる選択肢として「ポストオフ制度」を採用する企業が増えています。ポストオフ制度とは、一定の年齢に達した際に、年齢だけでなく複数の要素を考慮して役職からの異動を判断する仕組みです。

若手登用や組織活性化、人件費の適正化などの目的は役職定年制度と共通していますが、評価方法に違いがあります。

役職定年では年齢だけで一律に判断するのに対し、ポストオフ制度では評価結果や役職在任期間、年齢などを総合的に考慮します。

さらに、役職定年制度では役職を外れた後の給与や待遇が大幅に下がるため退職に至るケースが多い傾向です。

それに対し、ポストオフ制度では役職から外れても待遇変更を最小限に抑えるケースが多く、社内に残って別の形で貢献しやすい環境が整備されています。

このように、年齢だけでなく個人の能力や成果も考慮し、降格後も適切な評価・処遇を維持するため、人材活用の新たな選択肢として注目を集めています。

役職定年制度を効果的に活用して組織を活性化しよう

役職定年制度とは、一定の年齢に達した管理職が役職から外れる制度です。人件費削減や組織の新陳代謝を促進する効果がありますが、ベテラン社員のモチベーション低下というデメリットもあります。

導入にあたっては目的を明確にしたり、就業規則を改定するなどの取り組みや手続きが必要です。近年は一律的な役職定年制度からポストオフ制度への移行も進んでおり、組織の実情に合わせた制度設計が求められています。

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国家資格キャリアコンサルタントの資格を持つ高橋秀誓と、採用責任者、人事責任者などの豊富な経験を持つスタッフが率いるcoacheeの広報チーム。
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