ハイクラスPMが「決めきれない」本当の理由|面談33件で見た採用ミスマッチの原因「上流志向 × 勤務地制約」|coachee株式会社の画像
BLOG

ハイクラスPMが「決めきれない」本当の理由|面談33件で見た採用ミスマッチの原因「上流志向 × 勤務地制約」

hidechika-takahashi
coachee 広報チーム
記事を共有

PM・上流人材の採用で「オファー条件は出しているのに、最後の一歩が決まらない」という声をよく聞きます。年収レンジは市場水準に合わせた。リモートも可としている。それでも最終局面で候補者の判断が止まる、あるいは他社に流れる。これは、採用ミスマッチの原因を考えるうえで見落とされがちな現象です。弊社が2026年5月から7月に実施した候補者面談33件を集計したところ、最も採用が難しい層には、はっきりした共通プロファイルがありました。

より上流の役割を求めながら、勤務地を動かせない——この二重条件を抱えた層です。33名中16名、ほぼ半数(48%)が該当しました。そしてこの16名は、全員がPM・ITコンサル・DX・情報システム系。つまり、この板挟みは、企業がまさに採用したいPM・ITコンサル・DX・情報システム系の人材に集中しているのです。」

本記事は一般論ではなく、実際の面談記録を集計した一次データに基づいて、ハイクラスPM・上流人材で起きる採用ミスマッチの原因を掘り下げます。個人が特定されない粒度に加工しています。「オファーで負けていないのに決まらない」に心当たりのある採用担当者ほど、この板挟み層の解像度を上げることが打ち手に直結するかと思います。

調査概要

  • 調査方法:弊社キャリアアドバイザーによる候補者面談の記録を集計
  • 調査期間:2026年5月11日〜7月15日
  • 対象:対象となる面談者33名
  • 対象レイヤー:ITエンジニア/ITコンサル・PM・PMO/情報システム・DX推進が33名中27名。ほかにマーケティング、サプライチェーン、事業開発、営業マネジメント層を含む
  • 現年収帯:400万円台〜2,800万円台

個人が特定されない粒度に加工しています。

最難関は「上流志向 × 勤務地制約」の板挟み層(33名中16名)

上流工程への関与・役割拡大・マネジメント経験の獲得を転職動機に挙げた候補者が23名(70%)。勤務地またはリモート可否を必須条件として挙げた候補者が22名(67%)。そして、この両方を同時に抱える候補者が16名(48%)いました。

片方だけなら、対応は比較的シンプルです。上流志向だけの候補者には役割の魅力を、勤務地制約だけの候補者には柔軟な働き方を訴求すればよい。ところが板挟み層は、この2つをどちらも満たさないと動きません。しかも厄介なのは、そのどちらも年収では代替できないことです。

実際、年収の低さを転職の第一動機に挙げた候補者は33名中1名(3%)のみでした。現年収と希望額の双方が分かる18名のうち16名(89%)は希望額が現状維持または+150万円以内に収まり、うち4名は現年収を下回る希望額を自ら提示していました。年収を上げることより、居住地を維持することや、担える役割の中身を優先した結果です。彼らを動かすのは報酬ではなく、「役割が本当に変わる」証拠と「働き方が守られる」証拠の両方です。逆に言えば、この2つの証拠を求人票と初期面談で提示できない限り、オファー金額をいくら積んでも板挟み層には響きません。

採用ミスマッチの原因は求人票の「読めなさ」に集中していた

役割側:「今と同じ仕事を別の会社で」と読まれた瞬間に外れる

上流志向の候補者の語り口は共通していました。難航案件の火消し役として後工程から呼ばれる状況を変えたい。組織再編で担当がインフラ整備や機器手配に狭まった。ツール導入の実行ばかりで顧客の根本課題に踏み込めない。PM・PLとしてプロジェクトを動かす経験を積める配置になっていない——いずれも報酬ではなく役割の頭打ちが引き金です。

ここで重要なのは、彼らが求人票を「役割が変わるかどうか」の一点で読んでいることです。募集要項に並ぶ「要件定義からリリースまで」「上流工程に携われます」といった定型句は、現職でも似た文言を聞いているため、そのままでは差別化になりません。業務内容が現職の延長線上に読めた時点で、この層の検討対象からは静かに外れます。応募が来ないのではなく、そもそも比較の土俵に乗らないのです。これが、ハイクラス層で採用ミスマッチが起きる最初の分岐点です。

勤務地側:「フルリモート可」の表記だけでは信用されない

勤務地に言及した22名のうち8名は、転勤の可能性や特定領域の案件でリモートが制限される可能性を、具体的なリスクとして自ら口にしていました。背景には「入社時は自由と言われたリモートが途中から出社回帰に転じた」「求人票はリモート可なのに経営層の発信は出社重視で不利になりそうだ」といった実態不一致の経験があります。

家族の在宅介護、子の送迎、親のサポートを抱える候補者にとって、ここは年収を上回る絶対条件です。だからこそ表記そのものは信用されません。見られているのは運用実態が信用できるか——実際に何割の社員がリモートで働いているのか、出社が必要になるのはどんな場面か、経営層はリモートをどう位置づけているか。この解像度が求人票にないと、候補者は「書いてあるが本当かわからない」と判断を保留します。

年代で変わる「板挟み」の現れ方(33名中13名が年齢を自ら論点化)

年代(30代後半・40代・50代・60代前後)で変わる板挟みの現れ方を示した比較図

板挟み層を理解するうえで、もう一つ見逃せない軸があります。年齢です。33名中13名(39%)が、聞かれる前に自分から年齢や就業年数を話題にしていました。そして、その現れ方は年代でくっきり分かれます。

  • 30代後半:「40歳を超えると選考のハードルが上がる」という認識と、その前に上流の役割へ移りたいという焦り。板挟みは「役割を変える最後のチャンス」という時間的プレッシャーとして現れます。
  • 40代:専門性を確立できる残り時間への意識。今の延長ではなく、あと10年をどの役割で積み上げるかを真剣に見ています。勤務地は家庭の事情で固まっていることが多く、板挟みが最も先鋭化する年代です。
  • 50代:採用要件上の年齢の壁を実感しており、「何歳まで現役で貢献できるか」を軸に企業を選びます。年収より、主体的に完結まで担える役割と長く働ける環境を優先する傾向が明確でした。
  • 60代前後:募集要件の年齢上限と、定年後に雇用形態がどう切り替わるかへの関心。役割と勤務地に加えて「この先何年働けるか」が第三の条件として乗ってきます。

採用側への示唆はシンプルです。板挟み層に年齢の軸が加わると、条件は2つから3つに増えます。定年年齢や60代以降の処遇設計、シニア層の活躍実績を制度として説明できる企業は、この層に対して他社が持たない訴求材料を持っていることになります。逆に、年齢に触れずに役割と勤務地だけを語ると、候補者の最大の関心事に答えないまま選考が進みます。幹部・管理職クラスの採用設計については、幹部候補を採用するには管理職採用で失敗しないためにはもあわせてご覧ください。

採用ミスマッチの原因②:情報の不透明さが実際に選考を止めている(33名中7名)

傾向ではなく実績です。33名中7名(21%)が、情報の不足や条件の実態との乖離を理由に、過去に応募見送り・選考辞退・内定辞退・入社後の早期離職のいずれかを経験していました。業務内容が不透明だったための応募見送り、選考中に事業モデルの相違が判明したことによる辞退、面接時の説明と入社後の実態が違ったことによる数か月での再転職、リモート前提の合意が守られなかったことによる退職。いずれも企業側が事前に開示していれば防げた可能性のある離脱で、5人に1人がすでに経験しています。

この経験は、次の転職活動での警戒心として持ち越されます。一度「聞いていた話と違った」を経験した候補者は、次はより多くの証拠を求めます。板挟み層は満たすべき条件が多いぶん、確認したい情報も多く、判断材料が揃わなければ止まります。裏を返せば、情報を先回りして開示する企業は、この警戒心を味方につけられます。

板挟み層を動かした「開示」

面談中に候補者の姿勢が前向きに変わったのは、企業が対外的に説明している情報が具体的な数字や仕組みとして提示されたときでした。役割側では担当工程・裁量範囲・等級バンド・上長承認を要さない社内公募制度。勤務地側では転勤の有無の明言と出社実態の説明。転勤がないと明確に否定された時点で懸念が解消し、選考前進の合意に至ったケースもあります。

強調したいのは、これらが特別に有利な条件ではないことです。等級バンドも離職率も定年制度も、すでに社内にある事実です。候補者が確認できる形にしただけで、コストはかかっていません。板挟み層の攻略は、待遇を上げる勝負ではなく、情報を翻訳する勝負です。

求人票の「証拠」の書き方:役割編・働き方編

板挟み層に届く求人票の書き方を役割・働き方のNG例とOK例で対比した図

抽象論だけでは動きにくいので、板挟み層に届く求人票の書き方を、よくある表現と対比しながら整理します。以下は考え方を示すための例です。

役割の証拠

NG例:「上流工程からご担当いただけます」「要件定義〜運用まで幅広く」。——現職でも聞く文言のため、役割が変わる保証になりません。

OK例:「担当は構想フェーズから。事業部門との課題定義ワークショップの設計・ファシリテーションを主導し、ベンダー選定の意思決定に加わります。ツール導入の実行は別チームが担当します」。——どの工程から入り、どこまで裁量を持ち、何を担当しないのかまで書くと、「今と同じ」ではないことが伝わります。

働き方の証拠

NG例:「リモート勤務可」「フレックス制度あり」。——可否の表記だけでは、運用実態が読めません。

OK例:「原則リモート。全社の平均出社頻度は月◯回。出社が発生するのは四半期のキックオフと、担当案件の要件定義初期のみ。転勤はありません」。——頻度・場面・転勤の有無まで書くと、勤務地を動かせない候補者が自分の生活に当てはめて判断できます。数字が出せない場合でも、「出社が必要になる典型的な場面」を挙げるだけで信用度は上がります。

ポイントは、役割と働き方の証拠をセットで提示することです。板挟み層は片方だけでは動きません。役割が魅力的でも勤務地が読めなければ辞退し、働き方が理想的でも役割が現職の延長なら興味を持ちません。

「そこまで開示できない」への現実的な答え

実務では、開示したくてもできない事情があります。面談で企業側から実際に出た論点に、現実的な線で答えます。

Q. そこまで具体的に書くと、応募数が減るのでは。
板挟み層に関しては、むしろ逆に働きます。曖昧な求人票は応募数を稼ぐ一方で、上流志向の候補者を土俵に乗せられず、選考後半での辞退を増やします。具体的に書くと母集団は絞られますが、残るのは条件が噛み合う候補者です。採用の目的が「応募数」でなく「入社と定着」なら、精度を上げる方が採用ミスマッチの回避には近道です。

Q. リモートを約束したいが、事業上どうしても出社が必要な場面がある。
約束できないなら、できないことと、その場面を正直に書くのが最善です。候補者が最も警戒するのは「できない約束」ではなく「後から違った」です。「原則リモート、ただし顧客先常駐が発生する案件が全体の一部にある」と事前に書けば、それを許容できる候補者だけが応募し、入社後のミスマッチが減ります。

Q. 年収バンドや離職率を対外的に出す文化がない。
全公開が難しくても、選考の初期面談で口頭で伝えるだけで効果があります。候補者が求めているのは公表ではなく、自分の判断材料として確認できることです。面接官が等級レンジと評価軸を説明できる状態になっているかを、まず社内で整えるのが先決です。

PM採用担当が今日から打てる手

  • 求人票の業務内容を「今と同じ役割」と読まれない粒度まで具体化する。担当する工程と裁量範囲、担当しない業務まで書く
  • 勤務条件を運用実態まで書く。「フルリモート可」で止めず、出社が発生する頻度と場面、転勤の有無まで示す
  • 役割と働き方の”証拠”をセットで出す。板挟み層は片方だけでは動かない
  • 年齢に関わる論点(定年、シニア活躍、社内公募)を、候補者向けの説明材料として整理する
  • 選考回数・形式・想定期間を初期段階で開示する
  • 提示年収を、等級バンドや評価基準とセットで説明できる状態にする

情報を開示することは、条件を良くすることとは異なります。追加コストをかけずに、候補者の判断材料の精度だけを上げ、採用ミスマッチの原因を一つずつ潰す施策です。中途採用全般の即戦力採用については中途採用で即戦力を採用するにはもご参照ください。

板挟み層の「読めなさ」を先回りして埋める

coachee Agent Proは、候補者と企業の双方に接する両面型の支援を行っています。候補者との面談で得た懸念や判断基準——どの工程を担いたいのか、勤務地の制約はどれほど固いのか、過去にどんな条件相違を経験したのか——を企業側にフィードバックしながら、求人情報と実態のギャップを選考が進む前に埋めることを重視しています。求人票の文面だけでは伝わらない役割と働き方の証拠を、選考の早い段階で候補者に届ける設計です。板挟み層のように条件が複数重なる候補者ほど、この先回りが選考の前進を左右します。

まとめ:ハイクラスPMの採用ミスマッチは「翻訳」で防げる

面談33件でわかった採用ミスマッチの主要数値(板挟み層48%・年収動機3%・選考離脱21%)

2026年5月〜7月の候補者面談33件を集計した結果、PM・上流人材の採用で最も難しいのは「上流志向 × 勤務地制約」の板挟み層でした。33名中16名(48%)がこの二重条件を抱え、その全員がPM・IT系。年収を第一動機に挙げたのは1名のみで、彼らは報酬では動かず、役割が変わる証拠と働き方が守られる証拠の両方を求人票に求めます。年代が上がると、そこに「この先何年働けるか」という第三の条件も加わります。

採用ミスマッチの原因は、待遇の見劣りではなく、すでに社内にある事実を候補者が確認できる形に翻訳できていないことにありました。片方だけの求人票は、この48%を取りこぼしている可能性があります。求人票の書き方を変えるだけで、選考の進み方は変わります。

採用要件や求人情報の見直しについては、以下よりご相談ください。

法人向けサービスの詳細を見る

記事を書いた人
hidechika-takahashi
coachee 広報チーム

coachee 広報チーム

国家資格キャリアコンサルタントの資格を持つ高橋秀誓と、採用責任者、人事責任者などの豊富な経験を持つスタッフが率いるcoacheeの広報チーム。
皆様に採用や人事業務に役立つ情報を提供します。

関連ブログ

BLOG